健康診断

知っておきたい健康診断前日の注意事項まとめ―食事、お酒、たばこの制限はいつから?

健康診断前日の注意事項 健康診断
石田 二郎
こちらの記事の監修医師

医療法人永仁会 理事長 Seeds Clinic 新宿三丁目 院長

多くの方が毎年受ける健康診断。正しい検査結果を得るために、健診前日の過ごし方にはいくつかの決まりごとがあります。この記事では、健康診断の前日と当日の注意事項やその理由、よくある質問を紹介します。

★こんな人に読んでほしい!
・健康診断を受ける予定がある方
・健診の前日に暴飲暴食した方(焼肉、ラーメン、お酒など)
・喫煙者で健診を受ける予定がある方

★この記事のポイント
・正確な検査結果を得るためには、注意事項を守りつつ普段通りの生活を心がけよう
・健診前日の夕食は21時ごろまでを目安に。朝食は抜くのが基本
・健診前日は禁酒、当日は少量の水のみにする
・もし注意事項を守れなかった場合は、医療施設へ正直に申告する

病気を見逃さないために、健康診断前は普段通りの生活を心がけることが大切

年1回の健康診断の前に、よい数値を出したくて急場しのぎの極端な食事制限や運動をした、あるいはしようと考えている方は少なくないかもしれません。しかし、その行動によって正確な検査データが得られず、本来は不要な再検査や精密検査の指示を受けたり、病気や兆候を見逃したりする可能性があります。

健康診断は、現在の身体の状態を正しく把握し、病気の早期発見や病気そのものの予防につなげることが目的です*1。前日だからといって特別なことはせず、むしろ普段通りの生活をしたうえで健康診断を受けることが、本来の目的である「いまの身体を正しく把握する」ことにつながります。

一方で、正確な検査結果を得るためにはいくつかの決まりごともあります。多くの場合、事前に医療施設から健康診断前の過ごし方についての指示があるので、普段通りの生活をしつつも注意事項はできるだけ守るよう心がけましょう。

健康診断前日の注意事項

午前受診の場合、前日の夕食は21時ごろまでを目安に

健康診断の血液検査は一般的に、10時間以上絶食した状態での採血が想定されています。参考として、多くの医療施設では午前受診の場合は前日21~22時ごろまでに夕食をすませるよう呼びかけています。午後受診の場合の前日の夕食時間は、制限を設けていない医療施設がほとんどです。

前日の食事は血液検査の「中性脂肪」に影響します。夕食に脂身の多い肉など脂質の多いものを食べ過ぎると中性脂肪の数値が高くなるため、脂っこいものは避け、消化のよい食事が望ましいとする医療施設もあります。ただし、いまの身体の状態を把握する意味では、あまり意識しすぎず、普段通りの食事を心がけるとよいでしょう。

ヨーグルトやチーズといった乳製品は胃の粘膜を覆うため、レントゲン撮影に影響する可能性があります。胃X線(バリウム)検査を受ける場合は、前日の夕食での摂取は控えましょう。そのほか、オプションなどで胃内視鏡(胃カメラ)検査や腹部超音波(エコー)検査などを受ける場合、医療施設から食事の内容をより詳細に指示されることがあります。スムーズかつ正確な検査が受けられるよう、指示に従いましょう。

健康診断の前日は禁酒を

アルコールは血液中に溶け込み肝臓で代謝され、腎臓でろ過されて尿として排出されるため、血液検査の肝機能や中性脂肪、血糖、尿酸の数値に影響を及ぼす可能性があります。正確な検査データを得るため、多くの医療施設では前日は禁酒としています。

また、アルコールの代謝には個人差があり、人によって影響が持続する期間が異なります。基本的に高齢であるほど代謝に時間がかかるため、自身の年齢や体質などを考慮しつつ数日前から飲酒量の調整を意識しましょう。前日にうっかり飲酒した場合は、医療施設へ申告しましょう。

