健康診断や人間ドックの検査のなかには、生理(月経)中やその前後に受診すると正しく検査が行えない項目がいくつかあります。この記事では生理の影響を受ける検査と、生理中や生理が遅れている際に受診する場合の注意点などについて紹介します。
★こんな人に読んでほしい!
・これから健康診断や人間ドックを予約しようとしている女性
・すでに予約済みだが、生理の時期と重なりそうで不安な方
・生理中に受診してしまい、検査結果に影響がないか心配な方
★この記事のポイント
・生理中の尿検査・便潜血検査は検査結果に影響する可能性が高く、生理前後の数日も影響する場合がある
・子宮がん検診は細胞診検査で偽陰性となる可能性がある
・生理前~生理中に乳がん検診を受けるとホルモンの影響で検査時の痛みが強くなることがある
・腫瘍マーカーCA125の検査結果は生理中に高値となる可能性が高い
・生理予定日の受診予約は避け、生理と重なった場合の対応は受診先に確認する
目次
生理中に健康診断・人間ドックを受けても大丈夫?
生理(月経)中でも健康診断や人間ドックは受けられます。しかし生理の影響で正確な検査結果が得られない項目がいくつかあるため、健康診断や人間ドックにおける生理の影響を知っておくことが大切です。
尿検査、大腸がん検診(便潜血検査)、子宮がん検診(子宮頸部細胞診・子宮体部細胞診)、腫瘍マーカー検査(CA125)は生理中の経血や女性ホルモンが検査結果に影響するため、生理中は避けることが望ましいです。乳がん検診(マンモグラフィ検査)は女性ホルモンの影響からくる乳房の張りで痛みを強く感じることがあるため、生理前から生理中は人によっては避けたほうがよい場合があります。また生理前や生理後であっても、検査によっては、結果が偽陰性や偽陽性となってしまう場合があります。生理の影響を受ける検査について、詳しくは次項で解説していきます。
生理中の検査への対応は医療施設によって異なるため、事前に確認して、予約変更や一部項目のみ後日受診にしてもらうなど適切に対処しましょう。なお、学校や会社で行われる腸内細菌を調べるための検便は生理中でも実施できます*1。
健康診断や人間ドックで生理が影響する検査
尿検査で生理による影響を受ける項目は?
特定健診や法定健診における尿検査では、尿糖と尿蛋白などを調べます*2,*3。一方、任意検診である人間ドックの尿検査では上記項目に加え、尿潜血・尿沈渣・尿比重などについても調べます*4。
生理中の尿検査については、経血により尿蛋白や尿潜血、尿沈渣などの検査結果に影響があるため、生理時の検尿は避けるとしている医療施設が多いです。また、生理前3~4日、生理後5~6日は尿潜血反応の信憑性が著しく低下するとされているため*5、生理の前後数日間も避けるよう呼びかけている医療施設もあります。
尿蛋白
尿中のタンパクの有無を調べます。尿蛋白が陽性の場合、腎臓や尿路系の疾患が疑われます*6。通常、尿中に含まれるタンパクは微量です。この検査は、ほんの少量のタンパクにも反応するため、激しい運動をしたり強いストレスを感じたりしたときなど、腎臓に異常がなくても一時的に陽性と出ることがあります*7。生理中とその前後は、経血に含まれるタンパクが尿中に混入しやすいため、尿蛋白の反応が偽陽性となる場合があります。
尿潜血
尿中の赤血球(ヘモグロビン)の有無を調べます。尿潜血で陽性となった場合、尿路感染症や尿路結石、腎炎、がんなど疑われる病気は多岐にわたるため*6、年齢や状況に応じて追加検査などが行われます。尿潜血検査はわずかな血液にも反応します。生理中はもちろん、生理前3~4日、生理後5~6日は経血が混入する可能性があるため*5、検査結果に影響することがあります。
尿沈査
尿を遠心分離器にかけ、沈殿物を調べる検査です。人間ドックでは尿蛋白や尿潜血の検査結果が陽性などの場合に実施します。尿中に存在する物質はさまざまで、赤血球・白血球・上皮細胞・円柱細胞・結晶・細菌などが含まれています。これらの物質を調べることで、前段階の検査で見つかった異常がどのような疾患に由来するものかを判断します*4,*8。生理による経血が混入していると、赤血球などの量が増加することが指摘されていますが、それが尿中のものかどうかを判断することが難しくなります。
大腸がん検診(便潜血検査)は生理中に受けても大丈夫?
