「いつまでも若々しく、健康でありたい」という願いを叶えるメソッドが、最先端の研究により明らかになってきている。
今回は、健康でいるための飲み物の選択について、世界中の研究者の研究結果を幅広く紹介。多様な理論のなかから自分に合う方法を見つけ、ぜひ実践してほしい。

2017.2.2

コーヒーは身体によい飲み物? それとも悪い?

世界中で愛されているコーヒー

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コーヒーは世界中で飲まれている嗜好飲料。コーヒーの赤い実は有史以前から食用されていたとされるが、現在のように「焙煎した豆から抽出したコーヒー」を楽しむようになったのは13〜14世紀頃と伝えられている(※1)。

International Coffee Organization によると、世界のコーヒー消費量は2012年で145,367千袋、2015年は151,303千袋と年々増加傾向にある(※2)。世界で消費量が多いのはノルウェーで、1人あたりの年間消費量は8.59kg、スイスは7.56kg、ブラジルで6.02kg。日本は3.54kgで、1杯を豆10gで換算すると、1人あたり年間354杯、1日1杯弱のコーヒーを飲んでいる計算になる(※3)。

コーヒーの禁断症状、急性症状

そんな人気のコーヒーだが、健康に対する影響に関しては賛否両論あるようだ。

コーヒーには習慣性があり一旦依存を生じると「カフェイン禁断頭痛」と呼ばれる一種の禁断症状が出現することが知られている。ほかにも急性症状として、中枢神経の興奮作用、血圧上昇、利尿効果などの作用が知られているが、これらの急性症状はだいたい1日以内で消失する。

コーヒーがリスクを減らす疾患、増やす疾患

疫学調査でコーヒーのさまざまな慢性的な作用が報告されているが、1990年以前は「コーヒーは身体に悪い」とする論文が多かったのに対して、1990年代以降は、どちらかというと「コーヒーは身体によい」という視点の論文が増えている。

実際にコーヒーはパーキンソン病、大腸がん、2型糖尿病の発症リスクを減らすと報告されている。また、アルツハイマー病、肝細胞がん、胆石に関しても発症リスクを減らす可能性が示唆されている。

一方、関節リウマチ、高血圧、死産リスク、骨粗鬆症、膀胱がんに関しては、逆にコーヒーは発症リスクを増やしたり病状を悪化させたりする可能性が指摘されているが結論には至っていない。

コーヒーで死亡リスクが低下した事例

コーヒーは抗酸化成分が豊富なのでアンチエイジング効果や長寿効果が期待されているが、これまでコーヒー愛好家の寿命に関する大規模研究は報告されていなかった。そんななか、最近の報告で興味深い結果が出ている。

米国国立がん研究所のニール・フリードマン博士らは50〜71歳の40万2,260人の成人男女(男性22万9,119人、女性17万3,141人)を1995年から2008年まで追跡調査し、コーヒーの摂取量と死亡率との関係を解析した。対象は国立公衆衛生研究所の食事健康調査研究に登録した成人で、研究開始時に心臓病、脳卒中やがんの経験者は除外された。対象になった人の9割がコーヒーを愛飲していたが、追跡期間中に男性33,731人、女性18,784人が死亡した。

博士が対象者をコーヒーの摂取量で6グループに分けて効果を比較した結果、コーヒーの摂取量が増加すると総死亡リスクが低下することが分かった。フリードマン博士によると、コーヒーをまったく飲まない男性に比べてコーヒーの摂取が1日あたり1杯未満の男性の死亡リスクは1%低下、1杯の男性は6%低下、2〜3杯の男性は13%低下、4〜5杯の男性は16%低下、6杯以上の男性は15%も低下することがわかった。

コーヒー摂取の増加による総死亡リスクの低下は、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患、負傷や事故による死亡、糖尿病および感染症などの病気の死亡率低下によるところが大きかった。これらの傾向はカフェイン抜きのコーヒーでも同様に観察されたことから、カフェイン以外の抗酸化作用を持っている抗酸化物質やフィトケミカルが重要な役割を果たしていることを示唆している。

コーヒー愛好家にとってはうれしい報告だが、コーヒーにたっぷりの乳製品や砂糖を入れて飲むことは、アンチエイジングの観点からもおすすめできない。

※1 一般社団法人全国コーヒー協会「コーヒー歴史年表」
※2 一般社団法人全国コーヒー協会「世界の消費量(出所:ICO統計2016年10月)」
※3 一般社団法人全国コーヒー協会「世界の一人当たりコーヒー消費量(出所:ICO統計2015年10月)」


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Colorda編集部