「いつまでも若々しく、健康でありたい」という願いを叶えるメソッドが、最先端の研究により明らかになってきている。
今回は、ストレスの軽減法に注目し、世界中の研究者の研究結果を幅広く紹介。多様な理論のなかから自分に合う方法を見つけ、ぜひ実践してほしい。

2017.1.5

ストレスに勝てないのは「副腎疲労」のせい?

今の日本が抱えるストレスとは?

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2012年4月に大分県由布市で海外からアンチエイジングの権威を招聘して「アンチエイジングサミットin由布院」を開催した。サミットは1年前に発生した東日本大震災とそれに続く福島での原発事故と放射能汚染の時代をいかに生き抜くかというテーマで開催された。会議ではとくにアンチエイジング医療の立場から「自らの健康を守るために」、今、日本人に何ができるのかに関して活発な議論が交わされた。

米国を代表する自然療法医学の権威であるジェームズ・ウィルソン博士は、原発事故から1年が経過した現時点(当時)での日本では、放射能に汚染された食品を摂取する際におきる、内部被爆による身体的ストレスばかりでなく、絶えず危険に身をさらしている心理的ストレスや、将来の不安に対する精神的ストレスは測り知れないと警鐘をならした。

その症状、うつ病でも更年期症状でもなく、本当は副腎疲労かも

ウィルソン博士は、人間がストレスを受けたときに反応する副腎という臓器に注目した。副腎はストレスに反応して「コルチゾール」というホルモンを分泌している臓器だ。副腎が十分に機能してコルチゾールが正常に分泌されていれば、人間は多少の放射能や環境汚染物質によってもたらされる物理的なストレスや少々の精神的ストレスを受けても、脳の細胞や免疫を司る細胞が障害を受けることはない。しかし過度のストレスが長時間続いた場合には、副腎がコルチゾールを十分に分泌できない状態に陥る。このときには「朝起きられない」、「仕事の能率が低下する」、「性欲が低下する」、「燃え尽きてしまう」、「慢性的に疲労が蓄積して回復しない」などの症状が出現する。

ウィルソン博士はこの「ストレスに打ち勝つことができない」病態に対して「副腎疲労」という新たな疾患概念を提唱した。長年アリゾナで「副腎疲労」を治療してきたウィルソン博士によれば、日本でも国民の半数以上に「副腎疲労」が広まっている可能性を示唆する。博士によれば「副腎疲労」という疾患の存在自体が医師に認知されていないために「多くの患者が正確に診断されずに次々にクリニックを放浪している」と指摘する。実際、多くの副腎疲労の患者がうつ病や男性更年期障害と診断され適正な治療を受けられずにいたり、東洋医学やアロマセラピーといった代替医療に流れていったりしているのが現状である。

副腎疲労を解消するために

副腎疲労の診断のためには血中のコルチゾールを朝8時と夕方4時に測定し、それぞれ15マイクログラム/dl、10マイクログラム/dlより低く上記の症状があれば比較的簡単に診断がつく。

副腎疲労の治療には午前、午後に疲労が強い時間帯に横になり身体を休めることを勧めている。朝起きたら、まず楽しいことを頭に思い浮かべることも重要だと博士は指摘する。食事は良質なたんぱく質、ナッツなどの油、そして未精製の炭水化物を摂取するように心がける。野菜を十分に摂取し、不足している塩分を補給し、「一口30回噛むこと」も症状を改善させるとウィルソン博士。また、ビタミンB、C、E、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル、リコリス、アシュワガンダといったハーブに有効性が報告されている。リコリスは漢方で使用される薬草「甘草」の成分で日本ではハーブティーやサプリメントとして手に入れることが可能だが、アーユルヴェーダで使用されるハーブ「アシュワガンダ」は最近、日本では医薬品扱いになったので注意を要する。

食事や生活習慣を改善しても症状がよくならない場合にはコルチゾールやDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)などの副腎ホルモンを使うこともあるが、通常、症状の回復には軽症で半年、重症では2年程度の治療が必要になる。博士は「ストレスに強い身体をつくるにはまず生活習慣の見直しが必要」と日本国民にメッセージを送った。


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Colorda編集部