「いつまでも若々しく、健康でありたい」という願いを叶えるメソッドが、最先端の研究により明らかになってきている。
今回は、ストレスの軽減法に注目し、世界中の研究者の研究結果を幅広く紹介。多様な理論のなかから自分に合う方法を見つけ、ぜひ実践してほしい。

2017.1.19

日常のストレスが脳を萎縮させ認知機能を低下させる

「コルチゾール」の量でストレス状態が判明する

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生活上のさまざまなストレスやうつ状態が、認知機能に影響を与えるといわれていたが、実際、うつ病を発症したことがある人は、アルツハイマー病の発症危険度が高いことが報告された。

米国ボルチモアの国立老化研究所の疫学研究部門のミリャン・ギアリングス博士らの研究グループは唾液中に含まれる「コルチゾール」というホルモンが、身体のストレス状態を診断する簡便なバイオマーカーになりうる点に注目した。コルチゾールとは、身体にストレスが加わると副腎から分泌され全身を循環し、唾液中にも分泌される。研究チームは認知症を発症していない高齢者4,244人(平均年齢76歳)の朝と夕方の唾液腺コルチゾールの測定、MRI(磁気共鳴画像診断装置)で脳の容積を測定。さらに認知機能検査で、思考能力や記憶能力を評価し、唾液腺コルチゾールと脳容積や認知機能との関連性を検討した。

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「コルチゾール」の量と認知機能の関係性が明らかに

その結果、夕方の唾液腺コルチゾールの高い高齢者は低い高齢者に比べて、脳の容積が平均16ml小さいことがわかった。今回の報告では、灰白質とよばれる神経細胞が局在する部位が、脳全般で萎縮していることが判明した。さらに夕方の唾液腺コルチゾールの高い高齢者は、認知機能検査で記憶力が低下し、思考処理速度が低い傾向が認められた。このことはストレスに反応して分泌されたコルチゾールが大脳皮質の神経細胞に直接作用し認知機能を低下させるというこれまでの仮説を裏づけている。

一方、朝の唾液腺コルチゾールの高い高齢者は、脳の容積が保たれて認知機能検査では思考処理速度が速い傾向が示された。ギアリングス博士は朝のコルチゾールは基礎分泌能力、夕方のコルチゾールは日常生活のストレスを反映しているためと考察する。日常生活のストレスを減らして、朝のコルチゾールは高めに夕方を低めに保つことが重要になるだろう。


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Colorda編集部