健康診断

骨密度検査はどこで受けられる? 費用相場、結果数値の見方、骨粗しょう症になりやすい方を紹介

骨密度 健康診断
吉井 友季子
こちらの記事の監修医師

医療法人優美会吉井クリニック 院長

骨密度検査は、骨がもろくなり骨折しやすくなる病気「骨粗鬆症(骨粗しょう症)」の代表的な検査です。とくに女性は閉経前後の50代から骨密度が急激に低下するため、早期から骨粗しょう症の予防を行うことが重要です。この記事では骨密度検査を考えている方に向けて、どこで骨密度検査が受けられるのか、費用相場と結果数値の見方、骨密度検査の種類などについて紹介します。

★こんな人に読んでほしい!
・40代以上の女性
・骨密度検査に興味はあるが決めかねている方
・骨密度検査を受けられる場所や検査の方法、費用相場について知りたい方

★この記事のポイント
・骨粗しょう症とは骨強度(骨の強さ)が低下し、骨折を起こしやすくなる骨の病気
・女性は閉経を迎える50歳前後で骨密度が急速に減少し、骨粗しょう症の発症リスクが高まる
・骨密度検査を受ける方法として、自治体や職場の健康診断、人間ドックなどが挙げられる
・骨密度検査の費用相場は、数百円(自治体など/MD法、QUS法)~4,500円前後(全額自己負担の場合/DEXA法)
・DEXA法は骨密度検査の方法として最も精度が高く、ガイドラインでも推奨されている

骨密度検査の重要性。骨粗しょう症とは?

骨粗しょう症は骨がもろくなり骨折を起こしやすくなる病気

骨粗鬆症(以下、「骨粗しょう症」と表記)についてWHO(世界保健機関)では、「低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」と定義しています*1。すなわち、骨強度(骨の強さ)が低下して骨折を起こしやすい状態になる骨の病気です。

骨強度には骨密度70%と骨質30%の2つの要因が影響していると言われており*1、どちらか一方が低下しても骨折の発症リスクは高まります。骨密度とは、骨を構成するカルシウムなどのミネラル成分が骨にどのくらい詰まっているかを意味しています*2。一方で骨質は骨の構造や材質を意味しており、骨の成分であるカルシウムを支える網目のような構造(「コラーゲン架橋」と呼ばれる)の丈夫さなどと関係しています。

女性は閉経後50代から急激に骨密度が減少。閉経後はとくに注意が必要

骨密度は20歳前後にピークをむかえて最大となります。その後は加齢とともに徐々に減少していきます*2。とくに女性では50歳前後で閉経を迎えると、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの急激な枯渇にともない、骨密度も急激に減少します*1。これは、エストロゲンには骨吸収を抑える(骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する)働きがあるためです。「骨密度が年齢とともにどのくらい変化しているのかをより正確に把握したい」という方は、骨量が変化しにくい20〜40代前半の間に骨密度検査をして、若いときの骨密度を把握しておくのが理想的です。

骨折は寝たきりの原因第3位。定期的に骨密度検査を受けることが重要

2019年に実施された国民生活基礎調査(厚生労働省)によると、寝たきりや自立した生活ができない要介護状態になった原因の第3位は「骨折・転倒」でした*3。なかでも、大腿骨(太ももの骨)を骨折してしまうと生活や移動が困難になるだけではなく、死亡率が上昇することが明らかになっています*1。健康寿命を伸ばすためにも、40代の早期から定期的に骨密度検査を受けることがおすすめです。

骨密度検査をとくに検討したい方

日本骨粗鬆症学会等が作成した「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン(2015年版)」によると、下記の方は骨密度の低下による骨折のリスクを有しているため、とくに骨密度検査が有効であるとされています*1

●65歳以上の女性
●70歳以上の男性
●閉経期〜65歳未満の女性、50歳以上70歳未満の男性で下記の項目にあてはまる方
・アルコールを多く摂取する(一日3単位※以上)
・喫煙をしている
・大腿骨近位部(太ももの付け根部分)骨折の家族歴がある
●脆弱性骨折(軽度の外力によって起こる骨折)を起こしている方
●骨密度の低下や骨量の減少を起こしやすい病気になっている、またはそれを引き起こす薬を服用している方

骨密度の低下をきたしやすい代表的な病気としては副甲状腺機能亢進症、ビタミンC欠乏症、関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、肝臓の病気、アルコール依存症などが挙げられます*1。また骨粗しょう症を引き起こす原因となりうる薬としてはステロイドが代表的です*1

※アルコール単位:従来は1単位=約20gのアルコール量とされていたが、近年は世界的な標準に合わせて1単位(1ドリンク)=約10gが採用されており*4、上記3単位は日本酒1合に相当する。

骨密度検査の結果数値について。骨粗しょう症の診断基準

骨密度検査の結果表にはおもに下記の3つの数値が記載されています。

1)BMD[g/cm3
BMD(Bone Mineral Density)とは骨密度のことです。骨の単位面積あたりの骨塩量(骨を構成しているミネラル類の量)を表しており、この値が高いほど骨が強いと言えます*2