前日の悪あがきとしての過度な運動は控えよう

激しい運動は、血液検査の肝機能や腎機能の値に影響を及ぼすことがあります。肝機能は「ALT」と「AST」の値で表され、このうちASTは筋肉にも含まれています。激しい運動をするとASTの値が上昇するため、健診で肝障害を疑われる可能性があります。また、腎機能を表す「尿蛋白」も運動の影響を受けやすい項目です。過度な運動で体内の血液が筋肉に集中すると尿蛋白が過剰に排出され、腎障害が疑われる要因のひとつとなります。

とくに普段運動をしていない方は、軽い運動でも検査に影響しやすくなります。検査前の悪あがきで運動を始めても検査結果は改善しにくく、むしろ検査精度の低下につながることもあります。ただし、普段から運動習慣がある方は意識的に控えなくても問題ありません。いまの身体を正しく把握するためには、あくまで通常通りの生活を心がけることが大切です。

健康診断当日の注意事項

健診当日は朝食抜きが基本

当日の食事は「中性脂肪」と「血糖値」と関わりがあるため、午前受診の場合は朝食をとらずに受診しましょう。検査が午後の場合は、午前7時ごろまでに食パン1~2枚程度の軽い食事をとってもよいとしている医療施設がほとんどです。アメやガムは血糖値に影響するため、午前、午後受診どちらの場合も検査が終わるまでは控えましょう。

当日は少量の水のみOK。朝のコーヒーはNG?

当日の水分摂取は、検査の2時間前までにコップ1~2杯程度の水が目安です。ただし、胃X線(バリウム)検査の場合、バリウムの希釈を避けるため飲水禁止としていることがあります。医療施設の指示を確認しましょう。

コーヒーや緑茶、紅茶などのカフェインを含む飲料は、腎機能検査の値に影響する可能性があるため避けましょう。また、ジュースや砂糖入りのコーヒーなどの糖分を含む飲料は血糖値に影響があり、牛乳やカフェオレといった乳製品を含む飲料も検査に差し障る可能性があります。以上のことから、健診当日は水以外の飲み物は避けたほうがよいでしょう。

加熱式たばこもNG。健診当日は必ず禁煙を

喫煙は血圧の値に影響するため、健診当日は加熱式たばこも含め、必ず禁煙しましょう。たばこに含まれるニコチンには血管を収縮させる作用があり*2、血圧が高くなりやすいことから、当日の喫煙は避けましょう。また、IQOS(アイコス)やglo(グロー)などの加熱式たばこは、たばこの葉を加熱しニコチンを染み出させて吸う仕組みです*3。紙たばこと同様にニコチンが含まれているため、当日の禁煙が必要です。

また、胃X線(バリウム)検査を受ける方は、喫煙による胃酸の分泌でバリウムが胃に付着しづらくなる可能性があります*4。正しい検査結果を得るためにも、当日は必ず禁煙しましょう。

健康診断前のよくある質問

糖質制限ダイエットは健診前にしないほうがいい?

糖質制限は、血液検査の血糖値に影響を及ぼします。過度な糖質制限を続けると検査で正しい結果を得られなくなるため、健診前は避けたほうがよいでしょう。

検査結果の血糖値を下げたい目的で、前日だけ糖質制限をするなどの行為も控えましょう。血糖を表す検査値は「血糖値」と「HbA1c」の2種類があり、HbA1cは過去1~2ヶ月間の血糖の状態を表します*5。検査前だけ糖質制限をしても検査結果には反映されないため、通常通りの食事をとるようにしましょう。

健診前にプロテインを摂っても問題ない?

プロテイン飲料は腎機能の数値に関係します。プロテイン飲料に多く含まれるタンパク質は、体内で分解されて「尿素窒素(BUN)」となり腎臓から排出されます。尿素窒素の値が大きいと腎機能の低下が疑われるため*6、日頃プロテインを飲む習慣のない方は健診前のプロテイン飲料の摂取は避けたほうがよいでしょう。日常的にプロテインを摂取している方は、事前に摂取の可否について医療施設へ問い合わせましょう。

食物繊維たっぷりの食事、健診前日はNG?

