2015.11.5
ピロリ菌

血液検査でわかる、胃の健康度チェック

病気の有無だけではなく、どれだけ健康なのかを知りたい

血液検査
胃の健康に対する関心は、国民全体で高まっている。胃がん検診の受診率は、平成22年に32.3%だったものが、平成25年には39.6%にまで上昇し、胃がんによる死亡率も徐々に低下している。がんの有無だけではなく、自分の胃がどれだけ健康なのかを知りたがっている人が増えているのだろう。そこでおすすめなのが、胃の健康度を手軽にチェックできる血液検査である。人間ドックを受診する際、オプションでプラスすることができる。2種類の血液を組み合わせた方法で、胃の健康度を4つのタイプに分類することが可能だ。

血液検査でわかる4つのタイプと病気のリスク

胃の健康度を調べる血液検査は、ABC検査と呼ばれており、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、それから胃がんといった胃腸の病気のリスクを評価することができる。検査結果がA〜Dの4郡に分類される。

Aタイプ:健康的な胃粘膜で病気のリスクは低い
Bタイプ:少し弱った胃粘膜で十二指腸潰瘍に注意
Cタイプ:弱った胃粘膜で胃がんなどになりやすい
Dタイプ:かなり弱った胃粘膜で胃がんなどのリスクが高い

検査結果は、ペプシノゲン検査とヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査の2つを組み合わせて判断する。胃の病気の多くは、胃粘膜の委縮という症状が現れる。その際、血液中のペプシノゲンと呼ばれる物質濃度に変化が生じる。厳密にはペプシノゲンⅠとⅡの濃度を調べるのだが、胃粘膜が委縮している場合は、ペプシノゲンⅠが低下しⅡは相対的に上昇する。これが陽性状態であり、胃がんのリスクが高まっていることを意味する。

一方、ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査は文字通り、血液中のヘリコバクター・ピロリ菌抗体を調べるもので、陽性と陰性で検査結果が出る。陽性の場合はヘリコバクター・ピロリ菌に感染しており、胃潰瘍などのリスクが高まっているといえる。

タイプに応じて明らかに高まる胃がんのリスク

人間ドック受診者8,286人にこの血液検査を受けてもらい、同時に内視鏡検査を実施したところ、46例の胃がんが発見された。先述のタイプ別に見ると、Aタイプの罹患者はゼロで、Bタイプが7例、C、Dタイプがあわせて39例となった。このように、胃の健康度をチェックする血液検査では、胃がん罹患率がC、Dタイプで有意に高まっていることがわかった。C、Dの判定が出た場合は、精密検査を受け、また1年に一度など定期的な検査を受けることが望ましい。ピロリ菌への感染や軽度の胃粘膜委縮なども、早期に処置を施すことで重度の疾患を未然に防ぐことができるだろう。大切なのはまず、自分の胃がどれだけ健康なのかを知ることである。

安里 満信(あさと みつのぶ)
この記事の監修ドクター
あさと医院 院長
医学博士、日本救急医学会専門医

Colorda編集部