2015.5.18

万能ではない!? 腫瘍マーカーでわかること、わからないこと

そもそも腫瘍マーカーってなに?

腫瘍マーカー
がん検診では、血液を検査することによって、がんを発症しているかどうかを診断することができる。その際、用いられるのが腫瘍マーカーである。

腫瘍マーカーは、がん細胞によって作られる物質で、健康な人の血液中には、ほとんど現れてこない。タンパク質でできているものが多く、いわば、がん細胞が活性化することによって生じる副産物のようなものである。つまり、この物質の量や有無を測定することによって、がんを診断することになる。

ちなみに、血液を検査する前には、モノクローナル抗体を含む薬剤を体内に取り込む。モノクローナル抗体とは、腫瘍マーカーだけに付着する物質である。そうして目印を付けられた腫瘍マーカーの量を測ることで、がんを発症しているのかを見極めるのだ。

腫瘍マーカーでわかるのは発症の有無だけではない!?

では、腫瘍マーカーを用いると、一体何がわかるのだろうか。

まず第一に、がんを発症しているかどうかを診断することができる。血液中に腫瘍マーカーが現れているということは、身体のどこかで、がん細胞が活動していることを意味しているからだ。それに加えて、どの組織にがん細胞が発生しているかも、わかるようになってきている。

例えば、前立腺がんであれば、PSAと呼ばれる糖とタンパク質が結合した物質が腫瘍マーカーとなる。PSAは前立腺のみに存在しているものなので、がんが発症している部位を特定しやすいと言えるのだ。

また、腫瘍マーカーは、がんの進行度を評価することも可能である。がんは、進行度が高ければ高いほど、血液中に多くの腫瘍マーカーが現れてくるからだ。このように腫瘍マーカーは、がんの発症の有無、発症部位、進行度まで診断することができる。

早期がんに対しては効果がない!

ここで注意しておきたいのが、腫瘍マーカーの正確性についてである。例えば、先ほどあげたPSAという物質は、微量ながら、健康な人の血液中にも存在している。そのため、PSAが検出されたからと言って、がんを発症していると確定診断することはできない。つまり検出量が少ないと、がんの疑いがある、といった程度の判断材料にしかならない。

それに加えて、腫瘍マーカーは早期がんに対しては、ほぼ無力と言っても過言ではない。なぜなら早期がんでは、まだ血液中に腫瘍マーカーが現れてこないからだ。

以上のことから、腫瘍マーカーは、進行がんを見つけるための目安と考えるのが賢明である。

腫瘍マーカーとは、本来がんが再発したかどうかを調べるのに最も威力を発揮する。想像してほしい。たとえば、あなたが胃がんにかかったとしよう。幸い早期の胃がんで、胃を全て摘出することで治療をすることが出来た。ただ、いつ再発してもおかしくないのが、がんという病気だ。定期的なチェックは欠かせない。そんな時、胃がんが再発したかどうかどうやって検査したらいいのだろう。胃はもうすべてとってしまっているから、胃カメラをしてもそこに胃は存在しない。こんな時頼りになるのが腫瘍マーカーだ。胃がんに特徴的な腫瘍マーカーを測定することで、身体のどこかでがんが再発していないかをチェックすることができる。早期に再発を発見することで、より良い治療法を選択することが可能になるのだ。

坂口 海雲(さかぐち みくも)
この記事の監修ドクター
福島吉野スマイル内科・循環器内科 院長
日本内科学会認定内科医/日本医師会認定産業医/日本循環器内科学会所属医

Colorda編集部