脳ドックの検査内容と見つけられる病気-脳卒中リスクを発見できる専門ドック

こちらの記事の監修医師
上昌広

医師。1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

山本 佳奈
     

内科医。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

脳ドック 検査内容 脳ドック

脳ドックは、脳の状態を直接調べる検査です。一般的な人間ドックには含まれていない頭部MRI/MRA検査や頸動脈エコー検査で、脳の血管に関する病気の有無や兆候を調べます。具体的な検査内容と見つけられる病気などを紹介します。また、慢性的や頭痛やもの忘れをどうとらえればよいかも解説します。

★こんな人に読んでほしい!
・脳ドックがなんのための人間ドックなのか知りたい方
・組み込まれている検査とそれぞれ見つけられる病気を知りたい方

★この記事のポイント
・脳ドックのおもな目的は、脳の血管に関する病気(脳血管疾患)を見つけること
・とくに注意したいのが、脳梗塞、くも膜下出血、脳出血の3つ
・脳ドックの基本的な検査メニューは、頭部MRI/MRA検査と頸動脈エコー検査
・脳ドックの精密なコースではアルツハイマー型認知症の簡易検査も可能
・脳ドックがおすすめな方は、脳疾患の家族歴がある方、生活習慣では肥満・喫煙・日常的に大量飲酒の傾向のある方
・脳ドックは受けたい検査項目、専門医の有無、設備環境の3点を目安に選ぶ

脳ドックとは?

脳ドックは脳の状態を直接調べる専門ドック

人間ドックは大きく2種類に大別でき、一般的な項目を調べる「基本の人間ドック」と、特定の部位を詳しく調べる「専門ドック」があります。

基本の人間ドックとは、病気の早期発見を目的に、身体を網羅的に調べる検査です。おもに、身体計測、心電図や眼底などの生理的検査、胸部・腹部のエックス線や超音波検査、血液検査、尿検査、便検査、問診などで構成されています。これらの検査項目は日本人間ドック学会を始めとした諸団体によって推奨されており、一般的な人間ドックの検査項目の基準になっています。

専門ドックは、特定の部位を重点的に検査することで、基本の人間ドックでカバーしきれない疾患の早期発見を目的としています。いくつかの検査をパッケージ化したものが多く、本記事で解説する脳ドックのほか、胃ドック(胃の疾患に特化した検査)やレディースドック(乳腺や子宮等、女性特有の疾患に特化した検査)などがあります。

脳ドックは頭部MRI/MRA検査、頸動脈エコーといった検査を複数組み合わせたもので、これらの検査は基本の人間ドックには含まれていません。脳を直接検査し、異常が発生していないか診断する専門ドックです。

脳ドックの目的

脳ドックでは、脳の疾患や異変を検出します。とくに、脳の血管に関する病気(脳血管疾患)の早期発見を目的としています。脳血管疾患の代表例である「脳卒中」は、発症から数時間以内の初期治療が予後(治療後の経過)を左右し、治療の遅れは後遺症や生死の分かれ目につながります。

厚生労働省が2019年に発表した「人口動態統計」によると、脳血管疾患は日本人の全死因の第4位に、同じく「国民生活基礎調査」によると、介護が必要になる疾患の第2位となっています。そのため、脳ドックで脳卒中の兆候や危険因子の有無を把握し、予防に努めることが非常に重要です。

脳ドックのスタンダードなコースでは、脳血管疾患に特化した検査が行われます。あわせて脳腫瘍の有無を確認することもできます。スタンダードなコースの検査メニューは、頭部MRI/MRA検査と頸動脈エコー検査が一般的です。

精密なコースでは、脳血管疾患の診断に加えリスクを調べたり、脳の萎縮の度合いを見て、認知症の兆候やリスクについて調べたりすることができます。検査メニューは健診施設によって異なりますが、頭部MRI/MRA検査、頸動脈エコー検査のほか、血液・生化学的検査、尿検査、心電図検査、ABI(血圧脈波)検査、簡易認知機能検査などが含まれています。

