2016.1.7
20代女性の健康リスク

20代女性が受けるべき人間ドック

若年層化が進んでいる子宮頸がん、乳がん

s_ThinkstockPhotos-46740323220代は体力も気力も充実した時期であり、統計的に見ても男女ともに病気にかかりにくい年代であるが、一方で体調の乱れに気付きにくく、健康管理が見過ごされがちな年代とも言える。とくに女性の場合、発症の低年齢化が指摘されている女性特有のがんや甲状腺機能の低下による疾患が起こり始める時期なので注意が必要だ。

厚生労働省の過去20年間の調査結果によれば子宮頸がんの発症は明らかに若年層化しており、とくに20~30代の発症件数が急増している。そのため厚生労働省は20歳を過ぎたら2年に一度は検診を受けるよう推奨している。子宮頸がんの検査は医師による視診と子宮頸部の粘膜を採取して調べる細胞診で、どちらも短時間で済む簡単な検査だ。

さらに、がんの中で女性に最も多い乳がんの罹患数にも若年層化が進んでいる。国立がん研究センターの統計データ(2013年)から試算すると、20代での罹患数は全体数から見ると0.4%と低い数値ではあるが、20代後半では20代前半と比較して約15倍の罹患数となっている。遺伝的要素も指摘されているので、近親者で乳がんにかかった人がいる場合には、定期的な乳がん検査(乳腺超音波診断、マンモグラフィー検査)を受けるべきである。

20代後半からは甲状腺の疾患に注意

甲状腺の機能が原因で起こる疾患も女性に多く見られ、女性の患者数は男性の約4倍である。若い女性に多く見られる代表的な疾患はバセドウ病と橋本病だ。

バセドウ病は甲状腺ホルモンの分泌が過剰になって起こる疾患で、動機や脈拍の異常、体重の減少などの症状がみられる。橋本病は逆に甲状腺ホルモンの不足によって起こる疾患で、手足のむくみや首の腫れ、うつ状態、月経不順などの症状を現すのが特徴である。これらの症状が見られたら、ほかの疾患の可能性も含めて検査が必要である。甲状腺ホルモンの分泌状態は血液検査(血中のFT4、TSH値)によってわかる。異常を放置すると、排卵や月経周期に影響を及ぼして妊娠出産にも支障をきたすので、早期の治療が必要である。

これらの疾患は、早期発見することで治療法の選択肢が広がる。女性向けの人間ドック(レディースドック)の検査項目には、子宮頸がんや乳がんの診断、甲状腺機能を調べるための血液検査が含まれているものもあるので、1年に一度のペースを目処に、定期的な受診をおすすめしたい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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Colorda編集部