PET検査

【がん検査】PET検査とは? 費用、保険適用の要件、注意点をわかりやすく解説

PET検査 PET検査
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

PET検査はほぼ全身のがんを1回で調べるのに優れた検査で、全身のがんが心配な方、どこを重点的に調べればいいのかわからない方におすすめの検査です。がんの検査を検討されている方に、PET検査のメリットとデメリット、費用、保険適用となるケース、検査の流れや注意事項などについて解説します。

★こんな人に読んでほしい!
・50歳以上の方
・身内ががんになった方
・PET検査の費用や保険適用要件について知りたい方

★この記事のポイント
・PET検査は、ほぼ全身のがんを一度に調べられる検査
・がんが存在する部位だけでなく、がんの大きさや進行の程度もわかる
・PET検査で見つかりやすいがんと見つかりにくいがんがある
・PET検査は微量の放射線を用いる検査。メリットとリスクを把握しておこう
・PET検査の費用は10万円程度。加入している健康保険や自治体によっては、PET検査の費用を抑えることができる

PET検査とは

PET検査の仕組み

PET(ペット)検査は、Positron Emission Tomographyの頭文字を略した名称で、正式には陽電子放出断層撮影といいます。一度の検査でほぼ全身のがんを調べられるのが大きな特徴です*1

PET検査は、微量の放射線を放出する陽電子の薬剤(放射線同位元素)を静脈注射などで体内に投与し、体内に集積した部分から出る放射線をPET装置で検出して画像化します。PET検査にもっともよく使われている放射線同位元素は「18F-FDG (18-Fフルオロデオキシグルコース)」という物質で、ブドウ糖に似た性質を持っています*1

がん細胞は正常細胞よりもエネルギーの消費が激しいという特徴があり、エネルギー源となるブドウ糖をより多く取り込みます。そのため、18F-FDGを体内に投与すると、がん細胞のある部分に多く集まります。その状態でPET検査を行い、18F-FDGが放出する放射線を検出することで、がん細胞の存在を調べる仕組みです*1。なお、確定診断は内視鏡検査やCT検査、MRI検査、細胞診なども組み合わせて行われます。

PET検査で得られる画像上では、放射線を放出している部分はほかの部分よりも明るく目立って見えるため、がんが疑わしい部分を知ることができます。また、大きさ、進行の程度も調べることができるため、がんの広がりや治療効果の判定、再発や転移を調べる際などにもPET検査が行われます。近年ではPET検査とCT検査を組み合わせ、より精密な検査が可能となった「PET-CT検査」が主流となっています*1

全身PET検査のほか、乳房に特化したPET検査(PEM検査)もあります。詳細は下記記事で解説しています。

被曝がなく、より身体に負担の少ない全身がん検査「DWIBS(ドゥイブス)」については下記記事をご覧ください。

PET検査のメリット、デメリット

PET検査のメリットとデメリットには次のようなものがあります。

【PET検査のメリット】

  • ほぼ全身のがんの有無を一度の検査で調べることができる
  • がんの進行の程度を知ることができる
  • がんの転移・再発を効率的に調べることができる
  • 18F-FDGによる副作用はほとんど報告されておらず、身体的負担が少ない
    など

【PET検査のデメリット】

  • サイズの小さながん(およそ1cm以下)は検知できない可能性がある
  • 正確な位置や形を把握しづらく、がんかどうか判断しにくい部位がある
  • 費用が高い
  • わずかだが被爆する
    など

PET検査のみですべてのがんの可能性を調べることはできません。後述する「PET検査で見つかりやすいがんと見つかりにくいがん」を知っておき、PET検査が不得手な部位はほかの検査を組み合わせることで、検査精度の向上が期待できます。

PET検査とPET-CT検査の違い

PET検査は18F-FDGががん細胞に多く集まりやすい特性を利用した画像検査です。このPET検査にCT検査(X線で臓器の形状など身体の内部を撮影する検査)を組み合わせたのがPET-CT検査です。18F-FDGが集まる様子と臓器の形状を重ね合わせた3次元的な画像を生成することで、より診断の精度が向上し*1、かつ検査時間の短縮も可能となりました。近年ではPET単体の検査よりもPET-CTによる検査が主流となっています。

PETとPET-CTの違いは、下記記事で詳しく紹介しています。

PET検査の精度

「FDG-PETがん検診ガイドライン第3版」によれば、2006~2009年に全国233施設で実施された15万5456例の各種がん検診のうち、最終的にがんが発見されたのは1912例(検診の1.23%)でした*2。このうち18F-FDGを用いたPET検査で陽性と判定されたのは15万5456例中1491例(検診の0.96%)で、精密検査を受けてがんが発見された割合(陽性的中率)は32.3%でした*2

さらに、PET検査で発見されたがんのうち、陽性率が高かったのは甲状腺がん90.7%、肺がん86.8%、大腸・直腸がん85.9%、乳がん84.0%あり、発見されたがんはステージIがほとんどを占めていたとしています。

