人間ドック

健康診断や人間ドックの費用は医療費控除適用外だが例外も。経費計上は可能?

医療費控除 人間ドック

人間ドックや健康診断の費用は医療費控除の対象外です。ただし、受診により重大な疾病が見つかった場合は医療費控除の対象になるなど、例外もあります。医療費控除の対象となるケースや、個人事業主やフリーランスの方が人間ドックを受けた場合は経費として申告できるのかなどについても説明します。

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★こんな人に読んでほしい!
・人間ドックや健康診断の費用は医療費控除の対象となるか知りたい方
・個人事業主(ひとり社長・ひとり親方)で、自身や家族、従業員が人間ドック等を受けた場合に経費になるか知りたい方
・人間ドックや健康診断の費用補助について知りたい方

★この記事のポイント
・人間ドックや健康診断では治療は行われないため、原則として費用は医療費控除の対象外
・人間ドックや健康診断の結果、重大な疾病が見つかり、引き続き診察や治療をした場合の人間ドック等の受診費用は医療費控除の対象になることがある
・人間ドックや健康診断の費用はセルフメディケーション税制の対象ではないが、受診時の領収書や結果通知書は税制を利用するために必要
・個人事業主が受けた人間ドックや健康診断の費用は、事業経費として認められない
・個人事業主が雇っている従業員が受けた人間ドックや健康診断の費用は、経費として計上できる

人間ドック・健康診断の費用は医療費控除やセルフメディケーション税制の対象になるか

人間ドック・健康診断の費用は原則的に医療費控除の対象ではない

医療費控除とは、生計を一にする配偶者や親族など世帯分を合算した1年間の医療費が一定の金額を超えた場合に、確定申告をすることで所得控除が受けられる税制度のことです*1。ここで言う医療費とは、医師による診療または治療にかかった費用と、治療または療養に必要な医薬品の購入費などを指しています*2。人間ドックや健康診断は身体の健康状態の確認を目的とした予防医療であり、治療は行われないため、原則的には医療費控除の対象外です*3

健康診断等の費用は、疾病の治療を行うものではないので、原則として医療費控除の対象とはなりません。
しかし、健康診断等の結果、重大な疾病が発見され、かつ、その診断等に引き続きその疾病の治療を行った場合には、その健康診断等は治療に先立って行われる診察と同様に考えることができますので、その健康診断等のための費用も医療費控除の対象になります(所得税基本通達73-4)。

国税庁タックスアンサー No.1122 医療費控除の対象となる医療費

念のため調べておきたいなどの理由から、人間ドックや健康診断にCT、MRIなどの検査を付加した場合の費用も、治療にかかったものではないため医療費控除の対象外です。ただし、上記にあるとおり、人間ドックや健康診断を受けた結果、重要な疾病が見つかり治療を行った場合、人間ドックや健康診断の費用が医療費控除の対象となることがあります*3。詳しくは「人間ドック・健康診断、特定健診の費用が医療費控除の対象になるケース」で解説します。

特定健診(特定健康診査)の費用も医療費控除の対象外

特定健診(特定健康診査)とは、40歳以上75歳未満の方を対象に行われる、生活習慣病のリスクの早期発見をおもな目的とした健康診断です*4。特定健診の結果、生活習慣病のリスクが高いとされた方は、医師や看護師、管理栄養士などによる特定保健指導が行われます。特定健診や特定保健指導の費用は加入している公的医療保険の種類により異なります。自己負担で受診した場合の費用は、人間ドック等と同様に、原則的に医療費控除の対象ではありません*3

特定健康診査の費用は、疾病の治療を伴うものではないので、原則として医療費控除の対象とはなりません。
しかし、その特定健康診査の結果、高血圧症、脂質異常症または糖尿病と同等の状態であると認められる基準に該当すると診断され、かつ、引き続きその特定健康診査を行った医師の指示に基づき特定保健指導が行われた場合には、その特定健康診査の費用(自己負担額)も、医療費控除の対象となります(所得税法施行規則第40条の3)。

国税庁タックスアンサー No.1122 医療費控除の対象となる医療費

ただし、上記にあるとおり特定健診の費用が医療費控除の対象となる場合もあります。詳しくは次項で解説します。

人間ドック・健康診断、特定健診の費用が医療費控除の対象になるケース

人間ドックや健康診断、特定健診の費用が医療費控除の対象となるケースは下記です。

注:医療費控除の対象か否かの判断は、税務署などの判断によって異なる場合があります。実際の会計・税務処理については公認会計士や税理士などの専門家、または管轄の税務署まで事前に必ずご確認ください。

ケース1:人間ドック・健康診断の場合

人間ドックや健康診断の結果、費用が医療費控除の対象になるのは、重大な疾病が見つかり、引き続き治療を行った場合です*3。なお、医療費控除の対象となる「重大な疾病」について、国税庁は具体的な病名を明言していません。一般的には下記のように解釈されることが多いです。

