2015.10.1

データをひも解く! 人間ドックで発見されている臓器別がんの傾向

60代以上は、2人に1人ががん

臓器
日本人間ドック学会が実施した全国集計によると、2014年に人間ドックで発見された臓器別がんの症例数は、男性では多い順に胃、大腸、前立腺、肺、食道であり、女性では乳房、大腸、胃、子宮、肺の順になっている。これら以外にも肝臓、膵臓、腎臓、胆嚢、膀胱、甲状腺など数多くのがんが人間ドックによって発見されている。いずれも専門的な検査を受けなければわからない症例である。

男女に共通して多く発見されているのは胃がんと大腸がんである。全症例数に占める年代別の割合をみると、胃がんでは40歳代が6.4%、50歳代が26.1%、60歳以上が66.3%であり、大腸がんについては40歳代が11.9%、50歳代が33.0%、60歳以上が53.3%となっている。どちらも40代から増加し、年齢にともなって症例数と増加率がともに高まる傾向にある。60代以上は2人に1人以上が、がんになるという統計だ。

男性について見ると、胃がん、大腸がんに次いで多く発見されているのが前立腺がんである。年代別の割合では40歳代が1.7%、50歳代が19.4%、60歳以上が78.9%である。特に60歳以上で急激に増加する傾向がみられる。

女性について見ると、最も多く発見されている乳がんの症例数は、胃がんや大腸がんの約3倍にも達している。年代別の割合では40歳未満が4.1%、40歳代が33.5%、50歳代が33.1%、60歳以上が29.3%となっており、幅広い年代層で発見されているのが特徴である。また子宮がんについては40歳未満が17.8%、40歳代が40.7%、50歳代が24.9%、60歳以上が16.6%であり、若い世代でも発症数が多く40歳代でピークをむかえていることが分かる。

医療技術の進歩で、がんの早期発見率は急上昇

検査技術や精度の向上によって人間ドックで発見されるがんの症例数は年々大幅に増加している。1985年と2014年に発見された症例数を比較すると、男性の胃がんでは約5倍、女性の乳がんにいたっては58倍にも達している。早期発見率も向上しており、胃がんを例にとると、発見された早期がん比率は1985年の70.0%に対して2014年では81.4%に改善されている。「がん=死に至る病気」というかつてのイメージは変わりつつあり、早期発見できれば、がんは治療可能なケースが多い。治療への道を開くためには、年齢にかかわらず早めに人間ドックを受診して自身の身体の状態を知ることが重要である。

小坂 英和(こさか ひでかず)
この記事の監修ドクター
こさか内科・内視鏡内科 院長
医学博士(神戸大学)/日本内科学会 総合内科専門医/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/日本消化管学会 胃腸科専門医/日本リウマチ学会 リウマチ専門医/日本プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医・指導医

Colorda編集部