2)YAM[%]
YAM(Young Adult Mean)とは若年成人の骨密度平均に対して自身の骨密度が何%であるかを比較した数値であり、骨粗しょう症の診断に用いられます。腰椎では20〜44歳、大腿骨近位部では20〜29歳の骨量の平均が基準として用いられています*1

3)同年齢の骨密度平均に対するパーセンテージ[%]
同年代の骨密度平均に対して自身の骨密度が高いのか、低いのかを知る目安になります。

骨粗しょう症の診断はおもに脆弱性骨折(軽度の外力によって起こる骨折)の有無とYAMによって決められます。脆弱性骨折は本人が自覚していないこともあるため、医師の診察やレントゲン検査、血液・尿検査などの結果に基づいて判断されるのが一般的です。

<骨粗しょう症の診断基準(原発性骨粗しょう症)>*1

脆弱性骨折がない場合骨密度がYAMの70%以下、または-2.5SD(標準偏差)※以下
脆弱性骨折がある場合・大腿骨近位部(太ももの付け根部分)の骨折または椎体(背骨)骨折
・その他の脆弱性骨折があり、骨密度がYAMの80%未満

※SD(標準偏差):standard deviationの略称で、平均値からのばらつきの大きさをあらわす数値。SDスコアが-2.5以下の場合は年齢相当の骨密度を大きく外れて骨密度が低下していることを表している。

脆弱性骨折がない場合、YAM80%以上を正常、80%を下回ると骨量減少(要注意)、70%以下で骨粗しょう症とする場合が多いです。年齢や性別、医療施設によって判定基準が異なる場合があるため詳細については検査を受けた医療施設でご確認ください。

骨密度検査はどこで受けられる?

自治体によっては骨密度検査を検診で実施しているため確認を

骨密度検査は厚生労働省が示すがん検診(乳がん検診、大腸がん検診など)の指針には含まれていません。しかし自治体によって骨密度検査の費用を補助または助成している場合があります。くわしくはお住まいのWebサイトをご参照ください。例として、板橋区、世田谷区、新宿区の骨密度検査費用補助・助成を紹介します。

板橋区:骨粗しょう症予防検診*5

【対象者】
年度内に40・45・50・55・60・65・70歳を迎える女性区民
【条件】
下記以外の方。
・加入されている健康保険組合などで同様の検診の受診機会がある方
・骨粗しょう症と診断され、現在治療中または経過観察中の方
・妊娠中または妊娠している可能性がある方
【検診内容】
問診、骨密度測定(MD法)、握力測定
【自己負担額】
500円
【実施場所】
区内の協力医療機関

世田谷区:骨粗しょう症検診*6

【対象者】
年度内に30・35・40・45・50・55・60・65・70歳を迎える女性区民
【条件】
下記以外の方。
・医師から骨粗しょう症と診断されて治療を始めようとしている方
・骨粗しょう症の治療中の方
【検診内容】
問診、骨量の測定【自己負担額】
400円
【実施場所】
区内の協力医療機関

新宿区:骨粗しょう症予防検診*7

【対象者】
20歳以上の区民
【条件】
・医療機関で骨粗しょう症と診断された方やその治療を受けている方は対象外
・年度内1回まで
【検診内容】
・超音波での骨密度検査(QUS法)
・医師による当日の結果説明(結果に応じて保健師、栄養士による保健指導あり)
【自己負担額】
300円
【実施場所】
区内の指定された保健センター

人間ドックのオプションや薬局などで骨密度検査を受けることが可能

自治体の検診で骨密度検査が実施されていない場合や、自治体検診の対象に当てはまらない方は人間ドックで骨密度検査を受けることができます。人間ドックを利用する場合の検査費用は原則全額自己負担ですが、自分にあった骨密度検査を実施している医療施設を選ぶことができたり、人間ドックのプランと組み合わせたりすることができるといったメリットもあります。

また、薬局やドラッグストアなどで超音波を用いた骨密度検査を実施していることもあります。

骨密度検査の費用相場は、検査の種類によって幅がある

骨密度検査の費用相場は、医療施設や骨密度検査の種類によっても異なりますが、全額負担の場合4,500円程度、1割負担で450円程度、3割負担で1,350円程度です。前述した通り、自治体で骨粗しょう症予防検診を実施している場合があるほか、勤めている会社の健康保険組合などから補助が出る場合もあります。補助を受けることでより安価に骨密度検査を受けられる場合がありますので、一度自治体や健康保険組合などに問い合わせてみるとよいかもしれません。

薬局やドラッグストアでの骨密度検査は、実施している企業とそうでない企業があります。実施している場合、無料~数百円程度で受けることができますが、同じ企業チェーンでもすべての店舗で実施しているわけではなかったり、予約が必要だったりすることがあります。事前に調べておくとよいでしょう。

骨密度検査は多くの医療施設で実施されていますが、検査方法にはいくつかの種類があり精度や検査方法も異なります。比較的高額な検査はDEXA(デキサ)法、安価な検査ではMD法やQUS法が用いられることが多いです。次項では自分にあった骨密度検査を選びたい方に向けて、骨密度検査の種類と特徴を紹介します。

