CASE STUDY02
K奈さん(27歳、証券会社勤務の社会人5年目)
- 月経周期
- 11歳で初潮を迎えて以降、毎月ほぼ定期的
- 環境の変化
- 大学進学を機に上京。卒業後はそのまま東京都内の企業に就職。仕事は比較的規則的で休みもきちんと取れ、残業はあまりなく生活リズムは安定していた
- 受診の経緯
- 最近付き合いだしたパートナーと性交後に少量の出血があり、心配になって来院
- 婦人科の受診歴
- 3年前に会社の健康診断で子宮頸がん検査を受診、とくに異常はなかった
所要時間
問診と検査で15~20分(内診あり)
どんなことをした?
Check1 月経周期と出血時期の確認
まずはこれまでの月経周期を確認しました。また、基礎体温のつけ方の指導も行いました。
次に、不正出血がいつ起きたのかを確認しました。性交後に初めて不正出血が起こり、その翌日も茶褐色の少量の出血があったとのことでした。
Tips 不正出血で確認すべきことは?
不正出血とは、月経以外の時期に起こる性器出血のことです。不正出血が起こった場合、下記を記録しておくと医師が判断しやすくなります。
- 月経後何日目なのか?
- 月経と月経のちょうど間のあたり(排卵時期)なのか?
- 月経直前なのか?
- 性交はあったのか、なかったのか?
- 排便後なのか?
Check2 内診&経膣超音波検査
出血の原因として、子宮腟部のびらんや膣内からの出血はないか、子宮頚管ポリープや子宮筋腫がないかのチェックをします。子宮腟部は子宮の一部であり、膣内に突出している部分です。20~40代の女性の場合、この子宮腟部が出血しやすい状態になっていることが多く、それを「子宮腟部びらん」と呼んでいます。びらん自体は病気ではありません。
また、経膣超音波検査(エコー検査)で子宮や卵巣の状況をチェックします。これは、プローブと呼ばれる棒状の探触子を膣内に挿入し、子宮や卵巣の状態を超音波によってリアルタイムで確認できる検査です。被曝の心配はありません。排卵時に出血することもあるため、卵巣の卵胞の状態なども確認します。
Check3 子宮腟部細胞診(子宮頸がん検査)、クラミジア抗原検査
不正出血の原因として、子宮頸がんやSTD(性行為感染症)の一種であるクラミジア感染などが考えられます。とくに、20~30代女性におけるクラミジア感染は珍しくなく、その一方でほとんど症状がないため、このような不正出血時の検査から見つかることも少なくありません。
なお、子宮膣部細胞診、クラミジア抗原検査ともに、結果が出るまでに2週間程度かかります。
Tips 子宮腟部細胞診とHPV(ヒトパピローマウイルス)検査
子宮頸がんは、HPV感染によって引き起こされることがわかっています。そのため、海外では子宮腟部の細胞診よりもHPV検査が優先されるようになってきました。HPV検査で陽性が出た場合、子宮頸がんを発症していないだけで、その原因となるウイルスは保持しているということになります。HPVは自然排出されることがあるので、以前は陽性だったが今回は陰性だった、ということもあり得ます。
日本ではHPV検査は自費になりますが、自身が現在HPVを保持しているかどうか確認できるので、あわせて受けておくとよいでしょう。なお、細胞診で異常な細胞が見つかったときには、保険診療でHPV検査が行われます。
診断結果
クラミジア頚管炎
2週間後の検査結果では、クラミジア抗原検査が陽性でした。新しいパートナーからの感染か、前のパートナーからの感染かはわかりません。クラミジア感染は、男性の約50%、女性では驚くべきことに80%は症状がほぼありません。今回のように、不正出血や下腹部痛、帯下(たいげ、「おりもの」のこと)が多くなったなどのちょっとしたサインを見逃さないようにしましょう。
クラミジア感染はきちんと治療をしておかないと、将来、骨盤腹膜炎などを起こして、不妊症の原因となることも。また、パートナーも同時に治療をしておかないと、せっかく治療して治癒しても、また相手から感染をもらってしまうと、いつまでも治療できない状態(ピンポン感染)が続くことになります。パートナーの検査や治療については、医師に相談してみましょう。
治療薬は、最近ではクラミジアによく効く抗生剤が開発され、1回の服用でもきちんと治療できるようになってきました。クラミジア感染がある場合、ほかのSTDを同時に感染していることもあるため、検査を受けておきましょう。
メディカル知恵袋
フリーのときにSTDチェックを! 性交時には感染予防を
海外では、パートナーと別れてフリーのときにSTDチェックをするという考え方があります。そのときに何か感染が見つかればしっかりと治療できますし、次のパートナーと関係を築いていくときに自分がSTDを持っていないということは、相手に対しての最低限の礼儀にもなります。また、妊娠を考えているのでなければ、避妊と感染予防のため、性交時には最初からきちんとコンドームをつけるも大事なことです。