・各種がん
・心疾患(心筋梗塞・狭心症など)
・脳血管障害(脳梗塞・くも膜下出血・脳出血など)
・高血圧
・脂質異常症
・糖尿病
など

ケース2:特定健診の場合

特定健診の結果、費用が医療費控除の対象になるのは、高血圧症、脂質異常症、または糖尿病と同等の状態であると認められる基準に該当すると診断され、医師の指示に基づき特定保健指導が行われた場合です*3

このように、人間ドックや健康診断、特定健診いずれの場合も、該当する疾病が発見されただけでは医療費控除の対象にはなりません。診断を受けて治療や指導が行われた場合に医療費控除の対象となります。また、重大な疾病かどうかの判断は税務署によって異なる場合があります。迷う場合は確定申告をする前に、管轄の税務署まで問い合わせましょう。

メタボの治療、ポリープ切除、スポーツジム等の利用費は対象になるか

上記のほか、人間ドックや健康診断、特定健診の結果を受けて治療などを行った場合の費用において、医療費控除の対象となり得るケースを紹介します。

注:医療費控除の対象か否かの判断は、税務署などの判断によって異なる場合があります。実際の会計・税務処理については公認会計士や税理士などの専門家、または管轄の税務署まで事前に必ずご確認ください。

ケース1:人間ドックや健康診断の結果、メタボリックシンドロームと同等の状態にあると診断され、治療を行った場合

「重大な疾病」と解釈される疾病のうち、高血圧や脂質異常症はメタボリックシンドローム※の条件に該当する疾病です*5。人間ドックや健康診断、特定健診でメタボリックシンドロームと同等の状態にあると診断され、引き続き治療を行った場合の人間ドック等の費用は、治療に先立って行われる診察と同様であるとみなされて医療費控除の対象となる可能性があります*3。ただし、税務署によって判断が異なる場合があるため、確定申告の前に管轄の税務署へ確認しましょう。

※メタボリックシンドロームとは:ウエスト周囲径(内臓脂肪の蓄積)が男性85cm以上、女性90cm以上で、かつ高血圧、高血糖、脂質代謝異常を2つ以上あわせ持った状態を指します。

ケース2:人間ドックや健康診断の便潜血検査で陽性となり、後日、大腸内視鏡(大腸カメラ)検査を受け見つかったポリープを切除した場合

ポリープが重大な疾病に該当するかどうかは、税務署の判断によります。便潜血検査の結果が陽性となり、精密検査として大腸内視鏡(大腸カメラ)検査を受けて見つかった大腸ポリープが悪性であり、引き続き治療を受けたケースでは、人間ドックや健康診断の費用が医療費控除の対象となる場合があります。一方、大腸ポリープが良性であり、切除後に治療を行わなかった場合は対象外と判断される可能性があります。確定申告の前に所轄税務署へ確認しましょう。

ケース3:人間ドック等の結果、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、虚血性心疾患などの疾病が発見され、医師の指導のもと運動療法として特定の施設(スポーツジム等)に通った場合

特定健診に基づく特定保健指導において、定期的な運動をするように指導されたためスポーツジムやフィットネスクラブに通った場合、特定健診と特定保健指導の費用および医師による診察や治療の費用は医療費控除の対象になりますが、スポーツジム等の利用料は医療費控除の対象にはなりません*6

他方で、人間ドックや健康診断、特定健診を受診したことで高血圧症、脂質異常症、糖尿病、虚血性心疾患などが見つかり、医師の診察と指導のもと特定の施設に通い運動療法を行った場合、一定の条件下で人間ドック等の費用および施設(スポーツジム等)の使用料が医療費控除の対象となることがあります*7,*8

<条件>*8
・医師によって発行された運動療法処方箋がある
・厚生労働省が認定した指定運動療法施設を継続的(おおむね週1回以上かつ8週間以上の期間)に利用する
・施設が発行し、医師が確認署名をした運動療法実施証明書がある

厚生労働省は、健康増進のための有酸素運動を安全かつ適切に行うことができる施設を「運動型健康増進施設」として認定しており、そのうち一定の条件を満たす施設を「指定運動療法施設」として指定しています*9

医療費控除の対象となるのは、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、虚血性心疾患などの診断を受けた方が、医師が作成した運動療法処方箋の内容に基づき、認定を受けた施設でおおむね週1回以上かつ8週間以上の期間にわたって運動療法を受けた場合です。医療費控除の手続きには施設利用後に施設が発行し、医師による確認署名がある「運動療法実施証明書」が必要です*8

認定施設数がそれほど多くなく、手続きが煩雑な点から利用機会は限られますが、上記の疾病等で運動療法が必要であると診断され、かつ近隣に指定運動療法施設がある方は、医療費控除の利用について主治医に相談してみましょう。

なお、温泉を利用した健康増進施設も医療費控除の対象となりますが、その場合は医師が作成した温泉療養指示書と、施設利用後の温泉療養証明書が必要です*10

人間ドック・健康診断の費用はセルフメディケーション税制の対象か

セルフメディケーション税制は健康維持や疾病予防のために一定の取り組みを行っている方が、対象となるスイッチOTC医薬品(医療用から転用されて市販薬として購入できる医薬品)を1年間で12,000円以上購入した場合に、購入費用の一部が所得から控除される制度です*11。医薬品の購入金額は生計を一にする配偶者や親族など世帯分を合算できます。なお、医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらか一方しか利用できません*11