脳ドックで見つけられる病気

血管に関する病気(脳血管疾患)

脳血管疾患の代表は「脳卒中」です。脳卒中には「脳梗塞」「くも膜下出血」「脳出血」があり特に注意が必要です。

脳梗塞は、血栓の発生など何らかの原因で血管が詰まり、脳に酸素が行き渡らなくなった状態です。酸素が不足した脳細胞は壊死してしまい、さまざまな脳障害や後遺症を引き起こします。「脳血管の狭窄」や自覚症状のない脳梗塞である「無症状脳梗塞(かくれ脳梗塞)」は、将来の脳梗塞発症リスクです。

くも膜下出血は、脳を守る髄膜・くも膜・軟膜の3種類の膜のうち、くも膜と軟膜の間に存在する「くも膜下腔」に出血が起きている状態です。くも膜下出血は、発生してから短時間で命に関わる状態に至ることが多いです。原因として、「脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)」や「脳動静脈奇形」の破裂が多いため、それらの兆候の有無を調べることは重要です。

脳出血は、脳の動脈が破れて脳内に血液があふれ出た状態です。あふれた血液が脳内の神経細胞を圧迫し、脳障害を引き起こします。血管が脳のどの部位で破れたかによって症状が異なり、症状に乏しく少量の出血である「無症状脳内出血(無症候性微小脳出血)」という状態もあります。原因として、慢性的な高血圧や高血圧にともなう「動脈硬化」が多いと考えられています。

脳血管疾患以外の病気

脳血管疾患以外で注意したい脳のおもな病気は、「脳腫瘍」と「アルツハイマー型認知症」です。

脳腫瘍とは、頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称です。脳内部から発生した「原発性脳腫瘍」、身体の別の部位に発生した腫瘍が転移した「転移性腫瘍」の2種類に分けられます。良性腫瘍と悪性腫瘍(いわゆる「がん」)とがあり、それぞれ必要な治療法が異なります。

厚生労働省の認知症対策総合研究事業において、「認知症のなかで患者数が最も多いのがアルツハイマー型認知症」という研究結果が報告されています。アルツハイマー型認知症になると、脳細胞の損傷や神経伝達物質の減少によって、脳全体の萎縮や変性が起こります。自覚のないもの忘れなどの記憶障害、時間の見当識障害、行動に関する実行機能障害、判断能力の低下などが症状としてあらわれます。一般的にはゆっくりと進行することが多いです。

なお、認知症にも種類があり、脳梗塞や脳出血が引き起こす認知症として「脳血管性認知症」があります。

脳ドックの検査の種類

基本的な脳ドックの検査メニュー

基本的な脳ドックでは、頭部MRI/MRA検査、頸動脈エコー検査が行われます。費用の目安は、1万5000円~2万5000円です。

頭部MRIと頭部MRAは、使用している機器も原理も同じです。どちらも頭部に電磁波を当て、内部の水分を反応させることにより3次元的な立体画像を描出する検査で、被爆をともないません。両者の異なる点は、映し出すものの違いです。

頭部MRI検査

頭部MRI検査は、脳細胞の水分を利用して脳全体の断層映像を撮影する検査です。脳実質の様子を調べるため比較的大きな病変の描出に向いており、脳腫瘍のほか、脳梗塞(無症状脳梗塞を含む)や脳出血などの検出が可能です。

頭部MRA検査

頭部MRA検査の特徴は、造影剤を使用せずに、脳全体をおおう脳血管のみを立体的に描出できる点です。脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)や脳動静脈奇形、脳血管の狭窄を発見することができます。

頸動脈エコー検査

頸動脈エコー検査は、超音波を使用し、リアルタイムで頸動脈の画像を映し出す検査です。首の左右にある頸動脈は脳に血液を送るという重要な役割を担っていますが、全身の血管のなかでも動脈硬化が起こりやすい血管です。頸動脈エコー検査では、血管の詰まりや狭窄を発見できるので、動脈硬化の進行具合や脳卒中リスクを確認することができます。

