健康診断

健康診断の尿検査で何がわかる? 「朝イチ」の理由や検査前の注意点、結果の見方、聞きづらい疑問にも回答

尿検査 健康診断
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

健康診断や人間ドックで行われる尿検査では、健康状態や病気の兆候を知ることができます。本記事では、尿検査の項目ごとにわかることや採尿時の注意点、人には聞きづらい尿検査にまつわる疑問についてまとめました。

★こんな人に読んでほしい!
・尿検査前の注意事項を知りたい方
・うっかり採尿を忘れて焦っている方
・尿検査でどんなことがわかるか知りたい方

★この記事のポイント
・尿検査でわかることはおもに腎臓周りの病気と糖尿病の兆候
・採尿は「朝一番」の「中間尿」が基本
・前日のハードな運動や性行為が検査に影響することがある
・健康診断の尿検査では性感染症はわからない

健康診断や学校、人間ドックの尿検査でわかること

尿検査でわかる病気、兆候

尿検査とは、尿の成分から健康状態や病気の兆候などを調べる検査です。会社や学校の健康診断*1,*2、自治体などが実施する特定健診*3の尿検査では、「尿蛋白」と「尿糖」が必須項目となっています。

尿蛋白

尿蛋白検査では、尿に含まれるタンパク質を調べます。通常、タンパク質は腎臓で再吸収されるため、尿中に含まれることはありません。尿蛋白が陽性の場合、急性腎炎、前立腺・膀胱の腫瘍や炎症、尿路系疾患、ネフローゼ症候群などが考えられます。ただし、運動後や発熱時、生理時などで一時的に尿蛋白が陽性になることもあり、この場合、病的意義はないと考えられます。

この検査は何のための検査?「尿蛋白検査」

尿糖

尿糖検査では、尿に含まれる糖分を調べます。血液中の糖濃度が一定を超えると、尿に漏れ出てきます。尿糖が陽性の場合、糖尿病や甲状腺機能亢進症、副腎疾患、腎性糖尿などが考えられます。ただし、ステロイド薬の服用や妊娠でも尿糖が陽性になることがあり、この場合、病的意義はないと考えられます。

この検査は何のための検査?「尿糖検査」

尿潜血

人間ドック*4では尿蛋白検査と尿糖検査に加え、尿潜血検査が行われることがあります。尿潜血検査は、尿中のヘモグロビン(赤血球の成分のひとつ)の有無を調べる検査です。尿潜血が陽性の場合、腎臓や膀胱、尿路の炎症や腫瘍、結石などが考えられます。女性の場合、生理の影響で陽性になるケースも多くみられます。

この検査は何のための検査?「尿潜血検査」

尿沈査

尿沈渣検査は、尿に含まれる沈殿物を調べる検査です。尿蛋白や尿潜血が出た場合に、遠心分離機を使って沈殿物の種類や量を調べ、疾患を推測します。赤血球がみられた場合は腎臓や膀胱周辺の出血をともなう疾患、白血球がみられた場合は炎症を伴う疾患、細菌がみられた場合は細菌感染などが疑われます。

この検査は何のための検査?「尿沈渣検査」

尿比重

尿比重検査は、尿中に含まれる成分の濃度を調べる検査です。尿比重が高すぎる(成分の多い濃い尿)場合、糖尿病や脱水、ネフローゼ症候群などが疑われます。反対に比重が低すぎる(成分の少ない薄い尿)と、腎不全や尿崩症などが考えられます。

この検査は何のための検査?「尿比重」

健康診断、学校、人間ドックで行う尿検査の違い

会社の健康診断は労働安全衛生法*1、学校の健康診断は学校保健法*2により実施が義務づけられており、尿検査ではいずれも尿蛋白と尿糖が必須項目です。

人間ドックでは尿蛋白、尿糖に加え、尿潜血や尿沈渣(場合によって省略可)も検査します。会社の健康診断と学校の健康診断、日本人間ドック学会が定める尿検査の必須項目*5を以下にまとめました。

