脳ドック

脳ドックの検査結果の見方を徹底解説

脳ドック 検査結果 脳ドック
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

脳ドックで脳の状態を調べた結果、異常が見つかった場合、再検査や精密検査を経て治療を受けることになります。検査結果からどのような病気が見つかる可能性があるのか、また検査結果を受け取ったあとの対処法も解説します。

★こんな人に読んでほしい!
・脳ドックの結果の見方を知りたい方
・脳ドックの結果から示唆する病気を知りたい方

★この記事のポイント
・脳ドックのおもな目的は、脳の血管に関する病気(脳血管疾患)を見つけること
・脳ドックで見つかるおもな病気は脳卒中(脳梗塞、くも膜下出血、脳出血)、脳腫瘍、認知症
・経過観察や治療が必要な「異常所見」はおもに、かくれ脳梗塞、未破裂脳動脈瘤、無症候性頸部・脳主幹動脈狭窄・閉塞、無症候性脳腫瘍および腫瘍様病変、正常変異(ノーマル バリアント)の5つ
・脳ドック受診から結果がわかるまでの期間の目安は、後日の場合おおむね1~3週間程度。医療施設によっては当日の場合もある
・結果は医師から説明される場合と、郵送のみの場合がある

脳ドックで見つかる病気

脳ドックの目的

脳ドックとは、頭部MRI/MRA、頭部CT、頸動脈エコーといった検査を組み合わせて、脳に異常がないかどうかを診断する人間ドックの一種です。人間ドックには、一般的な項目を調べる「基本の人間ドック」と、特定の部位を詳しく調べる「専門ドック」がありますが、脳ドックは専門ドックに該当します。

脳ドックの受診は、脳の疾患や異変、とくに脳血管疾患(脳の血管にまつわる病気の総称。脳梗塞、くも膜下出血、脳出血などがある)の早期発見につながります。厚生労働省が2019年に発表した「人口動態統計」および「国民生活基礎調査」によると、脳血管疾患は死因の第4位に、介護が必要になる疾患の第2位となっています。脳の異常を早期発見することは、発症リスクを下げたり、健康寿命を延ばしたりするうえで重要なカギを握っています。

脳ドックには「スタンダードコース」と「精密検査コース」があります。スタンダードコースでは脳血管疾患に特化した検査が実施され、一般的には頭部MRI/MRA検査と頸動脈エコー検査(頸動脈超音波検査)が行われます。

一方、精密検査コースでは、脳血管疾患に加えて、脳血管疾患を引き起こす要因(不整脈、動脈硬化、糖尿病など)のほか、認知症の兆候がないかどうかを調べることができます。検査メニューは医療施設によって異なりますが、頭部MRI/MRA検査、頸動脈エコー検査(頸動脈超音波検査)に加えて血液・生化学的検査、尿検査、心電図検査、ABI(血圧脈波)検査、簡易認知機能検査などが含まれていることが多いです。

脳ドックで見つかる病気:脳血管疾患

脳ドックで発見できる「脳血管疾患」のうち、多くの割合を占めているのが「脳卒中」と呼ばれる病気です。脳卒中は、脳の血管が詰まる「脳梗塞」と、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」の3種類に大別することができます。

脳梗塞は脳内の血管が何らかの原因で詰まり、脳の神経細胞に酸素が十分に行き渡らなくなった結果、脳細胞が壊死してさまざまな脳障害や後遺症を引き起こす病気です。

脳出血は脳の動脈が破れ、あふれ出た血液が脳の神経細胞を圧迫して脳障害を引き起こす病気です。長年の高血圧によって脳の血管がもろくなったことや、脳内に入り込んでいる細い血管(細小動脈)が動脈硬化で傷ついてしまったことが原因で     起こります。くも膜下出血も脳動脈が破れたことで発症する病気ですが、こちらは脳動脈にできたこぶ(脳動脈瘤)や「脳動静脈奇形」が破れて、くも膜下腔で出血が起こります。くも膜下腔とは、脳を守る3種の膜(髄膜・くも膜・軟膜)のうち、くも膜と軟膜の間に存在する空間のことです。

脳ドックで見つかる病気:脳血管疾患以外の病気

脳血管疾患以外で注意したいおもな病気は、「脳腫瘍」や「認知症」です。

脳腫瘍は、頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称です。脳細胞や脳を包む膜、脳神経などから発生した「原発性脳腫瘍」と、脳以外の部位にできた腫瘍が脳に転移した「転移性腫瘍」があります。

「認知症」は脳の病気や障害によって記憶力や思考力が低下していく症状です。認知症にはさまざまな種類がありますが、厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス総合サイト」によると、脳細胞の損傷や神経伝達物質の減少によって発症する「アルツハイマー型認知症」が最も多く、次いで脳梗塞や脳出血がきっかけで起こる「血管性認知症」が多いとされています。

詳細はこちら
脳ドックの検査内容と見つけられる病気-脳卒中リスクを発見できる専門ドック

脳ドックの検査結果の見方

異常所見なし

検査の結果、とくに異常が見つからなかった場合は「異常所見なし」と記載されます。この場合、現在の健康状態を維持するように努めます。異常所見がなかった場合の、今後の脳ドック受診頻度はとくに定めはありませんが、おおむね2~5年に1回の頻度での受診を推奨する医療施設が多いです。

無症候性脳梗塞(かくれ脳梗塞)

