脳ドック

脳ドックは何歳から? メリット・デメリットや年代別におすすめの受診頻度、費用助成についても紹介

脳ドック 脳ドック
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

脳ドックは、脳血管疾患を中心に脳の異変を調べる検査です。脳の異変の早期発見は自身の命を守るだけでなく、介護の負担を背負うかもしれない家族にも大いに関係します。本記事では脳ドックのメリット・デメリットと、年代別の受診頻度や費用助成について解説します。

★こんな人に読んでほしい!
・脳ドックを受けるか迷っている方
・脳ドックのメリット・デメリットが気になっている方
・脳ドックを受ける年齢や頻度を知りたい方

★この記事のポイント
・脳ドックは脳血管疾患など脳の異変を調べる検査
・介護が必要となるおもな原因は認知症と脳血管疾患
・脳ドックは脳の状態を画像で直接観察するため異常を早期発見しやすい
・治療が不要な動脈瘤まで見つかるケースもある
・脳血管疾患の死亡率は50代後半では25.9%、死因第3位。40代から定期的なチェックがおすすめ

脳ドックの必要性とは。検査でわかること

脳ドックは、脳の状態をチェックし、おもに脳血管疾患の有無やリスクを調べる検査です。脳血管疾患とは脳の血管トラブルによって引き起こされる病気の総称で、代表的なものが脳卒中(脳梗塞、くも膜下出血、脳出血)です。なんの予兆もなく突然症状が出現することが多く、命に危険が及ぶ可能性もあります*1

2021年度の人口動態統計によると、脳血管疾患の死因順位は第4位で、死亡数は10万人を超えています*2

<死因順位別の死亡数と死因の割合(2021年度)>

順位死因死亡数死因の割合
1位悪性新生物(腫瘍)381,497人26.5%
2位心疾患(高血圧性を除く)214,623人14.9%
3位老衰152,024人10.6%
4位脳血管疾患104,588人7.3%
5位肺炎73,190人5.1%
6位誤嚥性肺炎49,489人3.4%
7位不慮の事故38,296人2.7%
8位腎不全28,686人2.0%
9位アルツハイマー病22,960人1.6%
10位血管性及び詳細不明の認知症22,343人1.6%
※厚生労働省「令和3(2021)年人口動態統計月報年計(概数)の概況 結果の概要」をもとに編集部で作成

脳血管疾患は、発症後に命を取り留めたとしても後遺症により介護が必要になる場合があります。2019年の国民生活基礎調査によると、介護が必要となったおもな原因の2位に脳血管疾患が入っています*3

<介護が必要となったおもな原因>
1位:認知症(17.6%)
2位:脳血管疾患(16.1%)
3位:高齢による衰弱(12.8%)
※要支援1〜要介護5の総数による上位3位

脳血管疾患リスクの早期発見は、自身の命を守るのはもちろん家族の介護などの負担リスクの低減にもつながります。

脳ドックでは、健康診断や一般的な人間ドックでは調べる機会がない脳の状態をMRIやMIAで撮影(撮像)し、画像から脳血管疾患のリスクや兆候を調べる検査を行います。また、専門的な検査の追加またはプラン(コース)を選ぶことにより、認知症のリスクチェックができる医療施設もあります。

脳ドックのメリット・デメリット

どんな医療にもメリット・デメリットはつきものです。脳ドックの利点と留意しておきたい点として、下記が考えられます。

【メリット】
MRI/MRA、頸動脈超音波(エコー)、CTといった機器により脳の状態を画像で直接チェックするため、異常を発見しやすい利点があります。MRI/MRA、頸動脈超音波(エコー)による検査は被曝の心配もなく、検査自体に痛みもありません。

【デメリット】
MRIなど精密機器による検査では、破裂していない脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤/脳血管がこぶ状にふくらんだもの)が見つかることがあります。成人の2~4%に見られるとされ、未破裂の状態では無症状です*4。そのまま破裂しないこともあるため経過観察となる場合も少なくありませんが、脳動脈瘤があると診断されればどうしても心的に負担がかかるものでしょう。

また、未破裂脳動脈瘤の処置については大きさや形、場所、危険因子など複合的に判断されますが、将来的な破裂の可能性を間違いなく予測することは困難です。そのため、本来は処置が不要だった脳動脈瘤を切除した、といったことが起こらないとは言い切れません。

脳ドックは脳血管疾患の早期発見に役立つ一方で、治療が不要な異変まで見つかる場合があることを理解のうえ、納得して受けるようにしましょう。

脳ドックは何歳から? 年代別おすすめの受診頻度を解説

脳ドックがおすすめなのはこんな人

日本脳ドック学会では下記に該当する方に脳ドックの受診を推奨しています*5

・中・高齢者
・肥満気味、脂質異常症の方
・高血圧、糖尿病の方
・脳卒中、認知症の家族歴(家族・親族の既往歴)がある方
・喫煙習慣がある方

上記は将来的に脳血管疾患系のトラブルが起こりやすいとされている危険因子です。これらを踏まえ、受診頻度の目安などを年代別にみていきます。

脳疾患を経験した家族がいる方は20・30代から検討を

2021年度の人口動態統計によれば、25~39歳における死因の第5位は脳血管疾患です。死亡率(人口10万対)は25~29歳が0.6%、30~35歳では1.5%、35~39歳では3.8%と徐々に増加するものの、いずれも5%未満です*6。前述の「脳ドックがおすすめなのはこんな人」で挙げた危険因子に当てはまらなければ、あまり気にしなくても問題ありません。

