人間ドックとしてのPET検査は、ほぼ全身のがんの早期発見を目的として用いられる検査で、がん細胞に薬剤が集積する仕組みを利用します。しかし薬剤が集積するのは、がん細胞だけではありません。薬剤の集積が見られた場合のがん以外の病気やその要因、認知症の早期発見を目的としたPET検査について解説します。
★こんな人に読んでほしい!
・PET検査を検討中で情報収集している方
・PET検査で異常が指摘され、がんなのかがん以外なのか心配で検索している方
・がん以外でPET検査の薬剤が集積する病気を知りたい方
★この記事のポイント
・PET検査ではブドウ糖が活発に消費されている部位に18F-FDGが集積し、色が濃く写ったり、光っているように見えたりする
・PET検査で異常が指摘されたからといって必ずしもがんであるとは限らない
・副鼻腔炎・肺炎・肝炎などの炎症、子宮筋腫・子宮内膜症・良性卵巣腫瘍などの良性の病気などでもブドウ糖代謝が活発になり、薬剤が集積することがある
・腸管蠕動(ぜんどう)亢進、人工肛門部位、月経時子宮内膜、排卵期卵巣、授乳中乳線など病気以外の要因で薬剤が集積することもある
・人間ドックで行えるがん以外のPET検査として、認知症の早期発見を目的としたPET検査(アミロイドPET)が近年注目されている
目次
PET検査は全身のがんを一度に調べられる検査としてよく用いられる
PET検査でがんを見つける仕組み
PET(ペット)検査は、Positron Emission Tomographyの頭文字を略した名称で、正式には陽電子放出断層撮影といいます*1。ほぼ全身のがんの可能性を調べる検査として有用です。がん細胞は正常細胞よりもエネルギー消費が激しく、ブドウ糖を大量に消費する特徴があります。PET検査はこの仕組みを利用した検査です。ブドウ糖に似た性質を持つ薬剤「18F-FDG (18-Fフルオロデオキシグルコース)」という放射線同位元素を注射し、がん細胞に薬剤が多く集積(集まること)する部位を特定することでがんの有無や位置を確認します。
画像上では薬剤が多く集積する部位が濃く写ったり、明るく目立っている(光っている)ように見えたりします。見え方は、医療施設が導入しているPET装置や解析プログラムなどによって異なります。
PET検査の画像の見方については、下記記事で詳しく解説しています。

PET検査のメリット・デメリット
PETはほぼ全身のがんを一度に調べられる検査です。しかしながら、現時点ではがん検診の有効性の十分な臨床データがなく、国が推奨するがん検診ではありません*1。PETをがん検診に用いる場合、他の検査を併用する「総合がん検診」が望ましいとされています*2。これらを踏まえ、PET検査のメリットとデメリットをまとめました*1,*3。
【PET検査のメリット】
・ほぼ全身のがんの有無を2~3時間程度の検査で一度に調べることができる
・がんの進行の程度を知ることができる
・がんの転移・再発を効率的に調べることができる
・18F-FDGの静脈注射後は横になった状態で撮影するだけなので、身体的負担が少ない
【PET検査のデメリット】
・PET検査が不得意とするがんがある(およそ1cm以下の小さながんや消化器官粘膜に発生する早期のがん*4、悪性度の低いがんなど)
・がんの正確な位置や形は把握しづらく、がんかどうか判断しにくい部位がある
・費用が高い
・わずかだが被曝する
・偽陽性になる(がん以外の原因でも反応が出る)ことがある
PET検査が苦手な分野と対処法については、下記記事をお読みください。

精度を高めるためにはほかの検査と組み合わせるとよい
PET検査はほぼ全身を一度に調べることができる優れた検査ではありますが、苦手とする部位(胃・腎臓・膀胱など)や精度の限度があります。PET検査による全身がん検診の精度評価に関する研究では、がん発見率は0.96%で、他のがん検診手法で報告されている数字よりも高いと結論づけられています*5。なお、厚生労働省の統計では、自治体などで実施されている5大がん検診(胃がん・肺がん・大腸がん・子宮頸がん・乳がん)におけるがん発見率は0.02~0.3%でした*6。
ただし、同研究ではPET検査のがん発見率は比較的高いとする一方で、感度(病気を持った人のうち、その所見がある人の割合)は低く、PET単独では発見されないがんも多くあるとしています*5。そのため、CTやMRI、超音波(エコー)検査、内視鏡検査など他の検査と併用することで精度の向上が期待できます。
PET検査でわかることや費用、受診の流れなどの基本情報は、以下の記事でお読みいただけます。
PET検査で異常ありだったが、がんではなかった。どのような原因が考えられる?
PET検査の偽陽性について
どんな検査であっても、100%がんを判別することはできません。また、実際にはがんでないのに「異常あり(がんの疑いあり)」の判定が出ることがあります。これを「偽陽性」と言います。
PET検査ではブドウ糖が活発に消費されている部位、すなわち、がんが疑われる部位に18F-FDGが集積します。炎症や良性疾患は、がんと同様にブドウ糖代謝が活発になることがあるため、「異常あり(がんの疑いあり)」や「陽性」と判定される場合があります。
がん以外で薬剤が集積する要因
PET検査において、がん以外で18F-FDGが集まりやすいのが炎症性疾患です。炎症が起こると、炎症部位に集まった免疫細胞の糖代謝が活発になるため、PET画像上では18F-FDGが多く集積することがあります。また、炎症以外の疾患や、正常な状態であっても集積を示すことが報告されています。18F-FDGが集積するがん以外の要因について、部位別にまとめました*2,*7。
- 頭頸部:扁桃腺炎、咽頭炎、喉頭炎、甲状腺腫、唾液腺腫瘍
- 胸部:食道炎、肺炎、結核など感染症
- 乳房:乳腺症、正常乳腺、授乳中乳腺
- 消化器系:膵炎、胃炎、大腸炎、大腸ポリープ、腸管蠕動亢進(腸管が著しく動いている状態)
- 前立腺:前立腺炎
- 子宮・卵巣:子宮筋腫、子宮内膜症、月経時の子宮内膜、良性卵巣腫瘍(チョコレートのう腫・奇形腫)、排卵後の卵巣
- その他:リンパ節炎、サルコイドーシス(肺やリンパ節、眼、皮膚など全身のさまざまな臓器に、肉芽腫と呼ばれる炎症性の組織ができる病気)*8、良性骨腫瘍
など
これらはPET検査のみで診断されるわけではなく、他の検査などもあわせて複合的に診断されます。
PET画像の配色はブドウ糖代謝の活発度を反映している
PET画像の配色は、異常の検出に役立ちます。PET画像はブドウ糖代謝の活発度を反映しているため、一般的なカラー表示では、ブドウ糖代謝の活発度が高い部位は赤やオレンジなど暖色系、ブドウ糖代謝が低下している部位は青などの寒色系の色で表示されます。がんの可能性で考えたとき、暖色系の色が濃いほどがん細胞の存在の可能性が高いと言えます。しかしながら実際には、前項で紹介した病気や一時的な状態であることもあります。
【PET画像の見え方の例】