無症候性脳梗塞とは、過去に脳血管疾患を発症したことのない方がCTやMRIを受け、偶然見つかった無症状の小さな脳梗塞で、「かくれ脳梗塞」と呼ばれることもあります。「脳ドックのガイドライン2019」によると、無症候性脳梗塞がある人が脳卒中を発症するリスクは、ない人の約4倍であったこと、また無症候性脳梗塞があると認知症の発症率が2倍以上になるとの研究結果が報告されています。したがって、検査で指摘された場合は、定期的に頭部MRIなどの検査を受けて脳梗塞の予防に努めましょう。また、「脳卒中治療ガイドライン2015」によれば、無症候性脳梗塞の最大のリスク要因は高血圧であるため、高血圧を認める症例には適切かつ十分な降圧治療がすすめられています。

未破裂脳動脈瘤

脳動脈瘤とは、脳動脈の血管壁が薄くなったり、もろくなったりした部分がコブ状に膨らんだもので、まだ破裂していない脳動脈瘤のことを「未破裂脳動脈瘤」と呼びます。「脳ドックのガイドライン2019」によると、未破裂脳動脈瘤の自然経過(破裂するかどうか)や治療法の選択、治療適応の有無についてはまだ不確定な要素が多いため、検査で見つかった場合は動脈瘤の大きさ、部位・形状、年齢、本人の健康状態、既往歴、破裂リスク予測スコアなどをもとに、治療等を含め慎重に検討することが推奨されています。

無症候性頸部・脳主幹動脈狭窄・閉塞

頸動脈は喉の両側にある動脈で、大脳に血液を送る内頸動脈と、顔に血液を送る外頸動脈に分かれています。また、脳主幹動脈は脳に酸素などを送っている複数の太い血管の総称(大脳に血液を送る内頸動脈・中大脳動脈・前大脳動脈、および小脳や脳幹に血液を送る椎骨動脈や脳底動脈)です。動脈硬化によってこれらの血管内が狭くなると「無症候性頸部・脳主幹動脈狭窄」、血管が詰まると「無症候性頸部・脳主幹動脈閉塞」と呼びます。

検査で無症候性頸部・脳主幹動脈狭窄・閉塞が見つかった場合は、禁煙・節酒に取り組むとともに、高血圧・脂質異常症(高脂血症)・糖尿病といったリスク要因の治療に取り組みます。また、症状の程度によっては手術が必要になることもあります。

無症候性脳腫瘍および腫瘍様病変

脳ドックで偶然脳腫瘍脳や脳神経に腫瘍が発見された場合、腫瘍の大きさやできた部位によって対応が変わります。たとえば、6ヶ月ごと2回、以後1年に1回頭部MRI/MRA検査を受けて様子を見ることもあれば、手術で腫瘍を摘出しなければならないこともあります。

正常変異(ノーマル バリアント)

正常変異は、脳の構造上は正常ではないものの、健康に害を及ぼす症状は出ていない状態を指します。正常変異は先天的なもので、かつ、病気ではないため、治療や経過観察は必要ありません。

脳ドックの結果がわかる時期と、異常が見つかったときの対処法

脳ドックの結果はいつわかる?

脳ドックの結果がわかる時期は、受診した医療施設によって異なります受診したその日に専門の医師から診断結果の説明が受けられる施設もあれば、後日郵便で結果を送付する施設もあります。郵送の場合、医療施設によって異なりますが、おおむね1〜3週間で手元に届くことが一般的です

なお、頭部MRI/MRA検査だけなど、検査項目を絞ったコースを選択した場合や、夜間や休日に脳ドックを受診した場合など、選択したコースによってはもともと医師の説明がなく、郵送のみのこともあります。

異常が見つかった場合、医師の説明を受けられる?

脳ドックで異常が見つかったとき、医師の説明を直接聞くことができる場合は、その場で詳しい病状や今後の治療について説明があります。

一方、郵送のみだった場合でも、別途予約をすれば説明を聞くことができる医療施設もあります。脳ドックに申し込む前に、結果判明の時期や医師の説明を聞くことができるかどうかを確認しておくことをおすすめします。

なお、検査で緊急性の高い異常が見つかった場合、受診した医療施設から連絡が入ることがあります。命に関わる疾患が見つかった可能性もありますので、すみやかに対応しましょう。

詳しい検査や治療を受ける場合

脳ドックを受診した医療施設が病院もしくは病院附属の施設であれば、その施設で詳しい検査や治療を受けることができます。

一方、受診した医療施設では検査や治療を受けることができない場合、まずは脳ドックを受診した施設と連携している医療施設の有無を確認しましょう。連携施設があれば、必要に応じて紹介状(別途費用がかかります)を作成してもらい、脳ドックの結果と保険証を持って紹介された医療施設を受診してください。

連携施設がなかった場合、自分で詳しい検査や治療を受けることができる施設を探します。医療施設を検索・比較・予約できるWebサイトもありますので、ご自宅から通いやすい施設を見つけましょう。その際、いきなり総合病院や大学病院に行ってしまうと、初診料・検査料に加えて特別な料金がかかります。まずはかかりつけの病院や開業医を受診してください。

脳血管疾患を発症すると、その後の人生のQOL(Quolity Of Life: 生活の質)が下がり、介護やサポートをする身近な方の日常にも影響します。脳ドックで異常が見つかったら、放置せずに必ず詳しい検査を受けましょう。また、今回の検査で異常がなかった場合も、2~5年に一度のペースで定期的に受診することをおすすめします。

参考資料
厚生労働省「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」
厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト「健康寿命をのばそう!」脳卒中(脳血管疾患)
国立循環器病研究センター病院 脳卒中
国立循環器病研究センター病院 [19]脳卒中にもいろいろあります
厚生労働省「みんなのメンタルヘルス総合サイト」認知症
日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2015」(協和企画2015年6月)
日本脳ドック学会「脳ドックのガイドライン2019 改定・第5版」(響文社2019年3月)

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上昌広
こちらの記事の監修医師

特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
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