2016.9.15
大腸がん

大腸がんの検査方法と治療法

日本人の発症率が高い大腸がん

inside of an unhealthy colon日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が死亡すると言われているがんは、医療技術の進化により早期発見が可能になってきている。がんの検査方法と治療法シリーズ第10回は、日本人の発症率が高く、がん全体の死亡数が男性4位、女性1位の大腸がんについて紹介する。

長さ約2mの盲腸、結腸、直腸、肛門を含む大腸に発生するがんが大腸がんだ。血便や下血などの症状のほか、下痢と便秘を繰り返したり、お腹が張る感覚、残便感などが現れたりするが、いずれも早期の段階では自覚症状が乏しいため、早期発見には定期的な検査が有効と言える。

初期の診療で行われる検査

大腸がんが疑われた場合は、まず始めに便潜血検査や直腸診といった簡易的な検査が行われる。便潜血検査は、専用の容器で便を採取し、便のなかに血液が含まれているか否かを調べる方法だ。ただ、この検査では出血の有無は確認できても、それが大腸の腫瘍によるものなのか、あるいは肛門に発生した痔によるものなのかは判別できない。

直腸検査は医師が直接、肛門から指を入れ、肛門や直腸、あるいは大腸の一部にしこりや潰瘍などの病変がないかを調べる方法である。直腸診は医師の診療技術に依存する部分も多く、精度の高い検査法とは言えない。

大腸がんを調べる画像診断、注腸造影検査と内視鏡検査の比較

簡易的な検査によって大腸がんの疑いが強まれば、注腸造影検査や大腸内視鏡検査といった精密検査を受けることになる。2つの検査の特徴を比べてみよう。

被曝 時間 内視鏡治療 腫瘍の大きさ
注腸造影 あり 短い 不可 位置、大きさ
大腸内視鏡 なし 長い 範囲、深達度

注腸造影検査はいわゆるエックス線検査であり、被曝を伴うが検査時間が短い。この検査によってわかるのは、腫瘍の位置や大きさなどである。一方、大腸内視鏡検査は、肛門から直接内視鏡カメラを挿入する検査で、カメラの映像を見ながら検査を進めていくため、検査時間も長くなる。その分、リアルタイムで気になる部位をじっくりと調べたり、ポリープなどがあればその場で切除したりすることも可能で、腫瘍の範囲や深達度がわかる。ただし内視鏡は検査前に大量の下剤を飲んで、腸内をきれいにする事前準備や、カメラを入れる際、痛みを感じる場合などがあり、人によっては苦痛を感じることがある。

大腸がんの治療法

大腸がんは非常に早い段階で発見されれば、内視鏡により切除することができるが、多くのケースで外科手術が適応されている。手術法は開腹したり腹腔鏡を用いたりとさまざまだが、術後に化学療法や放射線療法で補完する点は共通している。ただし、ステージⅣの末期になると、対症療法でしか対応できなくなることもある。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部