PET検査

PET画像で濃く表示される部分はがん? PET検査の結果の見方、見つかりやすい病気、併用検査について解説

PET検査 PET検査
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

人間ドックでPET検査を受けると、多くの場合、検査結果とともに画像が送られてきます。画像に色調が濃かったり光って見えたりする部分があると、がんではないかと不安になるものですが、濃く見える部分は必ずしもがんであるとは限りません。PET検査の画像の見方やどんな場合に濃く見えるのか、より詳しく調べたい場合の検査などについて解説します。

★こんな人に読んでほしい!
・PET検査の結果報告書にある画像の見方を知りたい方
・PET検査の結果画像に、濃く見えたり光って見えたりする部分があり不安な方
・PET検査以外の検査方法を知りたい方

★この記事のポイント
・PET検査はがんの疑いがある部位を見つけるスクリーニング検査
・PET画像で濃く写っている部分があってもがんとは限らない
・なんらかの炎症が起こっている部分も濃く見えることがある
・PET検査には見つけやすいがんと見つけにくいがんがある
・「異常なし」でも不安があれば他の検査の検討を

PET検査の結果画像の見方

PET検査とは

人間ドックで行われているPET検査(PET検診)は、一度にほぼ全身のがんの可能性を調べることができる検査です。PET検査のPETは「Positron Emission Tomography(陽電子放出断層撮影)」の略で、微量の放射線を帯びたFDG(18F-フルオロデオキシグルコース)というブドウ糖に似た薬剤を注射し、その分布をPET装置で撮影します。がん細胞が正常な細胞よりも多くブドウ糖を消費する性質を利用した検査で、FDGの集まり方(集積)を画像化することで、がんの疑いがある部位やがんの大きさ、広がり、他の臓器への転移の有無などを調べます*1,*2

PET検査の画像の特徴

自覚症状のない方が、がんの早期発見を目的とした人間ドックのPET検査(PET検診)で複数部位を調べる場合、数日から数週間で結果報告書と画像がプリントまたはデータで送付されることが一般的です。

PET検査またはPET-CT検査の画像で濃く表示される部分は、FDGが集積していることを示しています。FDG集積部分の表示パターンは機器によって異なりますが、FDGの集積が多いほどモノクロ画像では黒くなり、セピア色の画像では黄白色の色調で、カラー画像では黄〜赤色の色調で光っているように表示されることが多いです。なお、結果報告書に添付される画像のパターンは医療施設によって異なります。

結果報告書の画像に上記のような色調の部位があると不安を感じるかもしれませんが、濃く見える部分はがんであると決まったわけではありませんがん以外の理由でFDGが集積されやすい部位は、次項で詳しく解説します。

また、PET検査ではすべてのがんが濃く表示されるわけでもありません。1cm未満のごく小さながんや薄く広がるがん、一部の胃がんや肺がんなどは、ブドウ糖の代謝が低く濃く表示されないことがあります*2

PET検査とPET-CT検査の違いは下記記事をご参照ください。

PET検査でFDGが集積されやすい部位

人体にはもともとブドウ糖の代謝が活発な部位があります。生理的集積といって、その部位にはPET検査の際にもFDGが集積されやすくなります。また、体内に取り込まれたFDGは腎臓から尿中へ排泄されるため、泌尿器にもFDGの集積が多く見られます*2

<生理的集積が見られやすい部位>
脳、扁桃腺、心臓、乳腺、肝臓、胃、小腸、大腸、精巣、子宮、卵巣、筋肉など

<薬剤の排泄にともない集積が見られやすい部位>
腎臓・尿管・膀胱等の泌尿器など

上記の部位が濃く表示されていても、生理的集積や薬剤の排泄にともなう集積であれば、異常とは判定されません。なお女性の場合、生理中は子宮内膜に、排卵期は子宮内膜と卵巣にFDGが集積されやすいことがわかっています*3。検査精度や、自覚のない妊娠初期の胎児への影響を考慮すると、PET検査の受診は生理中や排卵期前後は避けたほうが望ましいと言えます。