精密な脳ドックの検査メニュー

脳ドックの精密なコースでは、下記のような検査が含まれています。基本の検査メニューに加え、これらから複数の検査を組み合わせて、さらに多角的に、あるいは脳血管疾患以外の疾患についても調べます。費用の目安は、2万5000円~5万円です。組み合わせる検査の種類や数によって価格に幅があります。

血液・生化学的検査

採血によって、肝機能、腎機能、脂質、糖代謝、貧血の有無などを調べる検査です。動脈硬化や高血圧、糖尿病など、脳卒中のリスク要因となる症状や発症の有無を確認します。

尿検査

尿を採取して、尿糖や尿タンパクの有無を調べます。尿糖の陽性反応があれば糖尿病の可能性が、尿タンパクの陽性反応があれば腎機能が低下している可能性があります。腎機能の低下は、動脈硬化や高血圧が原因で起こることがあるため、血管の状態を把握する一助となります。

心電図検査

心臓の筋肉に流れる電流を体表から記録して、心臓の動きを調べる検査です。心臓の動きをグラフ化することにより、脳卒中のリスク要因となる不整脈(心房細動)や狭心症、心筋梗塞、心筋虚血(心臓の筋肉の血流が悪いこと)を発症していないかどうかを確認することができます。

ABI(血圧脈波)検査

両手(上腕)と両足(足首)の血圧を同時に測定して、血管の詰まり具合(ABI)と血管の硬さ(PMV)を測定する検査です。脳卒中の原因となる動脈硬化がどのくらい進んでいるかを確認することができます。

簡易認知機能検査

脳ドックにおける認知機能検査はスクリーニングとして行われ、確定診断のための検査ではありません。いくつかの設問に答える認知機能テストのほか、医療施設によっては、採血で特定物質を調べる検査やVSRADR(ブイエスラドR)などを組み込んでいる脳ドックのプランもあります。VSRADRとは、アルツハイマー型認知症において特異的に萎縮の見られる脳内領域をMRIで確認する検査です。

頭部CT検査

X線を使って、頭部のコンピュータ断層撮影を行う検査です。脳内を輪切りにした画像を撮影することで、出血をともなう脳血管疾患(脳出血、くも膜下出血)や脳萎縮が起きていないかを調べることができます。

脳ドックを安く受診する方法について詳しくはこちらをご覧ください。
脳ドックの費用は検査内容次第-助成制度についても解説

脳ドックを受けたほうがよいのは?

脳ドックはこんな方におすすめ

日本脳ドック学会「脳ドックのガイドライン2019」によると、脳ドックの受診が推奨される方として下記のように記載されています。

  • 脳ドックを積極的に勧める対象は中・高齢者が望ましい
  • 脳卒中の家族歴,高血圧,糖尿病,脂質異常症,肥満,喫煙などの危険因子を有するハイリスク群に対して重点的に受診を勧める

厚生労働省が発表した「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況」の第7表(5歳階級年齢別死因第1位~第5位までの表)によると、脳血管疾患は25歳~29歳に初めて死因の第5位となりそのまま推移、40歳~44歳には死因の第4位に、そして55歳以降は死因の第3位となっています。この結果を踏まえると、25歳を過ぎたら不定期でも脳ドックを受診し、40歳を過ぎたら定期的な脳ドックの受診を検討するとよいと考えられます。

また、両親や祖父母に脳卒中を発症した方がいる場合、先天的に脳卒中の発症リスクが高いとされています。厚生労働省は、高血圧を脳血管疾患の最大のリスク要因としています。これは、高血圧の状態が長く続くと動脈硬化が進行し、血管のつまりや破れなどが起こりやすくなるためです。日本生活習慣病予防協会によれば、肥満やメタボリックシンドロームは脳梗塞のリスク要因とされており、喫煙は脳梗塞とくも膜下出血のリスク要因です。このように、生活習慣病は脳卒中に影響をおよぼします。そのほか、脂質異常症や糖尿病(2型)も脳梗塞の危険因子です。

こんなときは脳ドック?

