将来の妊娠&出産希望とは関係なく、子宮環境をととのえておくことは仕事もプライベートも快適に過ごす秘訣。

実際のケーススタディから、「こんなときはどんな検査をした?」「何が原因?」を産婦人科医師が解説、働く女性の子宮環境を考える。

これを読んだら、何もなくてもまずは産婦人科へ行ってみない?(全6回)

2017.3.9

Vol.1 “働く女性あるある”の代表、「生理不順」を見過ごさないで

CASE STUDY01

M美さん(23歳、外資系企業勤務の社会人2年目)

月経周期
12歳で初潮を迎えて以降、毎月ほぼ定期的
環境の変化
就職を機に関西から東京へ転居、アメリカ本社とのテレビ会議などが深夜や早朝に行われることがあり、生活リズムが不規則になりがち
受診の経緯
社会人2年目の春に2ヶ月間生理が来ないことがあったがとくに気にしなかった。夏に仕事が忙しくなり、生活リズムが不規則に。睡眠不足が多かった。秋に生理がこなくなって3ヶ月目に入り、心配になって来院
婦人科の受診歴
初めて

・全国の「レディースドック」受診可能な医療施設はこちら>

所要時間

問診と検査で15~20分(内診なし)

どんなことをした?

Check1 月経周期の確認

最近は「ルナルナ」などスマホを使った生理周期の記録アプリが多く出ています。M美さんはアプリを利用して記録していため、まずはこれまでの月経周期を確認しました。また、基礎体温をどうやってつけるのかの指導も行いました。

Tips 基礎体温の測り方

睡眠から目覚めたときに最初に測った体温を基礎体温といいます。寝床から起き上がったときや、部屋を動き回る前に婦人科体温計を使って体温を計測します。夜勤がある方、就寝時間や睡眠時間が不規則な方は、5~6時間寝たのちに目が覚めたときに測定すれば大丈夫です。

Check2 妊娠検査(尿検査)

M美さんにはパートナーがいて、きちんと避妊をしていたとのことでしたが、念のため妊娠の可能性がないかどうか尿検査で判定します。

Check3 血液検査

採血を行い、FH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体形成ホルモン)、E2(エストロゲン)、プロラクチン、甲状腺ホルモンなど女性ホルモン関連の数値を見ました。

Tips 月経周期にかかわる女性ホルモンたち

脳の下垂体から分泌されるFSHとLHによって、排卵の準備や排卵が行われます。これらの女性ホルモンがきちんと機能しているかどうかはE2(エストロゲン)の数値によって確認できます。また、同じ下垂体から分泌されるプロラクチン(乳汁を分泌させる働きがある)の数値が高いと月経不順になることがあるほか、甲状腺ホルモンの異常でも月経不順になります。

Check4 ライフイベントの確認

急激な体重の増減や大きな環境変化は月経不順の原因となります。とくに、就職や転職などで住居環境やライフスタイルそのものが変わることがきっかけとなりやすいです。また、慢性的なストレスや不規則な生活も月経不順を引き起こします。

診断結果

一時的な月経異常

血液検査では大きな異常も認められなかったことから、「一時的な月経異常」であったと思われます。おそらくは、環境の大きな変化や仕事のストレス、不規則なライフスタイルから起こったと考えられるので、まずはできる範囲で自身の生活習慣を変え、ストレスを少しでも減らすようにします。1日のなかでもオンとオフを切り替えることを心がけるといいでしょう。仕事が終わったあとでも、ずるずると仕事の問題などを引きずってしまう人が多いので、ヨガやジョキング、ジムなど運動をしたり、趣味に集中してみたり、音楽を聞いたり映画を観たりすることも、気持ちを切り替えるためにはよいことです。

1~2ヶ月ほどの遅れであれば自然に経過をみていてもとくに問題はありません。しかし、いつくるかわからないなど、生理が不順であることがストレスであったり、仕事やプライベートのスケジュールに支障が出てしまったりする場合には、治療を行って生理周期を整える場合もあります。例えば、周期的にホルモン剤を服用して周期を整えたり、漢方薬などで全身のコンディションを整えたりする治療などがよく行われます。また、薬の副作用の非常に少ない低用量ピルを継続的に服用することで生理周期を整えることもよく行われています。

今回は女性ホルモンの数値から「一時的な月経異常」でしたが、月経不順の陰には甲状腺の病気や脳腫瘍の可能性もひそんでいます。一般的には3ヶ月以上生理がこないようなときは、病院を受診して相談したほうがいいでしょう。

メディカル知恵袋

体温計と連動アプリで、まずは基礎体温をつけてみよう

月経不順がある場合、まず普段から基礎体温をつけるようにしておきましょう。できれば3ヶ月以上記録しておきたいところ。婦人科でその記録を見せれば、排卵周期があるかどうかを確認することができます。

毎日毎朝、体温を測定して記録することはとても面倒なことと感じたり、つい忘れてしまったりすることもあるでしょう。最近は、婦人体温計と記録アプリが連動していて、自動で基礎体温を記録できるものもあるので、まずは1日1日記録するような習慣をつけてみることが大切です。また、旅行や出張などで測定できないことがあってもかまいません。数日の測定忘れは気にせず、まずはトータルで3ヶ月程度と考え、できる範囲でがんばって続けてみましょう。

そして日々の生活習慣やライフスタイルも月経周期には大きな影響を与えますので、メリハリのついた規則的でストレスのない生活を目指すようにしましょう。


宗田聡氏の新着記事

,

Colorda編集部