便潜血検査2日法とは? 精度や検査結果の見方も解説

こちらの記事の監修医師
上昌広

医師。1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

山本 佳奈
     

内科医。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

がん検診
Kit for large intestine cancer diagnosis. Coprology test.

「便潜血検査(便潜血検査2日法)」は自治体の大腸がん検診や人間ドックなどで、大腸がんの疑いがあるかどうかをスクリーニング(ふるい分け)するために実施されている検査です。この記事では、便潜血検査を受けようか迷っている方に向けて、大腸がんの危険性や便潜血検査の特徴、検査費用や採便方法などについてくわしく解説します。

また、便潜血検査の精度を踏まえたうえで、全大腸内視鏡検査(以下、大腸内視鏡検査)を受ける必要性についても詳細に解説しています。大腸がん検診で便潜血検査が陽性になった方は精密検査を受けるきっかけにしてください。

★こんな方に読んでほしい!
・便潜血検査を受けようとしている方
・便潜血検査の精度に疑問を持っている方
・便潜血検査の結果が返ってきた方

★この記事のポイント
・便潜血検査は簡便で安価な上に、がんによる死亡率低下が科学的に認められている
・便潜血検査ではすべての大腸がんを見つけることができないため、大腸内視鏡による精査も重要
・便潜血検査の費用は自費で1500円前後、自治体や健保によっては無料で受けられる場合もある
・2〜3回に分けて採便することで、便潜血検査の精度は80%以上になる
・潜血便検査で陽性になったら、必ず大腸内視鏡で精密精査を受けよう

大腸がんは増加傾向。発症リスクは40歳から上昇する

罹患数はがんのなかでもトップ。女性で最も死亡率が高いがん

大腸がんは罹患数が男女合計で28万6000人(2017年)と日本人でもっとも多いがんです*1。大腸がんによる2019年の死亡数は男性2万7409人、女性2万4000人、部位別死亡率においては、男性では第3位、女性では第1位という結果になっています*2大腸がんの死亡率は右肩上がりに増えており、男性でもまもなく胃がんを超えて第2位になることが予想されるため、非常に注意が必要な病気と言えます。

大腸がんが増えた要因のひとつは食の欧米化とされていますが、実際にはアメリカの大腸がんでの推定死亡者数は日本とほぼ同数で、アメリカの人口が日本の約2.5倍ほどであることを考慮すると日本人の大腸がん患者数がいかに多いかということがわかります*3

大腸がんの死亡率が上昇している日本とは対照的に、アメリカでは1970年から2016年にかけて大腸がんによる男女の死亡率は53%減少したと報告されています*4。アメリカの大腸がん検診では、一次検査において大腸内視鏡検査が導入されています*5。大腸内視鏡検査では、大腸がんの有無だけでなくがん細胞の切除、さらには大腸がんの芽となるポリープを検査と同時に切除します。日本では一般的な大腸がん検診の一次検診は便潜血検査、要精密検査となった際に大腸内視鏡検査を受診します。ここで問題になるのが、日本における「大腸がん検診の受診率の低さ」と「精密検査の受診率の低さ」です。

国が掲げている大腸がん検診の目標受診率50%に対して、平成28年度(2016年度)に市区町村が実施した大腸がん検診の受診率(40~69歳)は男性44.5%、女性38.5%と下回っており*6、さらに検診で陽性と判定された人のうち精密検査を受診するのは7割程度と低かったことがわかっています*7。この結果は、がんを早期発見できるかもしれない機会を多くの人が自ら逃している可能性を示唆しています。

大腸がんは初期症状がないことも多いため早期発見・早期治療が大切

大腸がんの発症リスクは30代後半から高まり、とくに男性は70代後半まで急速に罹患率が上昇するため幅広い世代の方で注意が必要です。大腸がんはある一定の大きさになると腹痛、便の変化、下血、下痢などの症状が現れますが、早期の場合には自覚症状がなく、症状が出てからでは治癒が困難になるケースもあります。

国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」のデータ(2017年)をもとに自社にて作成

大腸がんは死にいたるリスクもある恐ろしい病気ですが、ステージ0やステージIのような早期の段階で見つかった場合は、5年生存率(※)が90%以上と他のがんと比べても極めて良好です。完治の基準はケースバイケースではありますが、5年生存率はひとつの目安とされています。それを踏まえると、大腸がんは非常に高い確率で治すことができるがんと言えるため、がん検診を定期的に受診して早期発見することが重要です。