<その他、集積が見られやすい部位>
悪性腫瘍(がん)
一部の良性腫瘍
炎症(外傷、細菌・ウイルスへの感染、慢性炎症など)がある部位
など

生理的集積や排泄にともなう集積の可能性を除き、正常を超えたFDGの集積が見られた場合に異常と診断されますが、必ずしもがんとは限りません。良性の腫瘍も濃く表示されることがあります。また、炎症がある部位では免疫細胞が活発に働きエネルギーとしてブドウ糖を消費するため、FDGが集積しやすくなります。そのため、歯槽膿漏、肺炎、関節炎などの炎症も濃く表示されることがあります

PET検査でわかる病気

PET検査で見つけやすいがん・不得手ながん

PET検査はその特性上、見つけやすい傾向にあるがん、不得手な傾向にあるがんがあります。下記にそれぞれの代表的なものを挙げていますが、見つけやすいがんでも発見が困難な場合もあれば、見つけにくいがんが発見されるケースもあります。また、PET検査はがんの可能性を調べる検査であり、PET検査のみですべて確定診断ができるわけではありません。(詳細は後述の「PET検査の目的とは」で解説)。PET検査だけではなく、複数の検査法を組み合わせることで、診断における精度の向上が期待できます

<PET検査で見つけやすいがん>
・甲状腺がん
・頭頸部がん(咽頭がん、口腔がん、頸部リンパのがん等)
・肺がん
・乳がん
・膵臓がん
・大腸がん・直腸がん・結腸がん
・卵巣がん
・子宮体がん
・悪性リンパ腫
など

大腸がん、甲状腺がんは、PET検査によって比較的見つかりやすいがんです*3。甲状腺がんは厚生労働省が推奨する5大がん検診(胃・肺・乳房・大腸・子宮)に含まれていない部位であり、PET検査の有用性が期待できます。

<PET検査で見つけにくいがん>
・食道がん
・肝臓がん
・胃がん(とくに早期胃がん)
・前立腺がん
・子宮頸がん
・腎臓がん
・膀胱がん
など

PET検査で見つけにくいのは、FDGを集積しないごく小さながんや粘膜の表面にできたがん、ブドウ糖代謝が活発ではないがん、排泄のためにFDGが集積する部位(腎臓、尿管、膀胱など)に存在するがんなどです。不得手な部分をカバーし検査精度を高めるために、内視鏡検査や超音波(エコー)検査など、がんの疑いがある部位に適した検査と組み合わせて行うことが望ましいとされています*3

PET検査で見つけやすいがん以外の病気

PET検査はがんだけでなく、下記のような病気の診断にも用いられています*2

・てんかん
・脳血管疾患(脳梗塞)
・脳腫瘍
・虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
・心サルコイドーシス(心臓に肉芽腫ができて不整脈を起こす病気)
・大型血管炎(高安動脈炎、巨細胞性動脈炎)
・アルツハイマー型認知症
など

人間ドックで受けるPET検査は保険適用外のため、基本的に全額自己負担(10万円程度)ですが、てんかんや心疾患、大型血管炎の診断のために受けるPET検査は、一定の条件下で保険適用となることがあります*4。また、早期胃がんを除く悪性腫瘍(がん)と悪性リンパ腫では、すでにがんの診断を受けているものの、他の画像診断では病期や転移、再発の診断ができない場合に保険適用となります*4。なお、アルツハイマー型認知症を診断するためのPET検査は保険適用外です(2023年2月現在)。

