健康診断

健診と検診の違いを徹底解説。自分が受けるべき「ケンシン」はどっち?

健診と検診 健康診断
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

お住まいの自治体や職場からの健康診断の案内のなかで「健診」や「検診」という文字をよく見かけます。自分が受ける必要がある「ケンシン」はどれなのか迷ってしまう方のために、それぞれの目的や行われる検査など、健診と検診の違いを詳しく解説します。

★こんな方に読んでほしい! 
・健診と検診の違いがわからず、どちらを受ければよいのか迷っている方
・それぞれなんの検査が受けられ、内容にどんな違いがあるのかを知りたい方
・なぜ健診や検診を受けなければならないのか疑問に思っている方

★この記事のポイント
・健診(健康診査もしくは健康診断)は「法定健診」と「任意健診」に、検診は「対策型検診」と「任意型検診」に大きく分けられる
・「法定健診」「対策型検診」は無料もしくは安価で受診できるが、受診に際して条件がある
・「任意健診」「任意型検診」は希望者が自由に選択し受診できるが、費用は全額自己負担が基本
・ほぼ全身のがんスクリーニングが行える任意型検診としてPET検査のほか、近年は「DWIBS(ドゥイブス)」という検査方法が注目されている
・自身の疾患リスクが「法定健診」「対策型検診」ではカバーされない場合は、人間ドックも検討しよう

健診と検診の違いとは

「健診」と「検診」は異なる

「健診」とは、健康診査もしくは健康診断の略称で、健康状態を確認し予防する総合的な検査です*1。一方「検診」とは、特定の部位や疾患の検査を行う臨床的な検査です*2。健診も検診も読み方が同じため、どちらも同じ検査をすると思っている方がいるかもしれませんが、実は異なります。

「健診」とは

健診は、健康診査もしくは健康診断の略称で、健康状態を総合的に確認する検査です。国の法律によって実施が義務づけられている「法定健診」と、個人が任意で受診する「任意健診」の2つに大きく分けられます*1。おもな健診の種類はそれぞれ下記の通りです。

【法定健診】
特定健康診査・後期高齢者健康診査・一般健康診断(定期健康診断、雇入時健康診断など)・児童生徒等の健康診断(学校健診)・妊婦健康診査・産婦健康診査・乳幼児健診など

【任意健診】
人間ドックなど

妊婦健康診査・産婦健康診査について気になる方はこちらの記事をご覧ください。

なお、以降の「おもな『健診』の種類と検査項目」の項では自治体や事業者が実施する健診などのうち、毎年多くの方が定期受診している「特定健診(特定健康診査)」「定期健康診断」「生活習慣病予防健診」「人間ドック」にフォーカスして解説していきます。

「検診」とは

検診は、がん・歯周病・結核・肝炎ウイルスなど、ある特定の疾患を早期発見するために行われる検査プログラムのことです*2。このうち、がんを調べる「がん検診」はがんによっていくつか種類があり、日本では下記の通り「対策型がん検診」と「任意型がん検診」の2つに分けられています*3

【対策型がん検診】
住民検診型とも呼ばれるがん検診のこと。集団の死亡率を下げることを目的として、厚生労働省が5種類のがん検診の指針を示しており(詳細は「おもな対策型がん検診」で解説)*4、自治体や事業者によって実施される。対象者となった場合は無料あるいは安価で受診が可能。

【任意型がん検診】
対策型がん検診以外のがん検診のこと。人間ドック型とも呼ばれ、個人が任意で受診。費用は全額自己負担

先述の「健診とは」でも、健康診断のうち任意健診として人間ドックを挙げているため、任意型がん検診の「人間ドック型」との重複に疑問を持たれる方がいるかもしれませんが、人間ドックは法的な定義が存在していません。人間ドックは、がんの早期発見も含めた総合的かつ詳細な健康診断のため、その一環に特定のがんを調べる検査が含まれています。法的な定めがなく任意で受診できる点で、任意型がん検診においても人間ドック型という表現が使用されていると考えられます。

なお、がん以外の検診は歯科検診、眼科検診、骨粗しょう症検診(骨密度検診)など呼び方がまちまちで、実施対象が集団の場合は歯科健診など「健診」と表記している自治体・事業者もあります。歯周病や緑内障、骨粗しょう症などの特定の疾患を調べる検査の場合は、実質「検診」にあたります*2。自治体・事業者によっては無料または一部補助を実施していることがあります。

「検診」について、以降の「がん検診では、どんな検査が行われるのか?」の項では、がん検診にフォーカスして解説していきます。

おもな「健診」の種類と検査項目

自治体などが実施する「特定健診(特定健康診査)」

特定健診(特定健康診査)とは、生活習慣病予防を目的とした、メタボリックシンドロームに着目して行われる健康診断です*5。検査項目は厚生労働省によって定められており、年1回の受診が推奨されています。結果により、生活習慣病の予防・改善のサポートとして特定保健指導が実施されます。