ステージIステージIIステージIIIステージⅣ
95.1%88.5%76.6%18.5%
参照:国立がん研究センターがん情報サービス「がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計 」(2010〜2011年)

※5年生存率とは?
あるがんと診断された方のうち5年後に生存している人の割合。100%に近いほど治療可能ながん、0%に近いほど治療による効果を期待するのが困難ながんであることを意味します。

まずスクリーニングのために便潜血検査を受けよう

大腸がんを早期発見するために、まずはがんの疑いがあるかどうか簡便にスクリーニング(ふるい分け)ができる「便潜血検査」を受けましょう。

便潜血検査は、いわゆる検便を行って便の中に混じった血液を検出する検査です。がんやポリープなどの病気があると、便の移動に伴って組織が擦れて大腸内に出血を起こすことがあるため、便内の出血量を調べることで大腸がんの発症リスクを判定することができます。精度をより高くするために、2日間分の便を採取する方法(2日法)が一般的です。

便潜血検査には化学法と免疫法の2種類があります。どちらも死亡率を減少させる効果が認められていますが、日本で主流なのは免疫法です。免疫学法はヒトヘモグロビン抗体と呼ばれる大腸内潜血に由来した抗体を調べる方法で、がんの診断精度(感度・特異度)が同等以上であると報告されています*8。一方、化学法は便内に含まれるヘモグロビン量を検出する方法で、欧米では広く用いられていますが、一部の食品や薬品内のヘモグロビンにも反応してしまうため、事前に食事制限や薬品制限が正しく行われていないと誤って陽性と判定されやすいというデメリットがあります。

大腸がん検診(対策型検診)の内容と検診の流れは以下の通りです。

検査対象検診方法対象者受診間隔
大腸問診および便潜血検査40歳以上年1回

便潜血検査で陽性と判定された場合は、結果説明時や書面で精密検査(大腸内視鏡検査など)を受けるように案内されます。厚生労働省の統計によると、平成28年度(2016年度)に市区町村で実施された便潜血検査で「陽性(潜血)」になった人のうち、大腸内視鏡検査などで精査をして「がん」が見つかった割合は2.77%でした*7。このように、陽性になったからと言って大腸がんというわけではありません。しかし、罹患数はがんのなかでもトップ。女性で最も死亡率が高いがんでもふれたとおり、便潜血検査で陽性になった場合は放置をせずに、出血の原因ががんではないことを大腸内視鏡検査などで必ずチェックしましょう。

大腸内視鏡検査は先端に高精細なカメラを装着した細いチューブを肛門から挿入してポリープを直接見つけ出すため、便潜血検査やS状結腸内視鏡検査よりもがんを見つける精度が高く死亡率を減少させる効果があると報告されています*8

●大腸内視鏡検査の詳細はこちら
大腸内視鏡検査の費用・検査方法とは?-気になる痛みや前日の食事についても解説

便潜血検査は優れた検査だが、万能ではない

便潜血検査(免疫法)のメリットとデメリット

便潜血検査は自宅で採便して提出するだけなので身体的な負担が少ない検査で、自治体の対策型検診に含まれているため、安価に検査が受けられるというメリットがあります。一方で、出血をともなわない大腸がんは見落とす可能性があることや、痔や生理(月経)などによる潜血も陽性と判定してしまう可能性があるということも理解しておきましょう。

【便潜血検査のメリット】

  • 身体の負荷がなく簡便に検査を受けることができる
  • 検査による副作用や事故のリスクがない
  • 検査前の食事や内服薬の制限がない
  • 大腸がんによる死亡率を下げるという十分な科学的証拠がある
  • 費用が安い
  • 検査時間が短い(自宅で便を採取するのみ)

【便潜血検査のデメリット】

  • 大腸がんが発生してから一定の大きさになるまでは発見できない
  • がんやポリープがあっても便に血が混ざらない(検査で見つけられない)場合もある
  • 痔、生理、胃潰瘍などによる潜血も陽性と判定してしまう可能性がある
  • 偽陰性(※)により発見が遅れたり見逃されたりする場合がある
  • 偽陽性(※)により精神的苦痛、精密検査に伴う副作用や事故などの不利益を受ける場合がある

