2016.8.8
扁平上皮がんの腫瘍マーカー

扁平上皮がんを検出する腫瘍マーカー「SCC」

SCCで検出できる扁平上皮がんが生じる臓器とは?

Chronic gastritis of a human, highly detailed segment of panorama. Photomicrograph as seen under the microscope, 10x zoom.腫瘍マーカーとは、癌細胞が作る物質、または体内に癌があることに反応して非癌細胞が作る物質で、それらを組織や体液、排泄物などで検出することが、癌の存在、種類、進行の程度を知る上で目印となるもの。この腫瘍マーカーは、癌スクリーニングや診断、治療経過のモニタリングに使用されているが、一部の腫瘍マーカーは、良性疾患や喫煙といった生活習慣で測定値が上昇することもあり、臨床の現場では、複数の腫瘍マーカーを併用することで総合的に判断している。

腫瘍マーカー最前線シリーズ、13回目の今回は、扁平(へんぺい)上皮がんを検出するうえで非常に有用な腫瘍マーカー「SCC抗原」を紹介する。

SCCとは、Squamous Cell Carcinoma の略称で、日本語ではそのまま「扁平上皮がん」を意味する。皮膚は、表皮・真皮・皮下組織の3層構造を形成しているが、扁平上皮がんとは、このうち表皮にある表皮角化細胞が悪性に増殖してできるがんのこと。

扁平上皮は人体のさまざまな組織に分布している細胞で、重層化しているものをとくに重層扁平上皮と呼んでいる。口腔や舌、咽頭といった組織に始まり、食道、声帯、気管や気管支などのほか、女性に限っていえば、女性器の外陰部や膣、子宮頚部なども重層扁平上皮で覆われている。

がんはこの重要扁平上皮の遺伝子に異常が生じることで発症するケースが多い。そのため、重層扁平上皮で覆われた臓器は多く、それだけがん化する確率も高まるのだ。

SCC抗原は、別名「扁平上皮癌関連抗原」ともいい、扁平上皮癌を疑う際に調べる腫瘍マーカーだ。SCC抗原は、正常者の血中にもわずかに存在しているが、子宮頸部や肺、頭頸部、食道などの扁平上皮癌患者の血清中に高濃度に存在している。

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進行性のがんへの感度が高いSCCの基準値

SCC抗原の基準値は、1.5ng/ml以下だ。この基準値を超えた場合、上述した領域にがんが発生している可能性がある。具体的には頭頸部がんや肺がん、食道がん、女性に関しては子宮頸がんや子宮筋腫などである。

ただ、初期のがんに対しては感度が低く、場合によっては異常値が現れないこともあり、
がんの早期発見を目的としたスクリーニングには適さない。一方、進行性のがんに対しては感度が高く、基準値の10倍の値が出ることも珍しくはない。そのため、がんの進行度を把握したり、治療の効果判定を行う際に有用だ。また、再発をしている場合、臨床的に症状が現れてくる数週間前に血中濃度が上昇することが多く、再発のモニタリングにも有用となる。

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SCCの異常値が出た場合に受けるべき各種精密検査

SCCが異常値を示したら、次に各種の精密検査を受けることになる。たとえば、ほかの症状から肺がんが疑われるケースでは、気管支内視鏡や喀痰検査などを受けて確定診断を下す。食道がんであれば上部消化内視鏡検査、子宮頸がんであれば、コルポスコープ診(膣拡大鏡を使った診察)や膣細胞診といった検査が追加される。

ちなみにSCCは、アトピー性皮膚炎や気管支炎といった炎症性疾患でも陽性を示すことがあるため、異常値が現れたからといってがんと診断するのはまだ早い。確定診断を下すには、追加の検査を受けることは非常に重要であるといえる。

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上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部