2015.9.24

検診受診率が上昇し死亡者率は減少! 胃がん検診の実態

大きな変化が表れた胃がん検診受診率の推移

胃がん胃がん検診の受診率は、平成25年に急速な伸びを見せている。国民生活基礎調査によると、平成22年に32.3%だった受診率が平成25年には39.6%にまで上昇しているのだ。男性だけのデータを見ると、平成22年に36.6%だったものが、平成25年には45.8%にまで達しており、これは国や各自治体による受診推奨運動などの効果と考えられる。

低下の一途をたどる胃がん年齢調整死亡率

国立がん研究センターのデータによると、日本における胃がん年齢調整死亡率は、1970年代から低下の一途をたどっている。年齢調整とは、各年度の死亡率を比較する際に、年齢構成による偏りが生じないよう調整されるもので、1985年(昭和60年)の日本人人口がモデルとなっている。高齢者の多い社会では、それだけがんで死亡する人の比率が高まる。それでは年齢構成に応じた死亡率が際立ってしまい、真の死亡率と判別しにくくなるため、調整が必要なのだ。

データでは、1970年に対人口10万人で70だった胃がんの死亡率が、2012年には18にまで低下している。罹患率に関しては、2000年以降ほぼ横ばいである。つまり、胃がんにかかる人はそれほど減少していないが、それによって死亡する人は少なくなってきているといえる。

胃がん検診における具体的な検査項目

市区町村による胃がん検診は、40歳以上の人を対象に実施されており、検診間隔は年1回。検診項目は、問診および胃部エックス線検査である。いわゆるバリウム検査と呼ばれているもので、白い液体を飲み、エックス線を照射することによって胃の造影画像が得られる。胃のほかにも、食道や十二指腸の形や大きさ、粘膜の状態もわかり、胃がんなどの病巣を発見するのに有効だ。

また一般の医療施設で行われる胃がん検診では、内視鏡を用いて映像越しに胃の状態を診る内視鏡検査も受診することができる。内視鏡を上部消化管に挿入、通過させる際に痛みや違和感を感じる場合もあるが、カメラの映像によって、胃粘膜表面の異常を細かく診査することが可能な検査法だ。

そのほか、胃がんとの関連が深いヘリコバクターピロリを抗体検査によって調べる検査もある。ピロリ菌は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍患者の多くに感染が確認されるため、胃潰瘍の既往歴がある場合は抗体検査が有効だ。ピロリ菌検査の正常値は9.9U/ml以下で、それ以上だと感染の疑いがあるといえる。ちなみに、職場や自治体の健診では、ピロリ菌の有無や検出量などについて知ることはできない。さまざまな検査があるので、医師と相談し、市町村が実施している検診以外に追加で受けることも検診したい。胃がんそのものの発見だけではなく、胃がんへと移行する病変を早期に見つけることも、検診の重要な役割といえる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部