便潜血検査は厚生労働省が定める大腸がん検診でも用いられている方法で、便中に血液が混入していないかを調べる検査です*9。痔など肛門周辺の病気でも陽性となります。大腸がん検診の便潜血検査の方法として推奨されている免疫法(免疫学的反応)は検出感度が高く、わずかな血液も検出するため、尿検査同様、生理中は避けたほうがよいとされています。
婦人科検診は生理中でも受診できるか
子宮がん検診
子宮がん検診では、おもに厚生労働省が定める子宮頸がん検査*10を実施するのが一般的で、自治体によっては必要に応じて子宮体がん検査を同時に行う場合もあります。その際に行われる子宮頸部細胞診と子宮体部細胞診では、小さなブラシで膣内や子宮内から細胞を採取して検査します*10,*11。生理中は経血により検査に必要な細胞をしっかり採取できず、子宮がんや炎症などを見逃してしまうことで検査結果が偽陰性となる可能性があります。そのため生理中は避けたほうがよいとされています。
乳がん検診
乳がん検診は、生理による経血などが検査結果へ影響するわけではありませんが、女性ホルモンの影響で乳房が張り、マンモグラフィ検査などの際に痛みが強く出ることがあります。生理前から生理中に乳房が張りやすい方は、この期間は避けて受診するのがおすすめです。
血液検査(腫瘍マーカー検査)で生理が影響する項目は?
腫瘍マーカー検査のなかで生理が影響する可能性があるのは、おもに卵巣がんや子宮内膜症で高値となる腫瘍マーカーCA125です。CA125は、生理中や妊娠初期など性周期の影響により高値を示すことがあります*12。腫瘍マーカーCA125の検査方法は採血ですが、より正確な結果を得るためにも生理中は避けることが勧められています。
生理中や生理が遅れているときに受診する際の注意点
痛み止めなど、頭痛・生理痛の薬を服用中の場合は?
健康診断や人間ドックでは検査当日に服用してもよい薬と服用してはならない薬とがあります。市販の頭痛薬を服用する場合、健診当日の朝早い時間なら服用してよいとしている施設や、血液をさらさらにするなど薬の成分によっては検査前の数日間は控えるようにとしている施設など、医療施設によりさまざまです。受診する検査内容にもよりますので、詳しくは受診先に確認しておきましょう。
妊娠の可能性がある場合は?
予定日に生理が来ていないなど妊娠の可能性がある方は、胎児への影響を考慮して、X線(レントゲン)検査・CT検査、MRI検査、内視鏡検査、子宮がん検診、乳がん検診など受診できない検査があります。妊娠の可能性がある場合は、必ず事前に受診先の医療施設に伝えましょう。
健康診断・人間ドックと生理周期が重なってしまったときはどうすればよいか
可能であれば日程変更し、正確な検査結果を得られるようにする
生理中でも受診できるとしている医療施設もありますが、正確な検査結果が得られないこともあるため、なるべく生理周期に重ならない日程で予約をしましょう。健康診断や人間ドックで婦人科系の検査を受診する際の問診票には、生理周期や最終生理日などの記入欄もあります。日頃から自身の生理周期を把握しておくとよいでしょう。
生理は正常周期であれば25~38日、変動6日以内で繰り返されます*13。この生理周期を大きく生理期・卵胞期・排卵期・黄体期に分けたとき、経血の影響を受ける生理期と、排卵後に黄体ホルモンが増えむくみや不調が起こりやすくなる黄体期を避けた「卵胞期の後半」が、生理などの影響が少なく、健康診断・人間ドックに適した時期と言えます。

生理中の検査の可否は医療施設により異なる。事前に医療施設へ確認を
生理周期は、体調やストレスなどによって乱れることもあります。予約日と生理が重なりそうな場合、日程調整が可能か医療施設に確認しましょう。
会社や自治体の健康診断など実施日が決まっている場合は、生理中でも影響のない検査のみ受診し、影響のある尿検査や検便(便潜血検査)は後日提出、婦人科系の検査は別日に変更とすることが一般的です。対応は医療施設などにより異なるため、予約変更の可否や変更可能な期間などは事前に確認しておきましょう。人間ドック予約サイトのマーソでは、マイページから人間ドックの予約変更が可能(※)です。
※医療施設によって予約変更が可能な期限は異なります。マイページから変更ができない場合は、医療施設にお問い合わせの上、変更手続きをお願いします。
参考資料
*1.東京都食品衛生協会 東京食品技術研究所 よくある質問 検便「Q10:生理中でも検便検査やノロウイルス検査は可能ですか?」
*2.厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」
*3.厚生労働省 e-ヘルスネット 特定健康診査の検査項目
*4.日本人間ドック学会 尿検査
*5.日本腎臓学会 診療ガイドライン-第1章 検尿の現状
*6.日本予防医学協会 検査結果の見方 尿検査
*7.日本衛生検査所協会 検査と病気の関係 検査項目と疾患1 尿蛋白
*8.日本衛生検査所協会 検査と病気の関係 検査項目と疾患1 尿沈査
*9.日本医師会 知っておきたいがん検診 大腸がん検診
*10.国立がん研究センター がん情報サービス 子宮頸がん検診について
*11.国立がん研究センター がん情報サービス 子宮体がん(子宮内膜がん)検査
*12.日本予防医学協会 検査結果の見方 血液検査
*13.日本産婦人科医会 女性の健康Q&A「月経について教えて下さい。」