※偽陰性、偽陽性とは?
偽陰性:誤って、がん疑いなし(便潜血陰性)と判定されること。
偽陰性:誤って、がん疑いなし(便潜血陰性)と判定されること。

陰性でもリスクがある方は大腸内視鏡検査を受けよう

便潜血検査は大衆のがんリスクをふるい分けするのに優れた検査ですが「便潜血検査で陰性だったから大丈夫」と言い切ることはできません。大腸がんのリスクが高い場合は人間ドックなどで大腸内視鏡検査を併用して受けることをおすすめします。

「早期の大腸がん」「小さい進行がん」「がん化する前段階の大腸ポリープ」は便潜血検査で見逃されやすいですが、大腸内視鏡検査ならがんがあれば95%以上の高確率で見つけることができると言われています*8。その上、がんが疑われる大腸ポリープがあれば、組織を採取して良悪性を調べたり、そのまま切除ができたりする場合もあるため「検査と治療が同時にできる」というメリットもあります。

下記の項目に当てはまる方は大腸がんの発症リスクが高い傾向があるので、人間ドックなどで大腸内視鏡検査を受けることを検討してみてください。

  • 40代以上の男女(とくに50代は要注意)
  • 喫煙している方
  • 大腸がんの家族歴がある方
  • 潰瘍性大腸炎やクローン病を患っている方
  • 遺伝性疾患が疑われる方(リンチ症候群、家族性大腸ポリポーシスなど)
  • 排便異常の症状がある方

上記に当てはまらない方でも、国立がん研究センターが40歳〜69歳の男性を対象に年齢、喫煙習慣、飲酒習慣、肥満度(BMI)から大腸がんリスク診断を無料で実施しているので生活習慣に少しでも不安がある方は参考にしてみてください。

ただし、「ときどき血便がある」「以前なかった便秘が最近ひどい」「ときどき下腹部痛がある」などの何らかしらの症状が既に出ている場合には、人間ドックなどではなく診察を受けて大腸内視鏡検査が必要かどうか担当医に判断を仰いでください。

●大腸内視鏡検査について知りたい方はこちら
大腸内視鏡検査の費用・検査方法とは?-気になる痛みや前日の食事についても解説

便潜血検査の費用

自費の場合の費用は1000円〜2000円前後

便潜血検査を自由診療で受ける場合の費用は、医療施設によって異なりますが1000円〜2000円前後が相場です。簡便な検査で多くの医療施設が対応しているので、人間ドックの検査項目のひとつとして含まれていたり、オプション検査として追加できたりする場合も多いです。

自治体が一部費用を負担する場合は無料〜1000円前後

厚生労働省の指針にのっとり、ほとんどの自治体では大腸がん検診の費用の一部を公費負担しています。自治体によって負担している費用は異なりますが、検診者が払う費用は無料〜1000円前後が多いです。船橋市を例に挙げると、40歳以上の船橋市民であれば大腸がん検診(問診と便潜血検査)が1年に1度500円で受けることができます*9

また、70歳以上の方、生活保護世帯、市民税非課税世帯の方は無料でがん検診を受けられる自治体などもありますので、詳しい内容を知りたい方は各市区町村のホームページやがん検診担当窓口に問い合わせてみてください※。

日本医師会「各自治体のがん検診窓口/都道府県」

社会保険や健康保険組合で補助金制度を設けている場合もある

便潜血検査を受ける前に申請すれば、加入している健康保険組合からも補助金が受け取れる場合があります。所属している団体によって費用、申し込み方法、受診条件などがそれぞれ異なりますが、医療機関を受診する前に申請を出し、医療機関を受診した際の領収書を所定の用紙に貼り付けて提出することで一部返金されるケースが多いです。被保険者だけでなく被扶養者の費用を無料となる場合や企業検診の際に追加料金を払うとオプションで受けられる場合もあります。自身が所属している社会保険の大腸がん検診への取り組みを一度調べておきましょう。

便潜血検査の採取方法と注意点

便潜血検査は2日間に分けて便を採取する「2日法」が一般的です。がんの出血は毎回便に付着しているわけではないので、1日分(1回法)の便潜血検査で大腸がんを指摘できる可能性は56%、2〜3回採便することで80%以上と言われています*10。検査の精度を高くするために、なるべく2日分の便を提出しましょう。

