死亡リスクは30代の3倍に急増する年代!?
40代は現代の男性にとって最も多忙を極める年代であり、日常的に無理を余儀なくされている人も少なくないだろう。しかも、長年の疲労やストレスの蓄積が思わぬ重大な病気となって現れはじめる時期なので体調には細心の注意が必要だ。
厚生労働省の調査結果を見ると、男性の死亡の原因となる疾患は幅広い年齢層で悪性新生物(がん)、心臓疾患、脳血管疾患の順であるが、これらの疾患による40代の死亡者数を30代と比較するとどれも増加傾向にある。健康管理を怠れば取り返しの付かない事態に直面することを認識しなくてはならない。
40代から始まる前立腺がんのリスク
日本人間ドック学会が実施した全国集計(2015年)によれば、人間ドックを受診した40代男性に多く発見されたがんの種類は大腸がん(13.9%)、胃がん(6.8%)、肺がん(5.7%)、前立腺がん(2.5%)の順になっている。特筆すべきは40歳未満の受診者にはほとんど発見されなかった前立腺がんが4位に現れていることである。
日本国内における前立腺がんの患者数は過去10年間で約4倍に増加したと言われ、食事の欧米化(動物性脂肪)も要因のひとつと考えられている。初期段階で自覚症状は無いが、前立腺肥大症と併発することが多いので、頻尿や排尿困難などの前立腺肥大症が疑われる症状に心当たりがあれば検査を受けた方が良い。
検査は簡単だ。血液検査によって血中のPSA(前立腺特異抗原)の濃度を測定すればがんだけでなく、前立腺肥大や前立腺炎の可能性が診断できる。数値が基準値を超えていればMRIやCT、組織検査などの精密検査を行うが、骨やリンパ節に転移することが多いので早期発見が重要である。
全身のがんを一度に診断できるPET検査
胃がん、大腸がん、肺がんなどの早期発見に有効な手段としてPET(Positron Emission Tomography)検査がある。PETはがん細胞が正常な細胞と比べて多くのブドウ糖を取り込むという性質を利用したもので、ブドウ糖に近い成分の検査薬でがんをマーキングして行う断層撮影検査だ。一度に全身の撮影が可能で、わずか数mmの初期がんも検出することができる。がんのリスクが高まる40代なったら一度受診しておくと安心な検査である。
がんばかりでなく、心臓疾患や脳血管疾患の発症率も急速に高まる年代。これらの疾患のおもな要因となる生活習慣病の多くは自覚症状をともなわないので、検査を受けなければ状態を把握することができない。繰り返しとなるが、30代に比べ急激に病気リスクが高まる40代は、重大な疾患に陥ってしまう前に、人間ドックなどを活用して積極的な健康管理に取り組んで欲しい。

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)