他方で、サイズの小さいがんや尿路周辺のがん、18-FDGの取り込みが少ない高分化がんなどは、PET検査の結果が偽陰性(陽性であるのに陰性と判断されること)になる傾向があったとのことでした。

なお、18-FDGはがん以外の病気に反応する場合もあります*1。PET検査で目立っている部分のがん以外の病気の可能性については下記記事で解説しています。

PET検査でどこまでわかる? 見つかりやすいがんと見つかりにくいがん

PET検査はほぼ全身のがんを一度の検査で調べられる検査ですが、すべてのがんが見つかるわけではありません。前述のとおり、部位などによって精度が異なります。PET検査で見つかりやすいがんと見つかりにくいがんの例が下記です*1,*2

【PET検査に向いているがん】
甲状腺がん、頭頸部がん(咽頭がん、口腔がん、頸部リンパのがん等)、肺がん、乳がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん、子宮体がん、悪性リンパ腫 等

【PET検査に不向きながん】
食道がん、肝臓がん、胃がん(とくに早期胃がん)、前立腺がん、子宮頸がん、腎臓がん、膀胱がん 等

PET検査に不向きながんの場合、胃内視鏡(胃カメラ)検査、CT検査、MRI検査、超音波(エコー)検査などの併用によって、精度の向上が期待できます。

PET検査で見つかりやすい・見つかりにくいがんとその理由は下記記事で詳しく解説しています。

PET検査の結果の見方や併用検査についての詳細は下記記事をご覧ください。

PET検査の費用

PET検査の費用相場は10万円

自覚症状のない方が、がんの早期発見や発症リスクの把握を目的として人間ドックなどでPET検査を受ける場合、自由診療となるため保険適用外になり、費用は全額自己負担です。PET検査の費用は医療施設によって異なりますが、相場は10万円前後です。なお、PET-CTの費用相場も10万円前後で、PET検査とほぼ同じです。

PET検査は保険適用になる?

人間ドックやがん検診が目的でのPET検査は保険適用外ですが、がんにかかっている方の転移状況やがん治療効果の判定、再発の診断などの際に行われるPET検査は一定の条件下で保険適用となります*3

【一定の条件下で保険適用となる疾患*3

  • がん(早期胃がんを除く)、悪性リンパ腫:ほかの検査・画像診断による病期診断・転移、再発の診断ができない場合
  • てんかん:難治性部分てんかんで外科切除が必要な場合
  • 心疾患:虚血性心疾患よる心不全の方の心筋バイアビリティ診断/心サルコイドーシスの診断(いずれもほかの検査で診断がつかない場合)
  • 高安動脈炎等の大型血管炎:ほかの検査で病変の局在又は活動性の判断がつかない場合

保険適用となるPET検査の費用目安は下記です。

  • 1割負担:10,000〜12,000円
  • 2割負担:20,000〜24,000円
  • 3割負担:30,000〜36,000円

※初診料、再診料などを除く

PET検査は高額療養費制度の対象になる?

高額療養費制度は、ひと月の医療費が一定の額以上になった場合に超過分が支給される制度です*4。ここで言う医療費とは「保険適用での診療に対し患者が支払った自己負担額」です。人間ドックなど、自由診療で受けたPET検査の費用は高額療養費制度の対象にはなりません。前述の要件を満たしており、かつひと月の医療費が一定額以上の場合に対象となります。ひと月の上限額は年齢(69歳以下もしくは70歳以上)、所得によって異なります。

<69歳以下の上限額*4

年収ひと月の上限額(世帯ごと)
約1,160万円~252,600円+(医療費-842,000)×1%
約770~1,160万円167,400円+(医療費-558,000)×1%
約370~770万円80,100円+(医療費-267,000)×1%
〜約370万円57,600円
住民税非課税者35,400円
※ひと月に複数の医療施設(院外処方代含む)にかかった場合、それぞれの自己負担額を合算可
※ひと月に同じ医療保険に加入している家族が各窓口で支払った自己負担額を合算可

<70歳以上の上限額*4

年収ひと月の上限額(世帯ごと)外来でのひと月の
上限額(個人ごと)
約1,160万円~252,600円+(医療費-842,000)×1%
約770~1,160万円167,400円+(医療費-558,000)×1%
約370~770万円80,100円+(医療費-267,000)×1%
約156~370万円57,600円18,000円
(年144,000円)
II 住民税非課税世帯24,600円8,000円
I 住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下など)
15,000円8,000円
※ひと月に複数の医療施設(院外処方代含む)にかかった場合、それぞれの自己負担額を合算可
※ひと月に同じ医療保険に加入している家族が各窓口で支払った自己負担額を合算可

自治体や健康保険組合等によっては高額療養費制度のほかに独自の助成制度等を設けており、より自己負担額が軽くなる場合もあります。詳細はお住まいの自治体や加入している健康保険組合等に問い合わせてください。

