2017.2.27

乳化剤は身体に害? 食品添加物の真実

乳化剤の目的と役割

「乳化剤」とは、水と油のように混じり合わないものを、均一に混ざりやすくする食品添加物である。水と油のような性質の違うふたつの物質の境界線「界面」の性質を変える働きを利用して、乳化のほかにも次のような役割を果たしている。

起泡

液体を混ぜたときに生じる泡を安定させ、ケーキやホイップクリームなどにボリュームを持たせる。

消泡

液体に泡が生じないようにしたり、生じた泡を消したりする。豆腐など、泡を消すことで食品になめらかさを出す。

分散

粒子の細かい個体を液体の中で均一に分散する。ココアの粉末を水に均一に分散させたココア飲料など。

湿潤

固体の表面を液体に濡れやすくし、粉末食品のダマを防止する。

可溶化

溶けない物質が界面作用によって、まるで溶けたかのように透明な状態を作る。油性の香料などを飲料に加えることができる。

洗浄

界面活性剤と表示され、衣料用洗剤や石鹸に使われている。野菜や食器を洗う洗剤にも利用されているが、安全性は重視されている。

食品によく使われている乳化剤

界面の性質を変化させる物質「界面活性剤」は約2000種類あり、そのうち安全性が優先され食品添加物として指定されたものが乳化剤として使用されている。

グリセリン脂肪酸エステル(グリセリンエステル)

油脂から得た脂肪酸とグリセリンを反応させて製造する。乳化剤のほかに、前述したような作用から、起泡剤、豆腐用消泡剤、デンプンの品質改良剤などとして幅広く使われている。

  • 使用食品:乳製品、乳飲料、マーガリン、菓子類など

レシチン(植物レシチン、卵黄レシチン)

大豆の種子やアブラナ、卵黄の油脂から抽出したレシチンをおもな成分とするリン脂質。乳化以外にも分散、湿潤などの働きをし、油はね防止効果もある。大豆レシチンは、アレルギー反応が起きる場合があることや、遺伝子組換えの大豆を使用していることが指摘されている。

  • 使用食品:マーガリン、アイスクリーム、調整粉乳、菓子類など

ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖エステル)

油脂から得た脂肪酸とショ糖を反応させて製造する。乳化剤のほかに、起泡剤、増粘剤、デンプンの老化防止などの目的で使われる。一部で奇形や染色体への異常が指摘され、妊婦は控えるべきだといわれている。

  • 使用食品:ホイップクリーム、ケーキ、カレールー、清涼飲料水など

役割の多い乳化剤

乳化以外にもさまざまな目的で使われている乳化剤だが、さらに食べ物の組成・性質を改良する「改質機能」も持ち合わせている。例えば、パンやご飯が時間経過とともに固くなる現象「デンプンの老化」を防止し、おいしさを保つ。また、保水力や保油力を高める油脂改質を行うことで、食品にツヤを出したり透明度を上げたりし、口当たりをよくする。ほかにも、たんぱく質を改質することで、乳化を安定させたり、食感を向上させたり、さらには抗菌作用をもたらし、弁当やそう菜、缶コーヒーなどの保存性を高めている。

幅広い用途を持つ乳化剤は、食品をおいしくするために生み出された添加物だともいえる。アレルギー反応や過剰摂取に気をつけ、うまく付き合っていこう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部