むくんでいるとき、体内はどうなっているのか?
寝起きや立ちっぱなしのときなど、頻繁に起きる「むくみ」。とくに女性に多くみられるこの状態は、どうして起こるのだろうか?
むくみとは、「血漿(けっしょう)」が、血管の外にたまった状態をいう。血漿は、血液から赤血球、白血球、血小板を除いた体液で、その90パーセント以上が水分だ。ナトリウムイオン、塩化物イオン、タンパク質などが含まれており、栄養や酸素を全身に運んでいる。と同時に、細胞から出された老廃物や二酸化炭素を集め、静脈やリンパ管にのって体内を循環している。しかし血行が悪いと、血漿が静脈やリンパ管に取り込めなかったり、または潤滑に流れず血管の外にたまってしまったりする。そして「むくみ」と呼ばれる現象を引き起こすのだ。また、静脈やリンパ管を通る液体は、骨格筋の動きによって流れるため、長時間、身体を動かさずに循環が滞ると、むくみを引き起こす。ひどくなれば、代謝不良で肥満をまねくほか、下肢静脈瘤などの病気を併発するので注意が必要だ。
「アルコール」「塩分」「運動不足」が身体をむくませる
お酒を飲みすぎて、顔や身体がパンパンになったことはないだろうか? アルコールは血管の壁の状態に影響する。具体的は水分を通し安くさせ、その結果、血管内に保持されていた血漿が、血管外に漏れ出てしまう。血管壁は水分の透過性を調整し、血管内になんとかして血漿を維持しようとしているのだが、この機能が低下してしまうのが原因だ。
また、塩分の多い食事は要注意。身体は血液中の塩分濃度を下げるため、水を溜め込んでしまうのだ。食事後は、利尿作用のあるカリウムを含む野菜や果物を食べて無駄な水分を出すことを心がけたい。さらに、血中のタンパク質が減っても水分量が増えてしまうので、脂質の少ない肉や魚を摂るのも忘れずに。
夕方になると足がむくむのは、時間が経つにつれ、身体が重力に引っ張られて水分が足の方にたまってしまうためだ。重力に逆らって血液を循環させるには、筋肉、特にふくらはぎの動きが必要になるので、1時間に1回を目安に身体を動かしてほしい。仕事の合間であれば、強めにふくらはぎを揉み、足先を曲げ伸ばしする簡単なストレッチでもよい。ゴルフボールを使い、足裏を刺激するのも、血行を促進させ効果的だ。
むくみ予防と対処には、身体を温めること
むくみをコントロールするには、身体を温めることが重要だ。いちばんの予防と対処法は、ぬるめのお湯に浸かること。身体が温まると、腎臓の血流と尿の量が増え、無駄な水分が出やすくなるのだ。また、腰の上あたりや太ももに蒸しタオルをのせて体温を上げるのも有効な手段だ。
日頃から、水分と塩分に配慮した食事、まめな運動やマッサージなどを実践してみよう。腎臓のツボがあるアキレス腱を揉んだりするのもよい。
春の三寒四温、梅雨入り、ゲリラ豪雨や台風など、気圧が急に下がるときなど、ヒトの身体は膨張する仕組みになっている。このような避けがたい気圧変化によるむくみも、普段から血行を意識することで、症状を最小限にとどめたい。

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)