キノコやゴボウなどの食物繊維が多く含まれる食べ物は、消化しきれず胃や腸に残ることがあります。食物繊維は積極的に摂りたい栄養素ではありますが、健診前日は避けたほうがよいでしょう。

生理時に健康診断は受けられる?

生理中に健診を受けると、尿検査、検便(大腸検査)、子宮がん(子宮頸がん)検診などの検査に影響します*7。尿や便に血液が混じるとそれが生理によるものか、病気によるものかが判断しづらいため、検尿や検便は後日提出とする医療施設がほとんどです。二度手間を避ける意味でも、生理時の受診は避けたほうが無難と言えます。生理と受診日が重なりそうであれば、受診日の変更が可能か医療施設に問い合わせてみましょう。

前日の性行為はOK?

男性は、性行為後に尿検査を行うと尿蛋白が陽性になりやすいため、前日の性行為は避けましょう。男性の精漿(精液の精子以外の液体部分)にはタンパク質であるアルブミンが含まれており、とくに性行為後の最初の尿は陽性とされる可能性があります*8。女性は避妊具を使うことで、尿蛋白検査への影響は避けられます。男性も女性も、尿検査の際には必ず中間尿を採尿しましょう。なお、中間尿とは一度の排尿の中で少し出したあとの尿のことで、尿道や陰部の雑菌混入を防ぐ目的で推奨されています。

薬やサプリを前日に服用してもいい?

医師から毎日飲むように指示されている薬は、通常通り服用してください。健診当日の朝に飲む薬は、検査の2時間前までに服用しましょう。ただし、糖尿病の飲み薬やインスリン注射は低血糖を起こすリスクがあるため、事前にかかりつけ医や医療施設に確認しましょう*9

ビタミンサプリメントの内服は、尿検査の結果に影響するため検査の2~3日前から中止しましょう。ビタミンCにより糖尿病の有無を診断する「尿糖検査」の結果が正しく判定されない可能性があるためです。

そのほかのサプリメントは食事と同じ扱いとして、検査前日の夜(21時以降が目安)と検査当日は、内服を中止しましょう。睡眠前に内服するサプリなど21時以降に服用が必要なサプリは、事前に医療施設へ確認しましょう。

決まりごとを守れなかった場合は正直に申告

健康診断前日の暴飲暴食や当日の喫煙など、注意事項を守れなかった場合は、正直に医療施設まで申告しましょう。検査結果に影響する可能性があると判断された場合、受診日程の変更を指示されることもあります。

健康診断は自身の身体の状態を把握する大切な機会です。検査の数値をよくしたい、再検査に引っかからないようにしたいなどの気持ちも理解できますが、急場しのぎの対策をすることで正確な検査データが得られなかったとしたら、本末転倒と言えます。検査結果を正しく評価するためには、健康診断の前だからといって特別なことはせず普段通りの生活を心がけ、そのうえで医療施設からの注意事項を守ることが大切です。もしも守れなかった場合は隠さず、必ず医療施設へ伝えましょう。

参考資料
*1.全国健康保険協会 どんな検査があるの?
*2.日本循環器学会 禁煙推進委員会 喫煙の健康影響・禁煙の効果
*3.東京都医師会「タバコQ&A(改定第2版)」
*4.厚生労働省 e-ヘルスネット 胃潰瘍
*5.日本予防医学協会 検査結果の見方 血液検査
*6.日本臨床検査専門医会 「尿素窒素(BUN)、クレアチン(Cr)」の検査について
*7.日本健康管理協会 よくあるご質問
*8.伊藤喜久「検査前検査から見た尿蛋白個別測定」(日本電気泳動学会「生物物理化学 49巻2号」2005年)
*9.日本総合健診医学会 12.健診の上手な受け方(Q&A)

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