2016.2.15

噛めば噛むほどいいことづくめ! 肥満撃退! 認知症予防! さらに美肌にも!

早食いは肥満のもと、「ひとくち30回噛む」が理想

Young woman eating a rice ball食べるのが早いとBMI値(肥満度)も高いという疫学調査がある。さらに、お腹いっぱい食べる習慣のある人はもっとBMI値が高くなる。早食いや食べ過ぎを防ぐには、ゆっくりよく噛むのが良さそうだ。脳内には食欲を抑える作用をもつ神経ヒスタミンという物質があり、噛むことで活性化され食べ過ぎを防ぐことができる。さらに神経ヒスタミンは、エネルギーを消費する働きもある優れもの。肥満防止策として、よく噛む行為は有効だ。

ひとくち30回咀嚼するのが目安だが、常に行うのは難しい。策をあげると、食事メニューを和食中心にし、食物繊維が豊富な海藻、きのこ、根菜、魚介などを摂ると咀嚼回数が自然と多くなる。また、食事中に飲み物を飲むと、噛まずにすんでしまうので避けたほうがよい。

よく噛むと脳の血流が増加! 記憶力やストレスにもよい効果

消化器にとって咀嚼行為が大切なのはいうまでもないが、脳にもよいことが分かっている。顎の動きが脳に伝わると、酸素が脳に送り込まれて血液量が増える。血流がよくなると味覚をつかさどる孤束核、記憶に関わる海馬、ストレスを判断する扁桃体、自律神経の中枢の室傍核に影響がもたらされ、脳の発達や、認知症で低下する思考や学習にかかわる前頭前野の活性化につながる。

ほかに、繰り返し噛むことで自律神経が活性化され、精神安定作用のあるセロトニンの分泌が高まるなど、咀嚼のもたらす効果は想像以上だ。ガムを噛むだけでもリラックス効果や、記憶力が向上する研究結果もある。

唾液には、活性酸素抑制や老化防止のパワーがあった!

よく噛むことで、唾液が分泌される。その唾液には、嚥下、消化を助ける以外にもさまざまな作用がある。たとえば、母乳にも含まれるラクトフェリンや免疫グロブリンという抗菌因子をもっており、細菌の侵入や増殖を阻止している。また、唾液には食べ物の細菌をからめとって口のなかから排出させる役割もある。さらに、焦げた食べ物や、タバコのヤニには発がん性物質があるが、これらが発生させる活性酸素を減らすペルオキシターゼ、カタラーゼ、アスコルビン酸などの成分をも含んでいる。

ほかにも、筋肉や骨の発達を促したり、白内障の進行を遅らせたりする成分のパロチンや、成長ホルモンの刺激を受けると分泌される成長因子IGF-1も存在し、身体の回復作用を高め、美肌や若さを保つ働きがあるという。よく噛んで唾液を出さなければ、損をすると言わざるを得ない。

思った以上に脳や身体に影響している咀嚼。肥満や免疫力低下を改善するために、まずはしっかりした歯でよく噛もう。噛むことで病気に強い身体を作り、若さと健康を保てるよう、口腔内環境を整えておきたい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部