2016.5.26
肝臓がんの腫瘍マーカー

肝臓がんの腫瘍マーカー「AFP」とは?

肝臓は再生力に長けた臓器。 半分以上失っても回復する!?

High liver enzyme result腫瘍マーカーは、体内にがんの腫瘍ができると、特殊な物質が大量につくられ、血液中に出現するという特性を利用した血液検査だ。人間ドックの検査結果で、よく見かける腫瘍マーカーだが、「どの腫瘍マーカーが、どのがんのリスクを示しているのか?」「どれくらいの値から注意が必要なのか?」を理解している人は少ないのではないだろうか。

今回は、肝臓がんの腫瘍マーカー「AFP」について説明する。

肝臓は化学工場という別称があるほど、化学反応が盛んな臓器である。2500億個という膨大な数の細胞で構成され、そのひとつひとつで500種類の異なる化学反応が同時並行的に起こっている。また、再生能力も高く、たとえ外傷や疾患などで半分以上の面積を失ったとしても、正常な肝機能が起こっていれば元通りに再生していく。

それだけに、肝臓がんを患ったとしても、初期では自覚症状が現れにくい。沈黙の臓器とも呼ばれており、疾患が発覚するときには重症化しているケースが多い。そこで有用なのが腫瘍マーカーだ。肝臓ではAFPと呼ばれる腫瘍マーカーを頼りに、がんの診断を行う。

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AFPは、胎児期に現れるたんぱく質

AFPとはαフェトプロテインの略称で、おもに胎児期に現れるはずのたんぱく質である。胎児は、母体からの栄養をへその緒、正式名称・臍帯(さいたい)、および胎盤を通して摂取する。AFPはその物質のやり取りをサポートする役割を担っている。胎盤から離れ、自ら経口摂取するようになる出生後は、当然のことながらAFPの産生は低下する。

出生時のαフェトプロテインの血中濃度は10,000~100,000 ng/mlで、これをピークに生後1年には10ng/mlにまで減少する。この値はそれ以降、一定となる。重要なのは、肝臓がんを患った場合に、肝細胞癌が、AFPを血液中に放出することがあり、AFPの値が再び上昇するという点だ。

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AFPの基準値と異常値

AFPの基準値は、20ng/ml以下(RIA固相法)とされている。

AFP値が200~400ng/mlであるなら、肝臓がんの可能性が高くなる。400~1000ng/mlであるならその可能性はさらに高まる。基準値が20ng/mlであるため、その数十倍の濃度に達しているのだから、何らかの異常があることは間違いない。しかしながら、AFPが高値のケースがすべて肝臓がんというわけでもない。腫瘍マーカーははあくまでスクリーニング検査であり、肝臓がんのリスクを調べるにとどまる。

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AFPは肝臓がん以外にも、肝炎などでも上昇する

AFP値の上昇は、肝硬変や肝炎でも見られることがある。具体的には、肝細胞の壊死にまでおよぶ劇症肝炎や慢性肝炎憎悪期が該当する。肝臓がんとの鑑別は、AFP値の上昇度と上昇曲線だ。極端な上昇値と経時的な値の上昇が見られる場合は、肝臓がんである可能性が極めて高い。

劇症肝炎や慢性肝炎であっても、さらに重症化すれば肝臓がんへと移行することも珍しくはないので、いずれにしてもAFP値の上昇が見られた場合は、医療機関で精密検査を受けることが望ましい。

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矢後 尋志(やご ひろし)
この記事の監修ドクター
東京ベイサイドクリニック 院長
医学博士【研究テーマ:大腸癌発癌】/日本外科学会専門医/日本消化器内視鏡学会専門医/日本消化器病学会専門医/日本肝臓学会専門医/日本泌尿器科学会専門医/日本消化管学会胃腸科認定医/日本人間ドック学会認定医/内視鏡的胃内バルーン留置術認定医/内痔核四段階注射法認定医/日本医師会認定産業医

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Colorda編集部