2016.8.4
すい臓がん

すい臓がんの検査方法と治療法

すい臓がんは、発見しづらく5年生存率は7%

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日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が死亡すると言われているがんは、医療技術の進化により早期発見が可能になってきている。がんの検査方法と治療法シリーズ第1回は、なかでも早期発見が難しく、生存率が低い「すい臓がん」について紹介する。

すい臓は、胃の裏に存在する細長い臓器だ。インスリンやグルカゴンといった血糖値を調節するホルモンのほか、さまざまな消化酵素を産生する重要な内分泌器官である。ただ、異常が生じた際の自覚症状が乏しく、身体の深部に位置しているということもあり、すい臓がんといった大きな病変もなかなか発見しにくい傾向がある。そのため、がんと診断されてからの5年生存率は男性で7.9%、女性で7.5%と低い傾向にある(※1)。

すい臓がんを診断する、腹部超音波検査とCT検査の比較

すい臓がんが疑われる場合、まずは腹部超音波検査かCT検査が行われることが多い。2つの検査を比較した表を以下に示す。

被曝 リアルタイム 時間 費用
CT あり 不可 短い 高い
腹部超音波 なし 長い 安い

食欲の低下、みぞおちの違和感など腹部に異常を感じた場合、まずは腹部超音波検査で腹部の状態を調べる検査を行う。腹部超音波検査は、リアルタイムで臓器の病変を探すことができ、気になる部位があれば、じっくり時間をかけて検査することもできる。このとき、肝臓、胆嚢や腎臓のほか、すい臓も診ていくことになる。しかし、すい臓は超音波で見づらい深部に位置しているうえに、消化管ガスや内臓脂肪が多い人はより見づらい。すい臓における超音波検査は、患者の内臓の状態に依存すると言える。

一方、CT検査は、臓器の位置関係などに左右されず、すい臓を一瞬で撮影し、精密に観察することができる。ただすい臓がんの場合は、造影剤を注射するケースがほとんどのため、腹部超音波よりは身体的苦痛を感じる場合もある。また、CT検査には被曝のリスクも付随する。

この2つの検査で確定診断が下せない場合は、MRI検査や超音波内視鏡検査、血液検査などを必要に応じて加えていくことになる。

すい臓がんの治療法

すい臓がんの治療は切除療法、化学療法、放射線療法の3種類のどれか、あるいは複数を組み合わせることによって進められる。腫瘍がすい臓に限局し、他の臓器への転位が見られない場合は切除療法が有効となる。これは膵臓がんの初期であるケースが多い。

けれどもすい臓がんは、現状、進行した状態で発見されることが多く、切除療法が適応されるケースは比較的少ない。そのため、化学療法や放射線療法を組み合わせながら、治療を進めることになる。

すい臓がんは初期段階で発見しにくく、なおかつ、ほかのがんと比べて進行が早い傾向があるため、腹部に異常を感じたらまずは超音波検査などを受けることをおすすめしたい。そうしてすい臓がんの早期発見に努めることで、根治療法も適応しやすくなる。

※1 国立がん研究センター がん対策情報センター 部位別5年相対生存率

坂口 海雲(さかぐち みくも)
この記事の監修ドクター
福島吉野スマイル内科・循環器内科 院長
日本内科学会認定内科医/日本医師会認定産業医/日本循環器内科学会所属医

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Colorda編集部