PET検査の目的とは

PET検診の目的はがんのスクリーニング

人間ドックで行われるPET検診の目的は、全身を大まかに検査して、がんが疑わしい部位がないかを調べることです。PET検診のみですべてのがんの確定診断がされることはありません。がんの可能性が高いと疑われる部位があった場合は、それが悪性腫瘍(がん)なのか、良性の腫瘍なのか、あるいは炎症を伴う別の病気なのかを調べるために、その部位に合わせたより詳細な検査を行っていくのが一般的です。また、PET検査では見えにくいがんもあります。次項では、PET検査と組み合わせて実施されることの多い検査を部位ごとに紹介します。

PET検査と併用して実施される検査

PET検査を行っている人間ドックでは「総合PET検診」などの名称で、あらかじめ複数の検査を行うこともあります。PET検査単独での結果は異常なしだったが念のため詳しく調べたい部位がある方は、別の検査の必要性などについて医師に相談してみましょう。下記は診断精度の向上のために、PET検査と併用されている検査の一例です*5。下記の検査の多くは、人間ドックのオプション等で受診できます。

例)
脳腫瘍:脳MRI
頭頸部がん(咽頭がん、口腔がん、頸部リンパのがん等):甲状腺超音波(エコー)、頭頸部・甲状腺CT、頭頸部・甲状腺MRI
胃がん:上部消化管内視鏡(胃カメラ)、ペプシノゲン(血液検査)、ピロリ菌検査
肺がん:胸部X線(レントゲン)、胸部CT、喀痰細胞診
乳がん:乳腺超音波(エコー)、マンモグラフィ、視触診
肝がん・膵がん・胆のうがん:腹部超音波(エコー)、腹部CT、腹部MRI
大腸がん:便潜血、大腸内視鏡(大腸カメラ)
子宮がん・卵巣がん:子宮頸部細胞診、経膣超音波(エコー)、女性骨盤CT、女性骨盤MRI
前立腺がん:前立腺超音波(エコー)、男性骨盤MRI(前立腺MRI)、PSA(血液検査)
など

※胃X線(レントゲン)検査は1週間以上の日数をおく必要があるため、PET検査と同時には行えません。
※がんが疑われる部位に合わせて、CEA・AFP・CA19-9・SCCなどの腫瘍マーカーによる検査が併用されることもあります。

PET検査で「異常なし」。次の検査の受診時期はいつ?

PET検査の適切な検診間隔についてのエビデンスは確立されていません。異常がなかった方は、次の検査を受ける目安は1~2年後としている医療施設が一般的です*3。前述のようにPET検査だけでは見つけにくいがんもあることを踏まえ、PET検査と消化管内視鏡検査を1年おきに交互に受診することを推奨している医療施設もあります*3。自身の年齢や生活習慣、厚生労働省が推奨する5大がん検診との兼ね合いなどを勘案し、医師と相談して決めましょう。気がかりな症状がある場合には、定期検診を待たずに医療施設を受診しましょう。

PET検査で「異常」を指摘されたら

PET検査で異常ありの判定結果となった場合、がんの可能性を考え誰もが大きな不安を感じることでしょう。しかし、これまで伝えてきたように、PET検査では良性の腫瘍やなんらかの炎症が異常とみなされることもあります。また、万が一がんであっても、早期発見により適切な治療を受けることができれば、命を脅かされずにすむ可能性が高くなります。異常ありの判定となった原因を知るためにも、できるだけすみやかに再検査や精密検査を受けましょう。不安をまぎらわすヒントは下記記事をご参照ください。

参考資料
*1.国立がん研究センター がん情報サービス PET検査とは
*2.国立国際医療センター病院 PET-CTとは
*3.日本核医学会、日本核医学会PET核医学分科会「FDG-PETがん検診ガイドライン第3版」(2019年)
*4.日本核医学会「FDG PET,PET/CT 診療ガイドライン2020」
*5.日本核医学会PET核医学分科会 2009年度FDG-PETがん検診アンケート調査の結果報告(概要) 「別表2」

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上昌広
こちらの記事の監修医師

特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
PET検査
人間ドックのミカタ
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