<尿検査の必須項目>

会社の健康診断学校の健康診断人間ドック検査でわかること
尿蛋白急性腎炎、前立腺・膀胱の腫瘍や炎症、尿路系疾患、ネフローゼ症候群などの腎臓の異常
尿糖糖尿病、甲状腺機能亢進症など
尿潜血腎臓・膀胱・尿路の炎症や腫瘍、結石など
沈査糸球体腎炎、腎盂腎炎、膀胱炎、尿路結石、前立腺炎、尿路感染症など

△ 必須項目にはないが、実施している医療施設が多い
※ 蛋白、潜血反応が陰性であれば省略可
− 実施なし

会社や学校の健康診断において尿潜血検査は必須項目ではありませんが、多くの医療施設では尿潜血検査も実施しています。また、日本学校保健会*6では尿潜血の実施を前提としています。

尿検査では、朝一番の尿を調べることが一般的です。しかし、会社の健康診断が午後からなどの場合はこの限りではありません。詳しくは本記事の「午後受診の場合は医療施設に問い合わせを」で解説します。

「朝イチ」の理由とは。 適切な採尿のタイミング

尿検査は「朝一番」×「中間尿」の採尿を

健康診断や学校、人間ドックの検尿では、多くの場合起きてすぐの「朝一番」の尿の提出が指示されます。その理由は、尿蛋白検査の精度を担保するためです。

私たちの身体は、起立姿勢になったり運動をしたりすると尿にタンパク質がみられることがあります。これらは生理現象であり、病的な意義はないと考えられています。これらの影響を除きより正確な診断をするには、寝ている間につくられた尿を調べる必要があるため、朝一番の尿を採取します。とくに子どもは、起立姿勢や運動後に尿蛋白が陽性になりやすい傾向にありますが、先に伝えたように病気の心配はほとんどないため、治療も必要ありません。

採尿時は雑菌などの混入をなるべく避けるために、中間尿(出始めではなく途中まで出した尿)を採取しましょう。女性の場合、おりものの成分が混ざることもあります。これらの影響を少なくするためにも、採尿前には陰部を清潔にし、出始めの尿は捨てて途中の尿を採りましょう。

夜間頻尿がある方は朝一番の尿の定義が難しいため、どのタイミングを朝一番とみなすか医療施設に相談しておきましょう。うっかり朝一番の採尿を忘れた場合については、本記事の「尿検査にまつわるよくある質問」で説明します。

午後受診の場合は医療施設に問い合わせを

会社の健康診断や人間ドックが午後からの場合は、医療施設に着いてすぐの採尿が一般的です。朝一番の採尿を午後まで持ち越すと雑菌が増えるなどし、検査結果に影響する可能性があるためです。ただし、対応は医療施設によって異なります。事前に確認しておきましょう。

食事、運動の制限は必要? 尿検査前に確認しておきたい5つのポイント

生理時の尿検査は避けよう

生理中は尿に血液が混入しやすいため、尿潜血や尿蛋白に影響する可能性が高くなります。異常がみられた場合、病気によるものか、生理によるものかの判断が難しいため、ほとんどの医療施設では生理中の尿検査は行わず、生理終了後の提出を指示しています。

また生理中だけでなく、生理前後も血液が検出されることがあるため、生理の前後数日間は尿検査を控えるよう呼びかけている医療施設もあります。詳しくは受診予定の医療施設に問い合わせましょう。

ビタミンCの影響とは。食事、サプリの注意点

ビタミンCには尿中に含まれる糖などの反応を抑える働きがあるため、陽性であるべき検査結果を陰性に変えてしまう「偽陰性」が起こる可能性があります。ビタミンCに影響されやすい検査項目は尿糖です。尿糖はおもに糖尿病の可能性を探るための検査であり、早期発見につなげるためには正確な検査が大切です。

