2016.2.29

「愛してる」の言葉で体温が上昇! 愛は健康のもと

「愛してる」なんて恥ずかしくて言えないわたしたち

Infrared thermovision image of woman hand over the cold water「愛している」という言葉を、家族や恋人、大切な人に対して、日常的に伝えているという人はいるだろうか。日本人は、世界的に見てもあまり愛情表現をしない傾向にある。家電メーカーのパナソニックが300人を対象に行なった調査によると、家族に普段「愛している」と言葉にして伝えていない人は、全体の84.7%にものぼった。理由は、「そのような習慣がないから」「恥ずかしいから」「言葉にしなくても伝わっていると思うから」など。そこで同社が、夫婦、母と娘など6組の家族を対象に「愛」に関する実験を行ったところ、興味深い結果となった。なんと、愛の言葉で身体が温められ、体温が上がるというのだ。

愛の言葉で体温が上がることが明らかに

愛のこもった言葉を伝えられたとき、人の体温はどのように変化するのか。実験は、家族2人のうち1人が仕掛人となり、もう1人の被験者に対して、愛の言葉や感謝の気持ちを綴った手紙を読む。そのときの身体の表面温度を、高性能のサーモパイル赤外線センサーで測定するというもの。衣服を身につけていない身体のなかで、感情の影響が出やすい鼻頭あたりの体温を測った結果、手紙を読んでもらった6人の体温は平均で0.8度上がり、なかには1.2度上がった人もいた。
手紙の内容は、次のとおり。
妻から夫へ「幸せな毎日をありがとう」
娘から母へ「ママのところに生まれてきて幸せ」
夫から妻へ「ずっと一緒にいてください」
夫から妻へ「10年目のプロポーズを」
娘から母へ「ママ、世界で一番愛してるよ」
妻から夫へ「29年分のありがとう」
被験者は最初驚いていたが、笑顔になり、最後には涙を流す場面も見られた。

愛は健康のもと

この実験結果に対し、心と体温の関係について研究している広島国際大学の高尾文子教授は、「愛の言葉で副交感神経が活性化し、体温が上昇している。人が愛情を感じ脳も身体もリラックスすることで、より健康になっていくことを例示する、興味深い取り組みだ」と述べている。副交感神経が活性化すると、血液が体内を循環して老廃物を回収、さらには新陳代謝を促して、身体のダメージを回復させてくれる。体温は免疫力ともかかわりが大きく、体温が1度下がると免疫力は30%低下するという。また、体温が1度上がると基礎代謝量は13%増えるというから、身体は冷やさないようにし、体温を上げることは大切だ。

愛の言葉は「愛している」だけではない。普段、口に出してはいえない「ありがとう」や「ごめんなさい」を言葉にすることでも、愛は伝わり暖かい気持ちになれる。本当は、家族に愛情を伝えたいと思っている人は多いはず。健康のためにもなると考えてみれば、言葉にできるのではないだろうか。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部