毎日ニシンを食べ続けた結果、115歳まで生きた女性
2005年8月30日、オランダで115歳と62日を生きた女性、ヘンドリック・ヴァン・アンデル・シッパーさんが亡くなった。研究に役に立つのなら死後解剖してくださいというシッパーさんの生前の依頼により、死後解剖されその結果が医学雑誌に公表された。
シッパーさんの脳には老化の兆候がまったくなく、記憶を司る海馬の萎縮も認められなかった。シッパーさんは毎日の食卓にニシンを欠かしたことがなかった。オランダでは新鮮なニシンは生のまま、塩漬けにしたニシンもタマネギのスライスを添えて食べている。ニシンに含まれている不飽和脂肪酸はオメガ3脂肪酸という種類のものだ。うつを予防し認知機能を改善する効能が報告されたことから、ニシンはブレインフードと呼ばれている。しかも噛みごたえのある魚なので、シッパーさんは毎日の食卓で何回も噛むことが習慣化していた。
ガムを噛んだら物覚えがよくなる!?
最近では咀嚼それ自体に認知機能を保つ働きがあることも明らかとなった。神奈川歯科大学の小野弓枝准教授によると、被験者に2分間チューインガムを噛ませた後、機能的磁気共鳴画像(fMRI)を使い脳の活性化部位を検証したところ、高齢者では記憶活動に伴う海馬の活動領域が拡大していることがわかった。実際、高齢者と若者にガムを噛みながら記憶テストを受けてもらうと若者ではガムを噛んだときもガムを噛まなかったときも記憶テストの正答率に差がなかったのに対し、高齢者に記憶テストを受けてもらうとガムを噛むことにより正答率は有意に上昇した。
咀嚼を習慣化している人で認知機能が保たれる理由のひとつが解明された。つまり咀嚼は高齢期に低下する感覚入力を補い、錆びついた神経回路を活性化する「脳のジョギング」のようなものなのだ