検査前にビタミンCを大量に摂取することは控えましょう。サプリメントなどでの摂取は検査の2~3日前から中止するよう呼びかけている医療施設もあります。なお、ビタミンCはサプリ以外にもプロテインや美容ドリンクなどにも含まれていることが多いので、過剰摂取が気になる場合は医療施設へ相談しましょう。

前日の射精や性行為が検査に影響することも

男性の場合、精液が尿中に混ざると尿蛋白が陽性になる可能性があるため、尿検査前日の射精や性行為は控えたほうがよいでしょう。

女性の場合、避妊具を使用することで精液の混入は避けられますが、性行為によって一時的に雑菌が増える可能性が考えられます。正確な結果を得るためには、男性も女性も検査前日の性行為は控えたほうが無難と言えるでしょう。

前日のハードな運動は控えめに

過度な運動を行うと尿蛋白が陽性になる場合があります。これは過度な運動により、タンパク質が過剰に生成されるためです。そのメカニズムは明らかになっていませんが、運動により腎臓の機能になんらかの負荷がかかるためだと考えられています。

日常的に運動をする習慣がない方は、尿検査前日の激しい運動は控えたほうがよいでしょう。運動習慣がある方は、普段通りの運動を行ってもよいか、事前に医療施設へ問い合わせておきましょう。

糖質制限ダイエットは尿検査に影響ある?

糖質制限ダイエットが尿検査の結果に直接影響することはないと考えられますが、糖質制限により腎臓に負荷がかかっている可能性はあります。

糖質制限ダイエットとは、3大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質)のうち、炭水化物に含まれる糖質を控える食事法です。糖質を控える一方で、タンパク質や脂質は比較的自由に食べてもよい(日本糖質制限医療推進協会*7では、推定エネルギー必要量の範囲内としている)とする方法が一般的です。

タンパク質はおもに肝臓や腎臓で分解されます。糖質制限の程度にもよりますが、糖質の摂取を控えることで相対的にタンパク質の量が増えると、分解を担う腎臓に負荷がかかる可能性が考えられます。また、極端な食事制限などで身体が飢餓状態になった場合も、自分の筋肉(タンパク質)を分解してエネルギーを確保するため、糖質の代わりにタンパク質を多く摂取する糖質制限ダイエットと同じような状態になります。

腎臓の機能は、血液検査のBUN(尿素窒素)で評価されます。尿検査ではBUNの数値を知ることはできないため尿検査への影響はありませんが、糖質制限や極端な食事制限でのダイエットが腎臓の負担となるケースもあることを覚えておきましょう。

尿検査にまつわるよくある質問

尿検査を忘れ、排尿してしまった。朝一番の尿でない場合、検査に影響はある?

うっかり朝一番の採尿を忘れ、2回目以降の尿を提出した場合、正確な検査結果が得られないことがあります。先述の「尿検査は『朝一番』×『中間尿』の採尿を」でもお伝えした通り、活動後の尿にはタンパク質が混入する可能性があるためです。

学校の検尿など提出日が複数もうけられている場合は、別の日の朝一番の尿を提出しましょう。健康診断や人間ドックの検尿で提出日に朝一番の採尿をし損ねたときは、医療施設に問い合わせましょう。受付時間前などで問い合わせができず、やむなく2回目以降の尿を持参した場合は、医療施設への提出時や問診時にその旨を必ず伝えましょう。

採尿の量が足りない。どうすればいい?

指定の線よりやや下程度であれば許容範囲内と言えますが、提出する尿の量が極端に少ない場合、検査ができず再提出になることがあります。

採尿の量が足りないからといって、水で薄めたり、2回目の尿を足したりすることはやめましょう。もし、尿の量が少なく不安がある場合は、提出時に医療施設に相談してください。

健康診断の尿検査で性感染症はわかる?