なお、年間で一定額以上の医療費を支払った場合、確定申告によって所得控除が受けられる「医療費控除」がありますが、がんの予防や早期発見を目的としたPET検査は医療費控除も原則的に対象外です*5。ただし、例外もあります。人間ドックの費用が医療費控除の対象となるケースについては、下記記事で解説しています。

加入している健康保険組合等によって費用が抑えられる場合がある

会社員やその家族の場合、加入している健康保険組合等によってはPET検査の費用の一部を助成していることがあります。自営業など国民健康保険に加入している方は、自治体によっては人間ドックの受診費用の一部助成を実施している場合があります。助成の有無や、人間ドックでPET検査を受けた場合も適用されるかどうかについては、お住まいの自治体に問い合わせてください。

主要都市のがん検診・人間ドック費用助成などの取り組みを見る

検査を受ける上での注意事項

PET検査の流れと検査時間

PET検査の所要時間は、全体で2〜3時間程度です。以下は検査の大まかな流れです*1

  1. 検査着に着替え、問診後、18-FDGを注射する
  2. 18-FDGを全身に行き渡らせるため、1時間ほど安静にする。安静中は会話を避ける
  3. PET装置に横たわり、検査開始(20~40分程度)
  4. 検査後、薬剤の影響が減るまで30~40分ほど待機
  5. 着替えて終了

なお、医療施設によっては検査の精度を上げるために時間を置いて2回撮影する場合があります。

検査結果が判明するまでに要する日数は医療施設によります。専門医が在籍している医療施設では、検査当日に結果説明が行われることもあります。

PET検査の流れや所要時間、安静時間の過ごし方については下記記事で詳しく紹介しています。

検査前の注意点

PET検査の受診前にはいくつか準備が必要です。注意点を含め、以下にまとめます。

【運動】
前日から激しい運動を避けます。運動をすると、筋肉がエネルギーを消費してブドウ糖を取り込もうとします。そのためPET検査の際に18-FDGが筋肉に多く集まりやすくなり、正しい評価が難しくなることがあります。

【食事】
食事による糖分の影響を小さくするため、検査予定時間の4~6時間前から絶食します。糖分を含む飴やガム、飲料なども不可です。

【飲み物】
絶食中は、糖分を含まない水やお茶はなどの水分は積極的に摂りましょう。

【服薬】
糖尿病の方は一時的に服薬を中止することがあります。その他、常用している薬の服用については事前に担当医や医療施設に確認しておきましょう。

検査後の注意点

検査で使用する18F-FDGは、微量の放射線を含む薬剤です。検査終了後は18F-FDGを早く排出するため、水分を多くとって排尿を促しましょう。検査後の尿には放射線が含まれているため、排尿後にはしっかりと手洗いをすることが大切です。日常生活に制限はありませんが、むやみに人混みに行くことなどは避けましょう。

また、胎児や子どもは放射線の影響を受けやすいため、妊娠中の方や子どもにはできるだけ近づかないようにしましょう。授乳は24時間、赤ちゃんとの触れあいは可能であれば12時間ほど控えることが望ましいです。

PET検査の副作用

PET検査で注射する18F-FDGについて、副作用はほとんど報告されていません*1。もし検査後になんらかの不調を自覚したら、すみやかに医療施設に問い合わせてください。

なお、18F-FDGは放射線を含む薬剤のため、微量の放射線被曝があります。1回のPET検査(単体)における放射線量はおよそ3.5mSv(ミリシーベルト)です*6。日本で日常生活を送っていて自然界から受ける放射線量は年間およそ2.1mSv*7、人の健康に影響を与える放射線量は100mSv以上とされています*6

近年主流となっているPET-CT検査は、PET検査にCT撮影が付加されることによって5~14mSv程度と考えられています*6。PET検査を受診する際は、検査を受けるメリットと被爆リスクの説明を医療施設から受け、納得のうえで受診しましょう。

PET検査の注意点は下記記事でも詳しく解説しています。

PET検査が受けられる医療施設選びのポイント

PET検査は、すべての医療施設で受けられるわけではありません。PET検査の装置を導入するためには、施設の設備やほかに必要とされる機器の整備など、さまざまな条件を満たす必要があります。そのためPET検査を受けられる医療施設は限られています。

医療施設を選ぶときは、「PET核医学認定医」「核医学専門医」が在籍しているかどうかを確認してみましょう。PET核医学認定医、核医学専門医は核医学診療の技術が高く、放射線物質を安全に管理することができると認められた医師が取得できる資格です。また、日本核医学会PET核医学分科会に登録されている施設であるか否かもするとよいでしょう*8

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参考資料
*1.国立国際医療研究センター病院 PET-CTと
*2.日本核医学会、日本核医学会PET核医学分科会「FDG-PETがん検診ガイドライン第3版」2019年
*3.日本核医学会「FDG PET, PET/CT診療ガイドライン2020」
*4.厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ
*5.国税庁 医療費を支払ったとき
*6.日本核医学会、日本アイソトープ協会「改訂4版 PET検査Q&A」2019年
*7.環境省 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
*8.日本核医学会PET核医学分科会「PET&PET」PET施設一覧

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