油は悪か? 善か? 最新の研究に基づく油の健康への影響や勘違いを、アンチエイジング研究の第一人者・白澤卓二氏が解説。「いつまでも若々しさと健康をキープしたい」という願いを叶える、油との上手な付き合い方が判明。

2016.9.8

「脂肪は悪」は勘違い。良質な油が身体を救う

脂肪と炭水化物、どっちが悪?

Bottles of extra virgin olive oil, green gold of Andalusia, Spain
現在の米国の食生活指針は、総脂質を1日のエネルギーの35%以内に制限するよう推奨している。米国が1980年に低脂肪食を推奨しはじめたとき、人々はそれまでの高脂肪食品から低脂肪や無脂肪の製品に目を向け、精製された穀類や添加糖質を含んだ製品からカロリーを摂取する傾向が生まれた。しかし、その後の研究により精製された炭水化物は肥満や糖尿病を増加させることがわかった。実際、米国では炭水化物の摂取量が増えた1995年から糖尿病の患者数が3倍に増えているのだ。

重要なのは脂質の質。なかには生活習慣病を予防するものも

そもそも総脂質の摂取量に制限を設けることには、科学的根拠がないと主張する研究者もいる。最近公表された米国の食生活指針ではコレステロールの摂取制限の取り下げが話題になったが、タフツ大学フリードマン栄養科学政策研究所のダリウシュ・モザファリアン博士とボストン小児病院のデイビッド・ルートウィッヒ博士は、より重要な諮問委員会からの指摘は、総脂質の制限の解除に関する項目だったと指摘する。

最新の論文ではナッツオイルやオメガ3、オメガ9あるいは魚のような健康な脂質を豊富に含む食品をより多く摂取することは、とくに心血管疾患の保護効果を有することが明らかにされている。しかし、低脂肪肉や低脂肪食品は必ずしも健康的ではないという。ちなみに、全乳、チーズのような動物性脂質が豊富な食品は、心血管疾患には影響がなかった。

重要なのは脂質含量でなく脂質の質であるとモザファリアン博士は主張する。さらに肥満防止のためには、野菜、果物、全粒穀物、ナッツ、魚介類、豆類を増やして、肉類や砂糖、精製された穀物を減らすように摂取食品をシフトすることを推奨している。総脂質の制限を食生活の指針から解除することにより、国民がより健康的な食品を選択するようになるだろうと博士は予測している。


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Colorda編集部