健康診断の尿検査には性感染症を調べる項目が含まれていないため、性感染症の有無はわかりません

性感染症について調べたい場合は、泌尿器科や婦人科を受診しましょう。男性の場合、尿検査で淋菌、クラミジア、マイコプラズマ、トリコモナス、カンジダなどが発見できます。女性の場合、おりもの検査で淋菌、クラミジア、マイコプラズマ、膣トリコモナス、膣カンジダなどが発見できます。

梅毒、HIV、肝炎ウイルス(B型・C型)は血液検査で調べることが可能です。人間ドックのオプションで受診できるほか、自治体の保健所にて匿名で検査を受けられる場合があります。

人間ドックのオプション検査で性感染症を調べたい方はこちら(マーソTOPページから検索)

結果が届いたら。尿検査の検査項目と見方

尿検査の検査項目と基準値(基準範囲)一覧

尿検査の結果は多くの場合、異常がなければ陰性(−)、なんらかの異常があった場合は陽性(+)で表示されます。ただし、尿検査の項目や基準値、判定区分は、医療施設によって異なります。ここでは、例として日本人間ドック学会が定める基準値と判定区分*8を紹介します。

<日本人間ドック学会が定める基準値>

検査項目 基準値(基準範囲) 基準範囲外 基準範囲外の場合に疑われる病気、状態
A異常なし B軽度異常 C要再検査・生活改善 D要精密検査・治療
尿蛋白 陰性(-) (±) (+)※1 (2+)以上 急性腎炎、前立腺・膀胱の腫瘍や炎症、尿路系疾患、ネフローゼ症候群などの腎臓の異常
尿糖 陰性(-) (±) (+)※1 (2+)以上 糖尿病、甲状腺機能亢進症など
尿潜血 陰性(-) (±)以上 腎臓・膀胱・尿路の炎症や腫瘍、結石など
尿沈渣※2 赤血球:5未満/HPF
白血球:5未満/HPF
尿管上皮細胞:1未満/HPF
赤血球:-
白血球:5-9/HPF
尿管上皮細胞:-
赤血球:5-9//HPF
白血球:10-/HPF
尿管上皮細胞:-
赤血球:10-/HPF
白血球:10-/HPF+尿路系の臨床症状
尿管上皮細胞:1-/HPF
糸球体腎炎、腎盂腎炎、膀胱炎、尿路結石、前立腺炎、尿路感染症など

日本人間ドック学会「2022年度 判定区分」をもとに編集部で作成
※1.尿蛋白、尿潜血ともに(+)の場合は、尿蛋白をD判定とする
※2.実際の尿沈渣で検査する種類は20項目以上。ここでは一部を掲載

「再検査」「精密検査」の通知があったら必ず受診を

健康診断や人間ドックの結果は、前日の行動やその日のコンディションなどによって左右されることがあります。検査の結果が基準値ではなかった場合、一時的または生理的な事由によりたまたま基準値を超えたのか、あるいは病気のサインなのかを見極めなければなりません。そのための手段として、二次検査(再検査、精密検査)があります。

不安はあるかと思いますが、二次検査の結果、異常が一時的なものだとわかれば安心感につながり、万が一病気が見つかったとしても早期であるほど対策しやすく、心身ともに負担が軽くすみます。再検査や精密検査の通知があったら、必ず受診しましょう。

参考資料
*1.厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」
*2.e-Gov法令検索 学校保健安全法施行規則
*3.政府広報オンライン 生活習慣病の予防と早期発見のためにがん検診&特定健診・特定保健指導の受診を!
*4.日本人間ドック学会 尿検査
*5.日本人間ドック学会「2022年度 一日ドック基本検査項目表」
*6.日本学校保健会「学校検尿のすべて(令和2年度改訂)」
*7.日本糖質制限医療推進協会 糖質制限FAQ-1 一般・ダイエット
*8.日本人間ドック学会「判定区分 2022年度版」

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上昌広
こちらの記事の監修医師

特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
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