「いつまでも若々しく、健康でありたい」という願いを叶えるメソッドが、最先端の研究により明らかになってきている。
今回は、コンビニで買える健康食材に注目し、世界中の研究者の研究結果を幅広く紹介。多様な理論のなかから自分に合う方法を見つけ、ぜひ実践してほしい。

2016.12.1

健康になりたければ、小麦を断て!

米国社会を蝕む肥満。その原因は小麦?

wheat and flour on the table
最近、仕事で米国を訪れる機会が多くなった。日本でも、肥満症が増えてきたと報告されているが、米国の街中で見かける米国人の肥満ぶりは尋常ではない。米国社会が肥満という疫病で病んでいるという印象を受けるのは私だけではないだろう。米国と日本の肥満症の根本的な相違点はなんなのだろうか?

米国ウィスコンシン州のミルウォーキーで予防循環器科の医師として活動するウイリアム・デイビス博士は、自らの体験から「全粒粉の小麦」にその原因があることに気づいた。彼は「小麦を断つことが健康で長生きをするための基本条件」だと、著書である『小麦腹 小麦を断てば健康になる』のなかで主張している。

「全粒粉の小麦」といえば、健康的な炭水化物の代表であるはずだ。パンを選ぶなら全粒粉のパンやライ麦パン、シリアルを選ぶなら全粒粉のシリアルを選ぶように教科書や健康本に書かれている。これを仮に日本のお米に置き換えれば、全粒粉が玄米で精製小麦粉が白米という関係。博士の主張は日本で「玄米が諸悪の根源だ」と主張するのに近いものがある。わたしも『「砂糖」をやめれば10歳若返る!』(ベスト新書)という本を出版して多くの反響を呼んだが、博士の主張が米国社会に与える影響はそれを遥かに越えるものだろうと想像する。

そもそも砂糖に中毒性があり麻薬のような作用があるのは、精製というプロセスが一因。天然食材にはどんなに甘みがあってもこれまでの長い食経験の中で中毒のような社会現象が観察されてこなかった。しかし、今回の話は全粒粉の小麦であって、精製の過程である特定の中毒性物質の濃度が濃くなったという話ではない。

小麦の何が健康に悪いのか?

それでは小麦という品種に何が起きたのであろうか? 答えは「品種改良」。実際、米国では1960年代に食べていた小麦品種は、今では市場に存在しない。現在、生産されている小麦品種は交配に交配を重ね、異種交配し、さらに遺伝子移入が重ねられた結果、獲得された品種で古来品種とは似て非なる新品種なのだ。

つまり、新品種は中毒性があり肥満症やメタボリック症候群を発症する新品種に進化したと博士は主張する。そのひとつの証拠が、小麦に含まれるグルテンというタンパク質。このタンパク質にアレルギーを示し、小腸粘膜上皮に炎症が起きてしまう「セリアック病」の患者数が、米国で急上昇している。驚くべきことに最近の報告では米国人の100人に1人がセリアック病を発症し、この頻度はこの20年くらいで急速的に増加しているという。

「小麦を断絶せよ!」が博士からのメッセージ

最後にウイリアム・デイビス博士は小麦を断つ決断について次のように述べている。「小麦という不誠実で暴力的なパートナーとの“離婚”に際して、わたしからのアドバイスは、情けをかけるな。きっぱり決別する以外に道はない」。

博士が勧める方法は「小麦切除術」。つまり直に完全にやめること。“情け”をかけると、小麦に未練が残り失敗するので、きっぱりとやめて禁断症状に耐えるほうが最終的には楽だと説いている。親切なことに博士の著書の末巻に小麦フリーのレシピー集がついているので、小麦中毒の自覚がある人は自分が小麦中毒だと気がついたその日から実践できる。


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Colorda編集部