赤ワインに含まれる「レスベラトロール」が健康長寿のカギ
飲み会では、「とりあえずビール」で乾杯が日本の慣習だが、50歳を過ぎたら赤ワインに変えたほうが得策のようだ。赤ワインに含まれているポリフェノールの一種「レスベラトロール」は、長寿遺伝子のスイッチをオンにすることで心臓病の予防効果が報告されているが、最近の研究で高齢期の記憶力低下も予防できる可能性が指摘され話題を呼んでいる。
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レスベラトロールが海馬の新たな神経細胞を生み出す!?
テキサスA&Mヘルス・サイエンスセンター、再生医学研究所のアショク・シェティ博士らの研究グループは、レスベラトロールが脳の海馬に作用することに注目した。脳の海馬は記憶・学習・気分などの脳機能に関与しているが、50歳を過ぎると機能が低下して記憶力の低下やうつ傾向などの加齢性変化を引き起こすことが知られている。
研究チームは高齢期のラットを用いて、レスベラトロールを与えた群と対照群との空間学習能力を比較した。レスベラトロールを与えられた群のラットは水迷路で簡単にゴールに達することができたが、対照群の高齢期ラットは空間記憶の衰えによりゴールまで達するのに多くの時間を要した。水迷路とは、円形のプールに濁った水を張り、目に見えない一部に用意してある浅瀬へたどり着くまでの時間を何度も計測し、その学習能力を測るものだ。
研究チームが記憶力改善のメカニズムを探るために海馬で新しく生まれた神経細胞の数を調べると、レスベラトロールを与えられたラットでは約2倍の神経細胞が新たに生まれていることがわかった。興味深いことにレスベラトロールを与えられた群のラットの海馬の微小血管が増加していて、海馬の血流が確保されていることがわかった。
さらに、集中力の途切れや激しい物忘れ、言葉がなかなか出てこないといった軽度認知機能障害、通称「脳の霧」という炎症にもレスベラトロールの抗炎症作用が効果を発揮し、脳の炎症を抑えることがわかった。
本研究は赤ワインを飲む人に認知症が少ないというこれまでの疫学調査を裏付けるものだが、飲み過ぎはアルコールによる脳萎縮を起こすので赤ワインも適量で収めたい。