2015.5.21

妊娠中・授乳中は人間ドックを受けられる?

体調が崩れがちな妊娠中だからこそ…

妊娠中 妊婦の人間ドック妊娠中の母体には、絶えずさまざまな変化が生じている。ホルモンバランスが崩れることが、その最たる例だ。人間の身体は、ホルモンという極微量の物質によって、その恒常性が保たれている。そのため、ホルモンバランスが不安定になることで、体調が乱れ、ひいて は種種の疾患を引き起こすのである。

そんな妊娠期間中であるからこそ、いつも以上に人間ドックを受けたいと思うのは自然と言える。ただし、妊娠中や授乳中というのは、自分ひとりの身体ではなく、人間ドックの影響は、胎児や乳児にまで及ぶことがあるのだ。そこで生じるのが、そもそも妊娠中や授乳中に人間ドックを受けてもよいのかどうか、という疑問である。

妊娠中の人間ドックは胎児に影響を与える

結論としては、妊娠中に人間ドックを受けることは推奨できないとされている。本人の強い希望があれば、検査項目を限定して、受けることは可能である。けれども、胎児の健康を考えたならば、極力避けたほうが無難である。

まず、胸部レントゲンや上部消化管造影など、母体にX線を照射するような検査は受けられない。胎児を被爆させる可能性があるためだ。では、心電図検査や聴力検査、それから血液検査といった、被曝の恐れのない検査なら問題ないのかというと、そうでもないようだ。

これらも、母体に対して少なからずストレスを与える行為である。妊娠中は可能な限り、母体へのストレスを軽減することが望ましい。特に、妊娠初期は、胎児への影響が大きいため、十分に配慮する必要がある。具体的には、妊娠4~8週目の被曝が最も悪影響が大きいとされている。そういったことから、妊娠中は人間ドックを受けるのは好ましくないと言える。

授乳中も母子の身体はつながっている!?

出産を終え、授乳期に入れば、人間ドックを受けても問題なさそうであるが、そう単純ではない。乳児は、母体から分泌される母乳によって発育していく。母乳の分泌は母体の状態に影響される。余分なストレスはかけないほうがいい。

また、授乳中にマンモグラフィー検査などを受けても、あまり意味がない。なぜなら、授乳中は乳腺が非常に発達しているため、正確な検査結果を得ることができないのである。つまり、授乳期間中も人間ドックは控えたほうが賢明であると言えそうだ。出産後もしばらく、母子の身体は母乳によってつながっているのだ。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部