骨密度の検査はおもに3種類。特徴とメリット、デメリット

DEXA法(DXA法)

DEXA(Dual-Energy X-ray Absorptiometry/デキサ)法は2種類のX線を用いておもに腰椎と大腿骨近位部の骨密度を評価します。DXAと表記されることもあります。いくつかある骨密度検査の方法のなかで最も精度が高く、「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015 年版」でも推奨されている検査方法です*1。4,500円程度(全額負担の場合)の比較的高額な検査は、DEXA法が用いられています。通常は専用の装置に仰向けで寝て測定を行いますが、体勢保持が困難な場合などは前腕部(手首からひじまでの部分)の測定を座って行うタイプの装置もあります。

【メリット】
・精度が高く、骨粗しょう症の診断に用いることができる
・検査時間が5〜10分と短い
【デメリット】
・円背(背中が曲がっている状態)が強い方、両側の股関節を手術している方、極度に太っている方には不向き(前腕DEXAであれば検査可能)
・わずかに放射線被曝がある

MD

MD(microdensitometry)法はレントゲンで第二中手骨(ちゅうしゅこつ:人差し指の付け根部分、手のひらの骨)を階段状のアルミニウム板とともに撮影し、その濃淡や骨の状態などから骨密度を評価する方法です*1。近年ではレントゲン装置や画像サーバーの性能が向上したため、短い時間で質の高い画像を得ることができるようになっています。人間ドックや自治体の骨密度検診で用いられることがあります。撮影は通常椅子に座り、レントゲンフィルムに両手を広げておいた状態で行います。

【メリット】
・座ったまま検査を行うことができる
・撮影時間が5分程度と非常に短い
・骨粗しょう症の診断に用いることができる

【デメリット】
・わずかに放射線被曝がある

QUS法(定量的超音波測定法)

QUS(Quantitative Ultrasound)法は超音波が骨内で伝わる速度と、超音波が骨内で減衰する(弱くなる)程度から骨評価を行う方法です。通常は踵骨(しょうこつ:かかとの骨)で測定を行いますが、脛骨(けいこつ:すねの骨)や橈骨(とうこつ:手首のあたりの骨)を測定する装置も近年登場しています。人間ドックや自治体の骨密度検診などで用いられることが多いです。DEXA法などとは異なる骨折の判別や骨折リスクの判別ができる可能性があると報告されていますが、骨粗しょう症の確定診断には用いられず、スクリーニングとして活用されています*1

【メリット】
・放射線による被曝がないため小児や妊婦でも受けることが可能
【デメリット】
・骨粗しょう症の確定診断に用いることはできない
・測定精度が高くない(誤差3〜4%)
・温度の影響を受ける

また、上記3種類の骨密度検査のほか、血液検査や尿検査を用いて骨代謝マーカーの測定を行う医療施設もあります。骨代謝マーカーを測定することで現在骨がどれくらい作られているか、もしくは吸収されているかを知ることができるため、骨粗しょう症の発症リスクを予測したり骨粗しょう症の治療効果を判定したりする目的で用いられています。

骨密度検査を受ける際の注意点

骨密度検査では前日や当日の食事についてとくに制限はありません。ただし同日の健康診断や人間ドックで、血液検査や消化器関連の画像診断などがある方は食事制限が必要のため、くわしくは医療施設にご確認ください。

骨密度検査は基本的に寝ている(もしくは座っている)だけで痛みはともないません。リラックスをして身体を動かさないでいることが最も重要です。またDEXA法の場合、検査当日の服装は下記のポイントに気をつけることでよりスムーズに検査を受けることができます。

【骨密度検査(DEXA法)を受ける際の服装のポイント】
・ホックが付いているブラジャーは避ける
・ファスナーや金属のベルトがついているズボンは避ける
・厚手のセーターは脱いでおく
・撮影部位(おもに腰や股関節のあたり)に貼ってある湿布や保温カイロは外しておく
・コルセットは外しておく(歩行が困難な場合は検査ベッドに寝てから外すこともできる)
・ヘアピン、ネックレス、時計、ポケット内の携帯電話や小銭は測定の邪魔になることがあるため取り外しておく

また骨密度検査前にバリウム検査、脊髄造影などの造影剤を使用する検査や、放射性同位元素を使用するRI検査などを受けると検査を受けられない場合があるため、その旨を事前に医療施設へ伝えておくとよいでしょう。

参考資料
*1.日本骨粗鬆症学会等「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015 年版」
*2.厚生労働省 e-ヘルスネット 骨密度
*3.厚生労働省 2019年 国民生活基礎調査の概況「IV 介護の状況」
*4.厚生労働省 e-ヘルスネット 飲酒量の単位
*5.東京都板橋区 骨粗しょう症予防検診
*6.東京都世田谷区 骨粗しょう症検診を受けましょう!
*7.東京都新宿区 骨粗しょう症予防検診(保健センター)

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