2015.7.2

韓国で感染広がるMERS、日本は大丈夫なのか?

MERSとはなにか? その症状は

MERS-CoV
最初にMERS(Middle East Respiratory Syndrome)について知っておこう。MERSとは「中東呼吸器症候群」のこと。2012年に重度の肺炎を引き起こした中東渡航者から新種のウイルスとして発見されていることから

Middle East:中東
Respiratory:呼吸器の
Syndrome:症候群

これらの頭文字をとってMERSと名付けられている。原因となるウイルスは、MERSコロナウイルスと呼ばれている。

患者から分離されたMERSコロナウイルスと同じウイルスが、中東地域のヒトコブラクダから分離されていることなどから、ヒトコブラクダがMERSコロナウイルスの保有動物であり、感染源のひとつではないかと考えられている。
症状は発熱、せき、息切れなど、おもに呼吸器系に関わるもので、WHOの報告によると症状が悪化して死亡する割合は約35%とされている。

韓国で広がった原因は衛生管理不足

韓国国内感染はたった一人の男性のMERS感染から始まった。2015年の5月に中東のバーレーンに渡航した韓国人男性が感染し、韓国に帰国後にMERSを発症。男性が複数の病院を回った結果、その病院の中のひとつで衛生管理が十分でなかったため院内感染が始まった。そこから国内にMERSが広がり、6月22日時点で韓国国内の感染者は170人以上、死者は25人を超えた。

MERSの影響により、韓国では学校の緊急学級閉鎖、旅行者の減少、対外イベントの中止などが起こり、経済は大きな打撃を受けた。また国によっては韓国への渡航禁止などを検討している国もあり、問題は膨れ上がる一方だ。

日本人感染者の状況と日本の対応

日本の厚生労働省は、自治体・医療機関向けに「韓国における中東呼吸器症候群(MERS)の発生について」を発表した。中東地域に加え、韓国からの入国・帰国者に対する検疫体制を強化している。日本国内でMERS患者が発生した、または疑わしい症状の患者が確認された場合には、医療機関から地域の保健所に報告するよう通達している。疑わしい症状とされるのは38度以上の発熱、および咳を伴う急性呼吸器症状だ。
潜伏期間が2~14日ということもあり、発症の14日以内に「アラビア半島などの中東諸国、または韓国に滞在していた」「MERS患者との接触」「ラクダとの接触や飲食」などをしていないかもチェックされる。

気になる日本人の発症者についてだが、韓国の発表で隔離対象者となった日本人が1名確認されている。ただし、検査結果は陰性で、現時点で感染が確認された人はいない。ただ、思い当たることがあれば早めに病院へ行き、感染の有無を確認してもらうことが必要だ。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部