誰でもかかる可能性がある副腎疲労って何?
副腎は、左右腎臓の上にあり、ストレスに抵抗するためのホルモンを分泌している臓器だ。多くのストレスを感じると副腎がフル稼働し、副腎自体が疲れて機能が低下してしまう。これを「副腎疲労」といい、1990年代に米国のジェームズ・L・ウィルソン医師により提唱された概念であり、「いつも疲れている」「やる気が出ない」といった疲労や倦怠感をはじめとした症状が現れる。これを単なる疲れだと思い「休めば治る」と言い聞かせて心身を酷使し続けると、副腎は限界を迎える。この状態は「アドレナル・ファティーグ(副腎疲労)」といわれ、朝、起き上がることが困難になり、疲労状態に加え、代謝機能の低下など身体のさまざまな器官に不調をきたす。
みなさんの副腎は、本当に大丈夫?
何かとストレスの多い現代、知らず知らずのうちに副腎疲労になっている場合があることをご存知だろうか? 以下のセルフチェック19項目のうち4つ当てはまるものがあれば、副腎疲労の可能性大!
- 朝起きるのがつらい
- 疲れが取れない
- 塩辛いものが無性に欲しくなる
- 倦怠感がある
- 日常的なことがとても疲れる
- 性欲の低下
- ストレスに対処できない
- 病気やけが、心的外傷(トラウマ)から回復するのに時間がかかる
- 頭がクラクラする
- 軽度のうつ
- 人生のすべてが虚しい
- PMS(月経前症候群)の悪化
- カフェインがないと仕事ができない
- 思考が定まらず、ボーっとする
- 記憶があやふや(例:食べたものが思い出せない)
- 朝10時頃まで目が覚めない
- 午後3~4時頃の間にぼんやりしている
- 夕食後、やっと元気になる
- 仕事がはかどらない、集中できない
手遅れになる前の対処が肝心
予防には、まず食生活を整えることが大切。和食中心の食事を心がけ、副腎の回復を助けるビタミンBやCを多く摂るようにしよう。カフェインやお酒はもちろんのこと、小麦粉や砂糖を使ったお菓子は急激に血糖値を上げ、身体を疲れさせるので避けたい。また、バナナも摂りすぎはよくない。カリウムが血糖値を上げ、身体のバランスを崩してしまうからだ。
次に「ストレスをためないことが必要だ」と口では言えても、これがなかなか難しい。朝起きたときにワクワクすることを考えるだけでも、気の持ちようが変わるので、実践してほしい。また、ヨガやストレッチは副腎周辺の筋力アップがはかられるので効果的。時間がとれない人は、ツボ押しがおすすめだ。足の中指から下りていき、土踏まずに入る部分にあるくぼみを押すとよい。そして何より、好きなことをするのがいちばんの回復方法だ。
限界を超える前に、自分の身体についてよく知ることが大切。「疲れたな」と感じたら、たとえ10分でもよいので横になるくらいの気持ちと時間の余裕を常に持っていたいものだ。

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)