人間ドックや健康診断の費用そのものは控除の対象になりませんが、セルフメディケーション税制を利用する際の条件である「健康の維持増進や疾病の予防への一定の取り組み」に該当するため、受診時の領収書や結果通知書は保存しておきましょう*12

<セルフメディケーション税制を利用するための一定の取り組み*12
・保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査(人間ドック、各種健診・検診等)
・自治体が健康増進事業として行う健康診査(生活保護受給者等を対象とする健康診査)
・予防接種(定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種)
・勤務先で実施する定期健康診断(事業主検診)
・特定健診、特定保健指導
・自治体が健康増進事業として実施するがん検診

上記の領収書や結果通知書は、セルフメディケーション税制を利用するために必要な一定の取り組みを行ったことを証明するものとして、申告から5年間自宅で保管します。なお人間ドック、各種健診・検診等の結果通知書に勤務先名や保険者名が記載されていない場合は、別途証明書の発行が必要になることがあります*13

個人事業主、ひとり社長(ひとり親方)、 フリーランスの場合、人間ドックや健康診断は経費になる?

自身が受けた人間ドック・健康診断の費用は経費にならない

個人事業主やひとり社長(ひとり親方)、フリーランスとして働く方自身が受けた人間ドックや健康診断の費用は、事業の経費として計上できません。

従業員の場合、人間ドックや健康診断の費用は健康維持のための「福利厚生費」として扱われることが一般的です。個人事業主やフリーランスとして働く方自身は従業員ではなく、福利厚生の概念がないため人間ドック等の費用も経費にはなりません

従業員を雇っている場合、従業員が受けた人間ドック等の費用は経費になる

個人事業主が従業員を雇い、その従業員が受けた人間ドックや健康診断の費用を個人事業主が負担する場合は、その費用を「福利厚生費」として計上できます。

ただし個人事業主と生計を一にする配偶者や親族を家族従業員(専従者)としている場合は扱いが異なり、人間ドックや健康診断の費用を経費にすることはできません*14

人間ドック・健康診断の費用相場と費用補助(助成)

人間ドックの費用相場と補助(助成)

人間ドックの費用は実施する検査の項目数や内容、医療施設によっても異なります。参考までに、おおよその費用相場が下記です。

スタンダードな人間ドック:3〜5万円
脳ドック:1~5万円
肺ドック:1~3万円
レディースドック:3~6万円
メンズドック:4~6万円

人間ドックは自由診療のため費用は基本的に全額自己負担ですが、加入している健康保険やお住まいの自治体が費用補助(助成)を行っていることがあります。各所に確認してみましょう。

人間ドックの費用補助については下記記事でも紹介しています。

人間ドックの所要時間や費用などは下記記事をご参照ください。

健康診断の費用相場

健康診断の費用負担は、加入している健康保険の種類によって異なります。

● 健康保険組合や協会けんぽなど被用者保険に加入している方(会社員など)
従業員として会社に勤めている方は、年齢を問わず会社が実施する年1回の定期健康診断を受診できます。費用は原則として会社が負担しますが、オプション検査等を付加した場合の費用は個人が負担することがあります。

● 国民健康保険に加入している方(自営業、個人事業主、フリーランスなど)
40歳以上75歳未満の方は自治体が実施する特定健診を受診できます。費用は自治体により異なりますが、多くの自治体が無料または安価に設定しています。40歳未満を対象とした健診を実施している自治体もあります。

各自治体の取り組みは下記の記事をご参照ください。

個人で健康診断を受ける場合の費用については、下記でも詳しく解説しています。

【企業規模問わず、健康診断管理のご担当者様へ】健診管理をカンタンに! サービス利用料無料&選べる医療機関は全国1,200以上「MRSO法人健診管理サービス」の詳細はこちら→

参考資料
*1.国税庁 タックスアンサー No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
*2.国税庁 医療費を支払ったとき
*3.国税庁 タックスアンサー No.1122 医療費控除の対象となる医療費
*4.政府広報オンライン 生活習慣病の予防と早期発見のために がん検診&特定健診・特定保健指導の受診を!
*5.厚生労働省 e-ヘルスネット メタボリックシンドローム(メタボ)とは?
*6.国税庁 特定保健指導に基づく運動施設の利用料
*7.厚生労働省 健康増進施設認定制度
*8.厚生労働省「指定運動療法施設の利用料金に係る医療費控除の取扱いについて(令和5年3月29日改正)」
*9.日本健康スポーツ連盟 健康増進施設 検索
*10.国税庁 温泉利用型健康増進施設の利用料金の医療費控除の取扱いについて
*11.厚生労働省 セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について
*12.国税庁 タックスアンサー No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】
*13.国税庁 タックスアンサー No.1134 取組を行ったことを明らかにする書類の具体例
*14.国税庁 タックスアンサー No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

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