将来の妊娠&出産希望とは関係なく、子宮環境をととのえておくことは仕事もプライベートも快適に過ごす秘訣。

実際のケーススタディから、「こんなときはどんな検査をした?」「何が原因?」を産婦人科医師が解説、働く女性の子宮環境を考える。

これを読んだら、何もなくてもまずは産婦人科へ行ってみない?(全6回)

2017.6.1

Vol.4 「おりもの」は体調のバロメーター、正しい知識とカンジダ予防

CASE STUDY04

F絵さん(25歳、飲食店勤務の社会人3年目)

月経周期
12歳で初潮を迎えて以降、毎月ほぼ定期的。月経痛もなく月経量も普通
環境の変化
就職と同時に地方から上京。飲食店を展開する企業に就職し、現場にて勤務。仕事は比較的規則的で、休みもきちんととれているが、終業時間が遅く、帰宅は真夜中
受診の経緯
半年前につき合いだしたパートナーがいるが、そのころからデリケートゾーンのかゆみを時折感じるようになり、心配になって来院
婦人科の受診歴
3年前の入社時に会社の健康診断で子宮頸がん検査を受けて、とくに問題なかった。その後は忙しくて定期的な診察はまったく受けていない

・全国の「レディースドック」受診可能な医療施設はこちら>

所要時間

問診と検査で15~20分(内診あり)

どんなことをした?

Check1 ライフスタイルの確認

まず、STD(性行為感染症)の可能性を考え、最近のプライベートで今のパートナー以外との性交渉があったのかどうか確認しました。続いて、帯下(たいげ、「おりもの」のこと)の状態で気になる点、かゆみやにおいの状況についても確認。においはあまり気にならないが、水っぽい帯下が多くなることがあったり、白いカッテージチーズ状のかたまりのある帯下が出ることがあったりしているそうです。また、かゆみは、慢性的に続いているとのことでした。

Tips 帯下の確認ポイント

帯下で気になることがあれば、下記を意識してみるとよいでしょう。また、婦人科で診察を受ける際は、これらを伝えると医師が判断しやすくなります。

  • 色:透明、白、黄色っぽい、あるいはほかの色が混ざることがあるか、など
  • 状態:水っぽいのかクリーム状なのか、かたまりが出てくることがあるか、など
  • においの有無
  • かゆみの有無
  • ずっと同じ状態なのか、治ったり悪くなったりを繰り返しているのか

Check2 内診

外陰部の状態を視診しました。左右の小陰唇、大陰唇ともに、全体的に赤く炎症が起きていました。クスコという膣を広げる診察器具を用いた診察では、膣内に白い小さなプツプツとした物質が大量に確認できました。膣壁も赤く、こちらも炎症が起きていました。

Check3 膣分泌物培養検査、クラミジア抗原検査

内診の際に、帯下を少量採取し、膣分泌物培養検査とクラミジア抗原検査を行いました。帯下が多くなる原因は真菌性(カンジダ)か細菌性がほとんどで、さらにそれらの多くは、健康なときは身体に悪影響を与えない常在菌です。しかし気をつけたいのは、STD(性行為感染症)が原因の場合。STDであるトリコモナスや淋菌などが検出されたときはそれぞれにあった治療をきちんと行う必要があります。また、クラミジアもSTDの一種で、治療が必要です。クラミジアについては、Vol.2で詳しく解説しています。

なお、膣分泌物培養検査とクラミジア抗原検査ともに、結果が出るまで2週間程度かかります。

Tips 常在菌

私たちの身体には、「常在菌」と呼ばれる菌がすみついています。環境や生活習慣、あるいは部位にもより、持っている常在菌の種類や数は人によってさまざまです。身体を守る役割を持つものもあれば、ふだんはおとなしくしているけれど免疫が弱まったときに悪さをするものもあります。

診断結果

カンジダ外陰膣炎

2週間後の検査結果では、とくにSTDなどの原因と思われる結果は出ませんでした。一方で膣分泌物にカンジダが多く認められたため、かゆみの原因はカンジダによる外陰膣炎と思われました。一般的に菌の繁殖が原因の症状の治療には抗生剤が使われますが、真菌の場合は抗生剤を使うことでさらに悪化することがあり、またステロイド剤でも症状が悪化することがあるため、今回は、真菌の育成を阻害する抗真菌剤による治療を行いました。抗真菌剤には、膣内に入れる膣剤(錠剤)、外陰部に塗る軟膏、経口薬などの種類があります。

Tips カンジダ

カンジダは女性の膣内に普段からいる常在菌ですが、通常は身体の免疫などで抑えられているため症状が強く出ることがありません。しかし、体調の崩れや慢性的な疲労などによる免疫力低下、ジーンズなどデリケートゾーンが蒸れるようなパンツスタイルなどの環境要因によって、カンジダが増えやすい状況になり、かゆみやヒリヒリした痛みなどの症状が強く出てくることがあります。

メディカル知恵袋

免疫力を高めるだけで防げることがある

カンジダ外陰膣炎は、普段のライフスタイルに気をつけることで再発が少なくなります。具体的には、身体の免疫力を高めることと、デリケートゾーンが蒸れないような環境を作るように心がけることです。

免疫力は、規則正しい生活や十分な睡眠が当然大事ですし、食生活でもバランスよく野菜や肉魚などをしっかりと摂取することが必要です。足りない分はサプリメントなどを服用することも考慮しましょう。腸内免疫という観点から、ヨーグルトなどで乳酸菌を毎日摂ることもよいでしょう。

蒸れない環境を保つためには、ジーンズなどパンツスタイルは極力避けて、下着は通気性のよい素材を選ぶことが大事です。おりものシートなどはかえって通気性を妨げて症状が悪化することもあるので、できるだけ使用しないことです。たとえば、オーガニックコットンの下着をこまめにはきかえることが身体にもっともやさしい対処法です。

デリケートゾーンにかゆみや違和感のあるときは、皮膚の炎症などダメージのあるときなので、水やぬるま湯だけで洗い流すようにして石鹸などは使用しないようにしましょう。水は本来、洗浄力が高く、汚れを落としてデリケートゾーンを清潔にすることが充分可能です。


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Colorda編集部