【対象者】
40歳以上75歳未満の健康保険加入者

【費用】
自治体による実施の場合は無料もしくは一部公費負担、事業者による実施の場合は所属する健康保険組合などの判断によって異なる

【基本的な検査項目】
・質問票:既往歴・服薬歴・喫煙歴等
・身体計測:身長・体重・腹囲・BMI
・理学的検査(身体診察)
・血圧測定
・血液検査:肝機能検査・脂質検査・血糖検査
・尿検査:尿糖・尿蛋白

【詳細な健診の検査項目】※一定の基準の下、医師が必要と認めた場合に実施
心電図検査、眼底検査、一部の血液検査(貧血検査・血清クレアチニン検査)

事業者が労働者に対して実施する「定期健康診断」

定期健康診断は、労働安全衛生法第66条に基づき、事業者に実施が義務づけられている一般健康診断のひとつです。事業者には常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回の定期健康診断の実施が義務づけられており、労働者側もこの定期健康診断を受ける義務があります*6

【対象者】
当該事業者のもとで労働する者(労働時間等の条件あり。パート・アルバイトを含む)

【費用】
基本的に事業者が負担(オプション検査など一部検査の費用は対象外)

【定期健康診断 (労働安全衛生規則 第44条)の検査項目】
・既往歴および業務歴の調査
・自覚症状および他覚症状の有無の検査
・身長※、体重、腹囲※、視力および聴力の検査
・胸部X線検査※ および喀痰検査※
・血圧測定
・貧血検査(血色素量および赤血球数)※
・肝機能検査:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP)※
・血中脂質検査:HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)※
・血糖検査※
・尿検査(尿中の糖および蛋白の有無)
・心電図検査※
※印の項目は医師が必要でないと認めるときは省略可

定期健康診断の検査項目は健康保険組合によって多少異なりますが、一部を除いてほぼ同じです。上記の検査項目に加えて、バリウムを用いた胃X線(レントゲン)検査や便潜血検査といった胃がんや大腸がんの検査などを追加した独自の健康診断を実施している健康保険組合もあります。

全国健康保険協会(協会けんぽ)が実施する「生活習慣病予防健診」

全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)は中小企業の従業員などが加入している健康保険です。協会けんぽでは被保険者(加入者)本人が受ける健康診断として、生活習慣病予防健診を実施しています。生活習慣病予防健診は生活習慣病の発症や重症化の予防を目的として、一般健診のほかに付加健診、一部のがん検診なども実施しています*7

協会けんぽの「一般健診(2023年度)」

一般健診は年1回の健康診断として、前述した定期健康診断(労働安全衛生規則 第44条)の検査項目に加え、胃X線(レントゲン)検査、便潜血検査などの検査が実施されます。

対象者:35~74歳の方
自己負担額:最高5,282円
検査項目:問診・診察等 、身体計測、血圧測定、尿検査、便潜血検査、血液検査、心電図検査 、胃X線(レントゲン)検査、胸部X線(レントゲン)検査、眼底検査※
※医師が必要と判断した場合のみ

協会けんぽの「付加健診(2023年度)」

付加健診は一般健診を受診する際、さらに検査項目をプラスすることで病気の早期発見や健康管理に活かすためのものです。

対象者:一般健診を受診する40歳および50歳の方
自己負担額:最高2,689円
検査項目:尿沈渣、血液検査(肝機能・腎機能など)、腹部超音波(エコー)検査、眼底検査、肺機能検査※
※新型コロナウイルス感染リスクを考慮し、一部医療施設で実施中止の場合あり

協会けんぽでは健康診断の受診費用の一部を補助しているため、被保険者の方は人間ドックで実施されるような検査を比較的安価で受けることができます。

協会けんぽの被扶養者(扶養家族)向けの健診についてはこちらの記事で紹介しています。

「任意健診(人間ドック)」の種類や検査はさまざま

人間ドックは現在の健康状態を調べて、疾患の早期発見をすることを目的として行われます。自治体や職場で実施される健診よりも検査項目が多いため、今の健康状態をより詳しく具体的に検査することができます。

人間ドックは任意健診であり、基本的な健診やがん検診の検査項目に加え、性別・年齢ごとの特有の疾患や、脳・心臓などの部位別の疾患に特化したオプション検査を選択できるなど、医療施設によってさまざまなコース・プランが用意されています。

全身をより詳しく検査することが可能となる一方、費用は全額自己負担です。お住まいの地域や職場によっては、人間ドックの助成金や補助制度が用意されており、一定条件を満たすことで費用負担が軽減できる場合もあります。

自治体の人間ドック助成金制度など、人間ドックの費用補助については、こちらの記事で紹介しています。

がん検診では、どんな検査が行われるのか?

