2015.9.28

受診率の低下が顕著な肺がん検診! 気になる罹患率と死亡率への影響に迫る

肺がん検診受診率は減少傾向

肺がん地域保健・健康増進報告によると、肺がん検診の受診率は、平成19年度まで22~24%で安定していた。これは、がん検診のなかでは、飛びぬけて高い数値であり、当然がん検診における受診率は1位を維持し続けてきた。それが19年度を境にして、肺がん検診の受診率は急激に減少。16~18%の間を変動しながら24年度に至る。その間、子宮がんや乳がんの検診受診率は増加し、肺がん検診の受診率は、24年度時点で肺がん検診受診率は4位に位置することになった。

高止まりしている肺がんの死亡率

国立がん研究センターのデータによると、肺がん年齢調整死亡率は、平成8年度まで著しい増加傾向にあった。昭和33年度では、対人口10万人で5だったものが、平成8年度には18を超えている。その後は微減の傾向に移り変わり、平成24年度には16を少し上回る程度で安定している。なお、同年の胃がん年齢調整死亡率も16~17、乳がんは12となっている。肺がん年齢調整罹患率に関しては、昭和50年度から平成20年度まで、増加の一途をたどっている。

ちなみに年齢調整とは、統計データから年齢構成の影響を軽減させるために行われるものである。例えば、現在の年齢構成では、高齢者の割合が非常に高いため、必然的にがんの罹患率や死亡率も高まってしまう。これでは、真の罹患率や死亡率を見極めにくくなる。年齢構成集団は年次ごとに変化するため、比較基準が必要となる。そこで採用されたのが、昭和60年の人口だ。この年の年齢構成をモデルとして、年齢調整がなされている。

痰からがん細胞を検出!? 肺がん検診の詳細

市町村が行っている肺がん検診は、40歳以上を対象としており、年1回の頻度で受診することができる。検査項目は問診、胸部X線検査および喀痰(かくたん)細胞診である。喀痰細胞診とは、内視鏡を使って、気管支内にある痰を採取し、顕微鏡で調べる診査だ。

これらの検査によって、異常があると判断された場合、胸部CT検査や気管支鏡検査などで精密検査を行い、確定診断に至る。ちなみに、喀痰細胞診の対象者は、50歳以上かつ喫煙指数(1日本数×年数)が600以上のハイリスク群に限る。

このように肺がんは、罹患率や死亡率に改善傾向が見られていないにも関わらず、検診受診率が低下している。それだけに、なんらかの施策が必要な疾患といえる。

肺がんの罹患率は、40歳以上の男性で有意に高くなっている。また、喫煙習慣があると罹患率は10倍になるというデータも存在している。こういった属性や生活習慣を持っている人は、優先的に肺がん検診を受けたほうがよいといえる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部