女性に取って大切な臓器だからこそ、病気の予防に努めたい
子宮や卵巣は女性にとって重要な臓器だ。同時に、深刻な病変が生じやすい部位でもある。子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんは、婦人科疾患のなかでは乳がんに次いで死亡数が多く、予防や早期発見に努めるべき疾患といえる。レディースドックなどで検査を検討している人もいるだろうが、すべての検査がプランに入っているかわかりづらいと感じる人もいるだろう。それぞれ原因や症状が異なり、検査法も異なっているので、詳しく説明する。
頸部と体部の検査は病変部へのアプローチが違う
子宮がんは、子宮頸がんと子宮体がんの2つにわけることができる。子宮頸がんは子宮の頸部に生じるがんで、比較的外界と近い。そのため、子宮頸がん検査では、膣を経由して直接、細胞を採取することができる。ブラシで採った細胞を細胞診にかけて、異常がないかを調べる。検査は簡便であり、痛みや不快感なども少ない。もしも異常が見つかれば、精密検査であるコルポスコープ診や組織診が行われる。コルポスコープ診とは、機械的に膣を開き、膣拡大鏡(コルポスコープ)を挿入して子宮内を詳細に観察する検査だ。
一方、子宮体がんは、体部と呼ばれる子宮の奥に生じるがんで、外界からは比較的遠い。そのため細胞診のみでは不十分であり、経膣超音波検査を併用することが多い。子宮内膜が肥厚するという子宮体がん独特の症状を超音波検査によって調べる。また、子宮頸がん同様、コルポスコープが用いられることもある。
卵巣がんは血液検査や画像検査で診断する
卵巣は子宮の左右に一対存在している生殖器である。子宮とは卵管で接続しており、卵巣内には卵胞と呼ばれる卵子の原型が多数収められている。細胞分裂が活発な場所で、女性ホルモンの分泌腺でもあるため、腫瘍が発生しやすくなっている。卵巣がんがその代表といえる。
卵巣は直接アプローチすることが難しいため、ブラシなどで細胞を採取できない。そこで行われるのが血液検査やCT、MRI検査である。もしも卵巣がんにかかっていれば、血液中の腫瘍マーカーが高値となる。あるいは、CTやMRIなどの画像診断によって、視覚的に卵巣の腫瘍を検出することができる。ただし、腫瘍が見つかったからといって悪性とは限らない。とくに卵巣がんは自覚症状が乏しいため、摘出してみなければ確定診断を下すことは難しいといえる。
年齢や症状にあわせて、子宮頸がんの細胞診や、超音波検査、血液検査やCT、MRI検査を組み合わせて受診しよう。

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)