なお、医療施設やPET検査装置、解析プログラムなどによって画像の表示方法や配色、評価基準は異なる場合があるため、詳しい画像の見方は医療施設もしくは医師に確認してください。
認知症について調べられる「アミロイドPET」とは
65歳以上の約4人に1人が認知症またはMCI
日本の認知症高齢者は高齢化にともない増加しています。厚生労働省によると、2022年の認知症・軽度認知障害(MCI※)の有病率(65歳以上)は約28%であり、65歳以上のおよそ4人に1人が、認知症またはMCIの状態にあると推計されています*9。
認知症には種類があり、そのうち約7割を占めるのがアルツハイマー型認知症です*10。アルツハイマー型認知症では、アミロイドβ(ベータ)やタウと呼ばれるタンパク質が脳内に蓄積し、神経細胞の障害や脳の萎縮が進むと考えられています*10。このアミロイドβを調べることで、アルツハイマー型認知症やその前段階であるMCIについて把握する手がかりとなります。
※軽度認知障害(MCI):健常な状態と認知症の中間。本人や家族から認知機能低下の訴えがあり、検査でも軽度の低下が認められるものの、基本的な日常生活は自立している状態*11。
認知症について詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
「アミロイドPET」はアルツハイマー型認知症の手がかりとなる検査
アミロイドPETとは、専用の薬剤を投与して画像化することで、脳内にアミロイドβプラークが一定以上蓄積しているかを、おもに陽性・陰性で評価する検査です*12。全身のPET検査と異なり、絶食は不要です*12。
アミロイドPET検査は、軽度認知障害または軽度認知症があり、アルツハイマー病が疑われる人について、抗アミロイドβ抗体薬の治療対象となるかを判断する場合などに、保険適用で行われます。また、臨床症状が非典型的で鑑別診断が難しい場合や、65歳未満で発症した軽度認知障害・認知症で確定診断が必要な場合などにも、医学的に適切な使用とされています。ただし、これらの診断目的での使用は、2025年4月時点では保険適用外です*13。
また、認知機能障害のない人への検診目的や、アルツハイマー病の臨床診断が明らかで、治療対象かどうかの判断を目的としない場合などには使用は不適切とされています*13。
認知症の検査については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。
PET検査の費用
人間ドックや脳ドックなど自由診療で受ける場合、PET検査の費用相場はおよそ10万円前後、アミロイドPETの費用相場は15〜30万円です。なお、てんかんやサルコイドーシスなどでPET検査を受ける場合は保険適用となることがあります*14。また、前述の通り、アミロイドPETにおいても保険適用となる場合があります。保険適用での受診が可能かどうかは、事前に医師や医療施設に確認するようにしましょう。
参考資料
*1.国立がん研究センター がん情報サービス PET検査とは
*2.日本核医学会、日本核医学会PET核医学分科会「FDG-PETがん検診ガイドライン第3版」(2019年)
*3.国立国際医療研究センター病院 PET-CTとは
*4.日本核医学技術学会学術委員会、日本核医学会他「がん FDG-PET/CT 撮像法ガイドライン 第2版」(2013)
*5.国立がん研究センター「多臓器を対象とした PET によるがん検診の精度評価に関する研究」(2008年)
*6.厚生労働省「令和6(2024)年度 地域保健・健康増進事業報告の概況 健康増進編」
*7.日本産科婦人科学会雑誌61巻9号(2009年)「PET 検査の有用性と問題点」
*8.難病情報センター サルコイドーシス(指定難病84)
*9.厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」
*10.政府広報オンライン 知っておきたい認知症の基本
*11.国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にする MCIハンドブック」2024年
*12.国立国際医療センター アミロイドPET
*13.日本核医学会、日本認知症学会、日本神経学会「アミロイド PET イメージング剤の適正使用ガイドライン 改訂第4版」(2025年)
*14.日本核医学会「FDG PET, PET/CT診療ガイドライン2020」