ただし、若い世代でもまれに生まれつきの体質や遺伝的な要素によって脳血管疾患を発症しやすい方がいます。慢性的な頭痛がある、脳卒中を経験した血縁者がいる、頭部に影響があるスポーツをしているなどの気がかりがある場合は、一度脳ドックの受診を検討しましょう。

40代からは3~5年おきを目安に受診しよう

40代になると脳血管疾患の死因順位は第4位になり、45~49歳では脳血管疾患の死亡率(人口10万対)は12.9%まで上昇します*6。以降、年齢を重ねるにつれ脳血管疾患の死亡率は上がるため、40代に入ったら定期的にチェックしておくと安心です。

なかでも健康診断などで動脈硬化や生活習慣病について指摘されている方は注意が必要です。食生活が偏っている、味の濃い食事が多い、喫煙・飲酒の習慣がある、運動不足気味などの方は、健康的な生活を送っている人と比べると動脈硬化のリスクが高いことがわかっています。動脈硬化は脳血管疾患を引き起こす要因のひとつのため、予防には生活習慣の見直しも大切です。

脳ドックの結果、異常がなければ3~5年おきの頻度で検査を受けましょう。経過観察が必要など異常が見つかった場合は医師の指示に従いましょう。

50代以降は2~3年おき、所見がある場合は医師の指示に従い定期的に受診を

脳血管疾患の死亡率(人口10万対)は、50~54歳が19.9%、55~59歳では25.9%です。死因順位においても、55~59歳から80~84歳の年齢階級間で第3位となっています*6

50代以降は脳血管疾患のリスクに加え、大脳白質病変の程度を知る意味でも定期的な受診が望ましいでしょう。大脳白質病変とは脳の深部にある部分が血流不足により変化することで、加齢によって誰にでも起こります。進行すると認知症や脳卒中を起こりやすくなるとされていますが*7、年齢相当であれば問題ありません。脳血管疾患リスク、大脳白質病変の程度のチェックを兼ねて2~3年おきを目安に受診しましょう。脳ドックで異常を指摘された方は医師の指示に従いましょう。

脳ドックの検査内容と費用は? 助成金も要チェック

スタンダードなプラン(コース):脳血管疾患に特化した脳ドック

【費用】
1.5~2.5万円程度

【検査内容】
・頭部MRI/MRA
・頸動脈超音波(エコー)検査

この検査は何のための検査?「頭部MRI・MRA検査」
この検査は何のための検査?「頸動脈エコー検査」

【わかること】
・脳卒中(脳梗塞、くも膜下出血、脳出血)を始めとする脳血管疾患の兆候、リスク
・脳腫瘍の有無
・動脈硬化の進行具合

脳ドックの専門的なプラン(コース):認知症の簡易チェックなども含めた脳ドック

【費用】
2.5~5万円程度

【検査内容】
・頭部MRI/MRA
・頸動脈超音波(エコー)検査
・血液・生化学的検査
・尿検査
・心電図検査
・ABI(血圧脈波)検査
・簡易認知機能検査
など

この検査は何のための検査?「安静時心電図検査」
この検査は何のための検査?「血圧脈波(PWV/ABI/CAVI)」
この検査は何のための検査?「認知機能検査」

【わかること】
スタンダードなプランに加え下記。
・動脈硬化や高血圧、糖尿病など、脳卒中のリスクファクターとなる症状や発症の有無
・不整脈(心房細動)や狭心症、心筋梗塞、心筋虚血(心臓の筋肉の血流が悪いこと)
・認知症の簡易スクリーニング(認知症ドックなど医療施設によっては認知症の程度)
・脳萎縮の程度

脳ドックに利用できる助成金の有無を調べよう

自治体や保険組合によっては、脳ドックの費用を一部助成(補助)している場合があります。自営業などで国民健康保険に加入している方はお住まいの自治体へ、会社員など社会保険に加入している方は会社の総務部や保険組合に確認してみましょう。

参考資料
*1.厚生労働省 e-ヘルスネット 脳血管障害・脳卒中
*2.厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況 結果の概要」
*3.厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況」
*4.脳神経外科疾患情報ページ 未破裂脳動脈瘤
*5.日本脳ドック学会 脳ドックとは
*6.厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況 第7表 死亡数・死亡率(人口10万対),性・年齢(5歳階級)・死因順位別」
*7.日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン 2009 V.無症候性脳血管障害 1-2.大脳白質病変」

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上昌広
こちらの記事の監修医師

特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
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