便の採取は自宅で行えますが、便を取るときは便潜血キットに添付されている採便方法にしたがってください。失敗しやすい点として、採便容器内の液を捨ててしまったり便にトイレの洗浄液がついてしまったりすることがあります。便潜血検査の採便方法と注意すべき点についてまとめているので、参考にしてみてください。

【便潜血検査の採便方法】

  1. 採便容器に氏名、採便日、性別、年齢などを記入する
  2. 採便スティックのキャップを回して開ける
  3. スティックで便の表面をまんべんなく複数回擦り取る
  4. スティック先端の溝に適量の便を採取する
  5. スティックを容器に戻してキャップをしっかりと閉める
正しい検査のための採便方法
東京都がん検診センターによる採便方法について説明した動画

【便潜血検査の注意事項】

  • 生理中は便の採取を避ける(生理終了後2〜3日以降の採取が望ましい)
  • 便はなるべく検査当日、前日、前々日の3日間のうちから2回(2日間)取るようにする
  • 採便後の容器は直射日光を避けて25℃以下の涼しい場所で保管する、もしくは冷蔵保存する。
  • 便秘で毎日排便がない場合は、すでに採便した容器を冷暗所もしくは冷蔵庫で保存しておく。
  • 便が硬くてスティックの溝につかない場合は、便の表面に少量の水をつけてから採取する。

便潜血検査の結果で陽性だった場合は、必ず精密検査を

便潜血検査で陽性と一度でも判定されたら、必ず大腸内視鏡などで精密検査を行ってください。肛門からチューブを挿入されること自体に抵抗のある方もいるかもしれませんが、大腸内視鏡検査は多くの人が受けている一般的な検査で、実際にチューブを入れている時間は10分前後と長くありません。鎮静剤を使うことで痛みも少ない場合が多いので勇気を出して受けてみましょう。

下記のように安易な自己判断をしてしまうと、早期発見できたはずの病気も手遅れになってしまう可能性があるため絶対にやめてください。

【便潜血検査で陽性だった場合に絶対やってはいけないこと】

  • 再度便潜血検査をして確かめること
  • 2日間の便潜血検査のうち陽性と判定されたのが1日だけだったから大丈夫だと放置すること
  • 以前に受けた検査で、陽性と判定され精密検査をしたが異常がなかったから今回も大丈夫だと放置すること
  • 出血は痔や生理によるものだと勝手に判断して放置すること

大腸がんの発症リスクは40代から増え始めるため、40歳以上の方は毎年定期的に大腸がん検診で便潜血検査を受診するようにしましょう。大腸がんは早期であれば予後が良好です。一度でも「便潜血陽性」の結果を受け取った方は必ず大腸内視鏡検査などで精密検査を受けるようにしてください。

参考資料
*1. 厚生労働省「患者調査の概況(2017年)」5.主な疾病の総患者数
*2. 厚生労働省「令和元年(2019年)人口動態統計月報年計(概数)の概況
*3. American Cancer Society「男女別がんの新規患者数と推定死亡者数」(2019年)
*4. American Cancer Society News ‘Facts & Figures 2019: US Cancer Death Rate has Dropped 27% in 25 Years’
*5. USPSTF(米国予防医療特別委員会) 大腸がん検診の推奨グレード(2016年6月)
*6. 厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査の概況」Ⅲ世帯員の健康状況
*7. 厚生労働省「平成29年度地域保健・健康増進事業報告の概況」
*8. 国立がん研究センターがん情報サービス 大腸がん検診
*9. 船橋市「各種がん検診・健康診査等のご案内」
*10. Nakama H1, Yamamoto M, Kamijo N, Li T, Wei N, Fattah AS, Zhang B ’Colonoscopic evaluation of immunochemical fecal occult blood test for detection of colorectal neoplasia. ’(1999年1月)
平成16年度厚生労働省がん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関わる研究」班「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」(2005年)
シスメックス・ジャーナル「便潜血検査による大腸がん検診」

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こちらの記事の監修医師
上昌広

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。 虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

山本 佳奈
     

1989年生まれ。滋賀県出身。医師。 2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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