増え続ける呼吸器系の疾患
国立がん研究センターが発表した2015年の肺がん患者数は、全がん予測罹患者数982,100人中、肺がんが133,500人で、大腸がんに次いで2位。しかし、予測死亡数では、逆転して、肺がんが第1位となっている。単純計算すると、死亡率は、約60%と非常に高く、長年、日本人男性の死因第1位でもある。また、タバコが原因と言われるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は、日本で年々増加しており、2020年には、全世界で死因第3位になると予測されている。
これら呼吸器系の致命的な病気を予防、早期発見するには、定期的な検査が間違いなく有効である。人間ドックで行う、胸部X線検査や喀痰検査、肺機能検査では、肺がんやCOPDはもちろん、それ以外の呼吸疾患の存在も明らかにする。それぞれの検査方法や判定基準を紹介する。
肺の影で病気を判断する胸部X線検査
背中からX線を照射して、肺や肺周辺の臓器の病巣を発見する検査である。肺に腫瘍や炎症があると、そこに白い影が映り、影の形がいびつであれば肺がんを、境界がぼやけていれば、肺炎や肺結核を疑う。異常ありとなった場合、肺がん、肺気腫、肺結核、肺炎、気胸、心肥大、胸部大動脈瘤の疾患が疑われる。
喀痰検査だけで、呼吸器疾患のほとんどが判明する
痰を調べることで肺や気管支などの呼吸器系の病気がわかる。調べる方法は、細胞診と細菌検査の2つがある。
前者は採取した細胞を顕微鏡で確認し、痰にがん細胞、特に偏平上皮がんの有無を調べ、正常細胞を1、癌細胞を5として、疑わしい細胞のランク付けする。
後者は、まず塗抹検査と呼ばれる、試薬で痰に含まれる病原菌を染色し、顕微鏡でその有無を判断する検査を行う。次に、培養検査で菌を増やし、より詳細に肺炎や気管支炎の原因菌を調べる。培養検査時に、さまざまな薬の感受性試験も実施し、治療薬を決めるのだが、通常の菌は培養に2〜3日程度、結核菌は2ヶ月程度かかるため、調べる菌により、結果がでるまでに時間がかかってしまう。喀痰検査で、異常と判定された場合、肺がん、肺炎、肺結核、気管支炎などを疑う。
吐き出した空気の量を測定する肺機能検査
肺機能検査は、スパイロメーターという機械を使い、肺の大きさや酸素を取り込む能力を調べる検査である。
調べる内容は、「肺活量」や、年齢や性別から算出された肺活量の基準値に対して、実測肺活量の比率を表す「%肺活量」、肺いっぱいに空気を吸い込み、一気に吐き出したときの空気の量を調べる「努力性肺活量」、努力肺活量のうち最初の1秒間に吐き出された空気の量を表す「1秒量」、これらの結果はグラフに現れ、肺の病気のレベルを判定するのに役に立つ。「%肺活量」が80%未満で肺結核や肺繊維症など、「1秒率」が70%未満の場合は、気管支喘息、気管支拡張症などを疑う。
呼吸器検査は、どれも身体に負担なくできる検査であり、かなりの病気を明らかにすることができるため、定期的に受けておきたい。また、疾患の早期発見は、身体の負担を少なくするだけでなく、医療費の抑制にもつながる。人間ドックなどの費用は、各自治体の市民課などで申請すれば、検診費用一部の援助金が認められることがあるので、一度、問い合わせてみるとよいだろう。