おもな対策型がん検診

厚生労働省は「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を示し、科学的根拠に基づいた効果があるがん検診を実施するよう呼びかけています。この指針で定められているがん検診の内容は以下の通りで、「5大がん検診」とも呼ばれます*4

がん検診の種類検査項目対象年齢受診間隔
胃がん検診問診、胃X線検査(バリウム検査)
または内視鏡(胃カメラ)検査
50歳以上
*バリウム検査は
40歳以上に対し実施可
2年に1回
*バリウム検査は
毎年実施可能可
大腸がん検診問診、便潜血検査40歳以上毎年
肺がん検診問診、胸部X線(レントゲン)検査
必要に応じて喀痰細胞診
40歳以上毎年
乳がん検診問診、乳房X線(マンモグラフィ)検査
*視触診は推奨しない
40歳以上2年に1回
子宮頸がん検診問診、視診、内診、子宮頸部の細胞診20歳以上2年に1回

こうした対策型がん検診は、自治体や事業者などが集団全体の死亡率減少を目的として行うものです*3。自治体や事業者ごとに独自の取り組みを展開しており、本来は任意型がん検診(厚生労働省の指針に含まれていない検査や検診)である乳がん検診の超音波(エコー)検査や前立腺がん検診のPSA検査などを実施していることもあります。

このように対策型がん検診は、実施主体により実施されるがん検診、補助対象となる検査項目、対象年齢、受診間隔は若干異なりますが、公共的な予防対策として行われるため、無料もしくは安価で利用することができます。

おもな任意型がん検診

「任意型がん検診」は人間ドックなど、自由に選択することができるがん検診のことです。対策型がん検診と異なり、検査項目や対象年齢、受診間隔はとくに定められておらず、希望者が任意のタイミングで受診することが可能です。下記は5大がんにおける任意型がん検診の検査例です。

がん検診の種類検査の種類
胃がん検診胃がんリスク検診(ABC検査)、胃X線(レントゲン)検査、
胃内視鏡(胃カメラ)検査、腹部CT・MRI検査など
大腸がん検診大腸X線(注腸造影)検査、大腸内視鏡(大腸カメラ)検査、
下腹部CT・MRI検査、PET検査など
肺がん検診胸部X線(レントゲン)検査、喀痰細胞診、胸部CT検査、
PET-CT検査など
乳がん検診乳房X線(マンモグラフィ)検査、乳腺超音波(エコー)検査、
乳腺MRI検査、PET検査など
子宮頸がん検診子宮頸部細胞診、HPV検査、経膣超音波(エコー)検査、
骨盤MRI検査など

任意型がん検診の場合、がんの検査方法はX線検査・超音波(エコー)検査・CT検査・MRI検査・PET検査などさまざまで、人間ドックとなると、より多くの検査や高度な検査が実施される場合も多いです。自身の年齢やがん発症リスクに合わせた検査を定期的に受診することで、早期発見・早期治療につなげることが大切です。

任意型がん検診の場合、費用は全額自己負担が基本です。ただし、ある年齢から一定の割合で発症率が高まる特定のがんでは、実施主体によっては対象年齢の方に対して補助や助成を行っている場合もあります。

がん検診の費用について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

任意型がん検診の最新情報

一度にほぼ全身のがんスクリーニングが行える任意型がん検診として、PET検査があります。PET検査は放射性医薬品による被曝があることや高額であることから検査をためらう方もおり、最近では身体への負担がより少ない、全身のがん検査として「DWIBS(ドゥイブス)」という検査方法が注目されています。

ドゥイブス(DWIBS)は乳がんなど部分的ながんの探索で利用している医療施設も多く、近年は「痛くない」「恥ずかしくない」新しい乳がん検診の方法として「無痛MRI乳がん検診」とも呼ばれ、新たな選択肢に挙がっています。

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病気の早期発見・早期治療につなげるために「健診」「検診」どちらも活用しよう

自身の発症リスクが高い疾患に必要な検査が、法定健診や対策型がん検診では受けられない場合は、人間ドックの受診も検討しましょう。とくに、自覚症状がないまま病状が進行してしまう一部のがんは、定期的な検診の受診による早期発見が治癒する可能性を高めることにつながります。人間ドックの最大のメリットは、特定健康診査や定期健康診断などよりもさらに詳しい検査を行うことで、一般的な健診だけでは発見の難しい病気に気づくことができる点です。健診と検診、必要に応じて人間ドックも検討し、健康の維持・増進に役立てましょう。

参考資料
*1.厚生労働省 e-ヘルスネット 健診
*2.厚生労働省 e-ヘルスネット 検診
*3.国立がん研究センター がん対策研究所 対策型検診と任意型検診
*4.厚生労働省 がん検診
*5.政府広報オンライン 生活習慣病の予防と早期発見のために がん検診&特定健診・特定保健指導の受診を!
*6.厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」
*7.全国健康保険協会 被保険者(ご本人)の方向け「令和5年度(2023年4月~2024年3月)生活習慣病予防健診のご案内」

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上昌広
こちらの記事の監修医師

特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
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