CYFRAで疑われる病気
腫瘍マーカーは、体内にがんの腫瘍ができると、特殊な物質が大量につくられ、血液中に出現するという特性を利用した血液検査だ。今回紹介する、CYFRA(サイトケラチン19フラグメント)は、肺がんの診断に使用される腫瘍マーカー。とくに、非小細胞がんに高い陽性率を示す。
そもそも肺がんは、小細胞がんと非小細胞がんの2つに大きく分けることができる。小細胞がんとは、文字通り小さながん細胞で、細胞質に乏しい。進行が早く、ほかの臓器に転移しやすいがんである。
一方、非小細胞がんは、肺に発生した小細胞がん以外のものを指し、肺や気管、肛門や子宮など内腔がある臓器の内側の組織や粘膜にできる扁平上皮がんなどが代表である。とりわけCYFRAは扁平(へんぺい)上皮がん、大細胞がん、腺がんといった非小細胞がんに高い陽性率を示す。いずれのタイプも、肺門部と呼ばれる肺の中枢に発症しやすいがんである。
初期の扁平上皮がんでも異常値を示す、CYFRAの基準値とは?
CYFRAとはサイトケラチン19フラグメントの略称である。上皮細胞に広く分布する細胞骨格を担っている中間径フィラメントだ。がんを発症するとこのサイトケラチンが溶解し、血液中へと流れ込んでいく。つまり、CYFRAの血中濃度が高まると、扁平上皮がんなどの非小細胞がんが疑われるのだ。ちなみに、CYFRAの基準値は、2.0ng/ml以下(IRMA法)。
CYFRAを用いた血液検査の感度は高く、初期の扁平上皮がんでも異常値を示すことがある。そのため、血液検査で陽性を示した場合は、続いて精密検査を受けることが望ましい。具体的には、胸部X線検査、気管支内視鏡検査、喀痰検査などが挙げられる。当然のことながら、肺がんは早期の治療ほど良い結果が望めるため、精密検査も早期に受けておきたい。
・胸部CT検査が可能なお近くの医療施設をお探しの方はこちら>
肺扁平上皮がんと喫煙習慣との関連
肺扁平上皮がんと喫煙習慣には強い関連がある。タバコの煙は吸気と伴に、気道から肺門部へと運ばれる。日常的に喫煙している場合、肺門部はタバコに含まれる発がん物質に曝露される時間も長い。喫煙歴が長ければ長いほど、あるいは1日の喫煙本数が多いほど、肺の上皮細胞には発がん物質が蓄積していると考えられる。そのため、喫煙習慣がある場合はぜひとも受けておきたい検査項目といえる。
ただ、CYFRAは乳がんや卵巣がんでも陽性を示すことがあるため注意が必要だ。