慢性的な頭痛に悩んでいる方

片頭痛や緊張型頭痛などの慢性的な頭痛は脳疾患とは無関係とされています。脳疾患に関わる頭痛はある日突然やってくるため、慢性的な頭痛とはわけて考える必要があります。しかし、頭痛が続いている場合、脳ドックを受診することは安心につながります。なお、激しい頭痛が続いている場合は、医療施設ですみやかに診察を受けてください。

もの忘れが多い方

認知症の症状のひとつに「もの忘れ」がありますが、単なるもの忘れとは違い、もの忘れをしている自覚がなかったり、体験したこと自体を思い出せなかったりするという特徴があります。

「うっかり忘れていたけど少し経ってから思い出す」「“ド忘れ”する」などとは質が異なります。家族から指摘されるほどのもの忘れなどがあれば、脳ドックではなく医療施設で診察を受けましょう。なお、脳ドックでは、脳の萎縮度や脳の動きなどを見ることで、認知症の発症リスクを把握できます。気になる方は、脳ドックを受診してみるのもひとつの手です。

脳ドックの施設選びの3つのおすすめポイント

ポイント1:受診したい検査項目に対応していること

もっともシンプルな脳ドックは、脳血管疾患に特化したコースです。頭部MRI/MRA検査、頸動脈エコー検査によって、脳血管疾患の代表例である脳卒中(脳梗塞・くも膜下出血・脳出血)に加え、脳腫瘍などの器質的な疾患を見つけます。比較的低コストで、基本的な検査を受診することができます。

より精密なコースでは、基本の脳ドックに加え、脳卒中の要因となる動脈硬化やその他の危険因子を多角的に調べたり、認知症の兆候を調べたりする検査が用意されています。これら血液・生化学的検査、尿検査などを希望する場合は、医療施設の検査項目に希望の検査が入っているかをしっかり確認しましょう。認知症の兆候を調べたい場合は、認知機能検査が組み込まれているプランを選ぶ必要があります。

ポイント2:専門医が在籍していること

検査では画像から脳の異常を読み取ります。そのため、脳神経外科、神経内科、脳卒中、放射線科の、いずれかの専門医が在籍している医療施設を探しましょう。脳ドックは、経験豊富な専門医が画像を読影することで、異常の早期発見が可能になります。十分な専門知識と、熟練した読影力を持った専門医の存在が欠かせません。

脳ドックの検査結果は、郵送のみのケースと専門の医師から直接結果を聞くケースがあります。事前に確認しておくとよいでしょう。医師から話を聞くケースでは疾患リスクの詳細説明や生活指導があり、質問もできるため、都合が許せばこちらを選択することをおすすめします。また、専門医が在籍している医療施設であれば、異常が見つかった際にスムーズに治療へ移行できるというのも心強いポイントです。

ポイント3:設備環境が整っていること

頭部MRI検査と頭部MRA検査は同じ機器を使用しますが、頭部MRA検査が行えるMRI装置の導入が遅れている医療施設も存在します。その差はコストに反映されるため、安さを優先する場合は頭部MRA検査が行われない可能性があることに留意してください。不安に感じたら、医療施設に直接問い合わせて確認しましょう。

参考資料
日本人間ドック学会「2020年度 一日ドック基本検査項目表」
日本脳ドック学会「脳ドックのガイドライン2019 改定・第5版」(響文社2019年3月)
厚生労働省「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」
厚生労働省「みんなのメンタルヘルス総合サイト」(認知症)
厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」平成23年度~平成24年度 総合研究報告書
厚生労働省「e-ヘルスネット」(脳血管障害・脳卒中)
日本生活習慣病予防協会(脳梗塞)

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人間ドックは、受診して結果を確認して終了、ではありません。受診する医療施設に左右されずに経年変化を追うことが重要です。

こちらの記事の監修医師
上昌広

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。 虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

山本 佳奈
     

1989年生まれ。滋賀県出身。医師。 2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

脳ドック
人間ドックのミカタ
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