2016.12.5
頭頸部のがん

頭頸部のがんの検査方法と治療法

口腔や咽頭にできるがんの総称

pixta_17928188_Sのコピー頭頸部とは鼻腔や口腔、咽頭などを含む領域で、これらの組織に発生する悪性腫瘍を頭頸部がんと呼ぶ。おもなものに口腔がんや咽頭がんといった悪性腫瘍が挙げられるが、がん全体でみるとわずか数%にとどまる。がんの検査方法と治療法シリーズ第20回は、2016年のがん統計予測で21,700症例が新たに罹患するとされている頭頸部がん(口腔・咽頭)について紹介する(※1)。

肉眼でも確認できるがん

頭頸部のがんは、口腔内や喉にできるため、その位置関係上、体外からアクセスしやすい。例えば口腔がんの一種である舌がんであれば、病変を肉眼で確認することが可能だ。咽頭がんに関しても内視鏡を挿入することで、容易に観察することができる。そのため、頭頸部のがんでは、まず視診や内視鏡検査によって病変を調べるケースが多い。頭頸部のがんが疑われれば、病変部から組織を採取し、生検を行うことで確定診断を下す。

頸部超音波検査が有用

頭頸部のがんは、頸部のリンパ節へ転移しやすく、頸部超音波検査が有用といえる。頸部超音波検査であれば、頸部に存在するリンパ節や血管などを画像で描出しやすく、がんがどの程度転移しているのかを把握することができる。

また、CTやMRIを用いることで、がんの広がりなどをさらに詳しく知ることが可能だ。CTとMRIには、以下のような違いがある。

被曝 時間 費用
CT あり 短い やや高い
MRI なし 長い やや安い

大きな違いはやはり被曝の有無である。MRIは被曝することなく、頭頸部の状態を詳しく調べることができる。また、舌がんや咽頭がんのような軟組織に生じるがんは、MRIの方が検査精度は高いといえる。なぜなら、CTは骨や歯などの硬組織の描出に優れた検査であり、MRIは脳や血管など水分の多い軟組織の抽出にすぐれている検査だからだ。

頭頸部がんの治療法

頭頸部には発声や咀嚼、呼吸といった重要な機能に関わる臓器が密集している。そのため頭頸部のがんでは、できるだけ臓器の機能を温存する形で治療が進められる。具体的には、病変部の部分切除、化学療法、放射線療法で対応していく。

例えば進行度の低い舌がんであれば、舌の半側切除などで対応できるが、進行度が高くなると、舌の全摘出となる。そういったケースでは、舌の再建手術を行うことで、機能の全面的な喪失を回避する。このように、頭頸部のがんは、その進行度に応じて術後のQOLが大きく変わる悪性腫瘍といえるため、定期検診などを受けて早期発見を心がけたい。

※1 2016年のがん統計予測(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター)

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部