2016.9.5
精巣がん

精巣がんの検査方法と治療法

20代の発症リスクが高い、精巣がん

Illustration showing the male reproductive system
日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が死亡すると言われているがんは、医療技術の進化により早期発見が可能になってきている。がんの検査方法と治療法シリーズ第7回は、20~30代の若い年代で発症リスクがもっとも高い精巣がんについて紹介する(※1)。

精巣とは、いわゆる睾丸を意味し、そこにできる悪性腫瘍が精巣がんだ。罹患率は10万人に1人(※2)とまれだが、比較的若い男性に発生しやすく、転移を起こしやすいがんでもある。ここでは、そんな精巣がんの検査法と治療法について詳しく解説する。

触診と血液検査でスクリーニング

精巣がんの検査では、まず始めに医師による触診が行われる。精巣が収まっている陰嚢を外から触ることで、しこりなどの有無を調べる。ただし、がんではなく、余分な水分が溜まってしまう疾患の水腫によってもしこりが感じられることがあったり、腫瘍が小さかったりすると誤診する可能性があるため、触診のみでは確定診断はできない。

そこで次に行われるのが、血液検査である。精巣がんでは、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)やAFP(αフェトプロテイン)といった腫瘍マーカーが有効で、腫瘍の発見に役立つだけでなく、治療後の経過観察にも活用できる。ただ、これらの腫瘍マーカーは、精巣がん以外の病変でも陽性反応がでることがあるので、こちらも血液検査のみでの判断することは難しいがスクリーニングとしては有効だ。

精巣がんを調べる画像診断2つのメリットデメリット

触診や血液検査によるスクリーニングが終わると、次に腫瘍の性状やほかの臓器への転移の有無を調べる。精巣がんでは、超音波検査とCT検査が行われることが多い。まずは両検査の特徴を比較してみよう。

被曝 性質と状態 血流 費用
超音波 なし 観察難 観察可 安い
CT あり 観察可 観察不可 高い

超音波検査はエコー検査とも呼ばれている画像検査だ。超音波を該当する部位に当てて、その反射を映像化することで内部の状態を知ることができる。上の表にあるように、超音波検査は陰嚢に超音波を当てるだけなので、被曝がなく、患者が感じる苦痛も少ない。それに加えて、この検査は臓器や血管などの軟組織や液体の描出に長けているため、腫瘍と水腫の鑑別も容易である。また、カラードップラー法という血液の流れを検出する方法を用いれば、血流の方向や速度なども一緒に調べることができる。ちなみに、カラードップラー法は造影剤を必要とせず、超音波装置のモードを切り替えるだけで実施できる。ただ超音波検査で得られる情報は、基本的に腫瘍の大きさや位置といった大まかな情報がメインとなる。

一方、CT検査は、腫瘍の性状をある程度細かく診ることが可能で、リンパ節やほかの臓器への転移も発見しやすい。CT検査は、X線を使って身体の断面を撮影する検査だ。そのため、そうしたメリットがある反面、被曝を伴ったり、造影剤による苦痛を感じたり、費用が比較的高額であったりといったデメリットも存在している。精巣がんではそのほか、必要に応じてMRI検査や骨シンチグラフィーなども実施されることがある。

精巣がんの治療法

精巣がんの治療は、基本的に精巣の摘出術が適応される。その後の治療は、腫瘍の種類がセミノーマか否かによって、異なってくる。セミノーマとは精上皮腫を意味し、腫瘍全体が精巣上皮由来である。それ以外の腫瘍成分が含まれている場合は、非セミノーマとして分類される。

セミノーマに対しては放射線療法が有効であり、化学療法を組み合わせながら治療が進められていく。一方、非セミノーマには放射線療法が効かないため、化学療法とリンパ節郭清などの外科療法を組み合わせて治療が行われる。

ほかのがんと異なり、若い層に好発する精巣がんは、10代の発症事例も少なくない。しこりの有無や、下腹部の重圧感や鈍痛がある場合は、一度検査を受けてほしい。

※1  IMICライブラリ がんinfo 精巣腫瘍より(一般社団法人国際医学情報センター)
※2 精巣(睾丸)腫瘍 基礎知識より(がん情報サービス)

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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Colorda編集部