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2016.7.21

フォアグラはガチョウの脂肪肝。食べても健康に害はないのか?

ヒトで考えると生活習慣病の肝臓

Closeup of a plate of foie round steak
フォアグラはキャビア、トリュフとともに世界三大珍味のひとつ。赤ワインを飲みながら、口のなかに広がるフォアグラの独特の香りと食感を楽しむ美食家も多いだろう。

フォアグラはフランス語で、フォア(foie)は「肝臓」、グラ(gras)は「脂の多い」、つまり「脂肪肝」を意味する。脂肪肝といえば、ヒトでいえば、生活習慣病のひとつ。国民の3人に1人が潜在的にかかっているといわれる代表的な生活習慣病だ。もともと肝臓は3〜5%の脂肪を含んでいるが、脂肪が5%を超えた状態を脂肪肝と診断している。糖分や脂質、アルコールの過剰摂取により、小腸で分解・吸収された脂肪酸が、肝臓に運ばれた後に中性脂肪に変換され蓄積されることで起こる。

脂肪肝は肝炎、肝硬変、肝臓がんの原因に

肥満や糖尿病、アルコールの飲み過ぎが、おもな脂肪肝の原因で、男性では40歳前後、女性では40代以降の中高年に多発している。

しかし肝臓は、“沈黙の臓器”と呼ばれるほど、病気になっても自覚症状が出づらい臓器だ。気づかぬうちに脂肪肝になっている可能性もあるので、定期的に健診を受けることが早期発見、早期治療のために重要になる。アルコール性の脂肪肝の場合は放置すると肝硬変に進むこともあるので注意が必要だ。

最近ではアルコールを飲まない人でも脂肪肝から肝炎、肝硬変、肝臓がんへと病変が進行していくことが知られていて「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」と呼ばれている。脂や糖分の多いバランスを欠いた食生活や運動不足による内臓脂肪の増加が原因と考えられているが、無理なダイエットとリバウンドを繰り返して肝臓に負担をかけている若い女性症例も増えている。

フォアグラは病気?

ヒトでは脂肪肝は病気と考えられているが、鴨やガチョウの脂肪肝つまりフォアグラは果たして病気なのだろうか? もともと鴨や雁などの鳥は長距離を飛ぶためにエネルギー源として肝臓に脂肪を蓄える生理学的機能を持っている。実際、渡り鳥は「渡り」の時期が近づくと食物をあさり、脂肪を肝臓に蓄える習性があることが知られている。つまり鳥類の脂肪肝は病気ではなくて「渡り」に必要なエネルギーの貯蔵なのだ。ヒトでも脂肪が肝臓や筋肉にたまる状態を医学的に「異所性脂肪浸潤」と呼んでいるが、食料なしに長距離を走らなければならない状況になれば、タフなのは「脂肪肝」の人だろう。でも美食家にとってはそんな理由はどうでもいい話なのかもしれない。


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Colorda編集部