2018.2.19

再発・転移が心配な乳がん。長期闘病へのリスク、治療費への備えを考えよう

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長
医学博士、星槎大学 客員教授、相馬市健康対策専門部会委員、相馬市放射能対策アドバイザー
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
内科医として勤務する傍、「女性の総合医」を目指し日々研鑽する。
自身の貧血体験から大学時代より上昌広氏を師事。

乳がん罹患数は40代~50代がピーク

国立がん研究センターの統計資料によると、乳がんの罹患数は、35歳から50歳頃まで急増する(※1)。20代前半から30代にかけても徐々に増加傾向のため、若い世代でも注意したいがんだ。同報告によると、2016年の乳がん死亡者数は14,015人と報告されている(※2)。また、2013年の罹患数は85,856人だ(※3)。乳がんの5年相対生存率は91.1%となっており、ほかの部位よりは高めだが、定期的な検査を行い、早期発見・早期治療が重要だ(※4)。

乳がんには再発リスクがつきまとう。治療は長期戦

乳がんは、ほかのがんと同様に再発・転移のリスクがつきまとう。乳がんの再発・転移を見つけるのに役立つ指標として「CA15-3」と呼ばれる腫瘍マーカーがある。発症初期にはあまり見られないのだが、乳がんの再発・転移時にはCA15-3の血中濃度が上昇する傾向にあるのだ。ただし乳がんの再発・転移以外にもCA15-3を押し上げる要因はあるため、画像診断などと合わせて、再発を判断していく。

乳がんの入院治療費の平均額は?

万が一、乳がんに罹患した場合の治療方法は、がんの性質やステージ、年齢や別の疾病の有無などによって最適な治療法が選択される。具体的な治療法としては「手術」「放射線治療」「化学療法」などが挙げられ、手術後に放射線治療や化学療法などを合わせて行うなど、掛け合わせて治療していく場合もある。

では、乳がんの治療費は実際にどの程度かかるのだろうか? 厚生労働省の「医療給付実態調査 報告書 平成27年度」によると、乳がんによる診療費用の平均額は、公的医療保険、高額療養費制度適用前でおよそ55万円もの費用がかかっている計算になり(※5)、公的医療保険適用後の自己負担額は3割負担の方で約16.5万円を支払うことになる。さらに、高額療養費制度を申請することで上記費用の負担が軽減される。高額療養費制度とは、その月の医療費が一定額を超えた場合、その超えた金額が戻ってくる制度だ。たとえば、70歳未満の標準報酬月額が28万〜50万円の方の場合、「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」が自己負担額の上限額となる。この総医療費とは公的医療保険適応前の金額を指す。乳がんの治療費で考えると、「80,100円+(約55万円-267,000円)×1%」となり、約82,930円が医療費自己負担額の上限額となる。つまり、実際に支払った約16.5万円との差額約82,070円が、高額療養費制度を申請することで後日戻ってくる。また、事前に手続きを申請することで支払時に自己負担分のみの支払いにすることも可能となる。

乳房切除術を行った場合は、乳房再建手術を希望される方もいる。乳房再建は自家組織(自分の体内からの移植)やインプラント(シリコンなどの挿入)、乳頭・乳輪の形成などさまざまな方法が選択可能だ。術後の定期的なケアも必要で、場合によっては再手術もありうる。継続的な費用負担が生じるリスクがあることも理解しておきたい。

また、差額ベッド代や食費、寝具料などの費用は公的医療保険対象外のため自己負担である。また、先進医療(*)や自由診療などの費用は公的医療保険の対象にならないことも覚えておこう。

*「先進医療」とは、厚生労働大臣が認める医療技術で、医療技術ごとに適応症(対象となる疾患・症状等)および実施する医療機関が限定されています。また、厚生労働大臣が認める医療技術・適応症・実施する医療機関は随時見直されます。

がん治療では「重粒子線治療」や「陽子線治療」などが挙げられるが、重粒子線治療は1件あたり平均約300万円、陽子線治療は約280万円と厚生労働省から報告されている(※6)。がん以外の先進医療で実施数が多いものとしては、「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」で平均約55万円、「前眼部三次元画像解析」で平均約3,600円などがある。

女性特有のがんには、まずは「予防」と「検査」。あわせて「保険」の3つの備えが肝心!

乳がんや子宮がんなどの女性特有のがんをはじめ、すべてのがんへの対策は「予防」「検査」「保険」で備えるのが有効だ。本人や配偶者の喫煙、偏った食生活、運動不足といった生活習慣の見直しはがん発症リスクの抑制につながる。また定期的に検診を受診することで、発症リスクを把握しやすく、万が一の罹患時にも早期発見につながる。

また、万が一、がんに罹患した場合は、治療費の心配がある。再発のリスクも考える必要があり、再発した場合は治療が長期戦となることを覚悟したい。とくに共稼ぎ世帯では、闘病中に収入減となる不安はとても大きい。乳がんなどの女性特有のリスクへの備えとして、女性向けのがん保険を考えてみよう。がん保険には女性専用プランが用意されており、たとえば「女性特有のがんによる所定の手術」や「乳房再建」など、一般的ながん保険よりも女性に特化した保険設計となっているものがある。ほかにも、闘病中の入院・通院費用も日数無制限で保障を受けられる保険もあり、加入しておくことで、収入面の不安を軽減してくれるだろう。

■ 出典
※1 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」 グラフデータ 「データ:罹患(全国推計値) グラフ:年齢階級別 率 粗率 部位:乳房(女性)」

※2 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」 がん統計 がんに関する統計データのダウンロード 1. 死亡データ 「人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2016年) 」

※3 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」 がん統計 がんに関する統計データのダウンロード 2. 罹患データ(全国推計値) 「地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2013年) 」

※4 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」 がん統計 4.生存率 1)がんと診断されてからの生存率

※5 厚生労働省 医療給付実態調査 報告書 平成27年度「第3表 疾病分類別、診療種類別、制度別 件数・日数(回数)・点数(金額)」のシート「第3表入院」を参照し、「制度・計」欄から「点数*10円/件数」で1件あたりの平均治療費を計算

※6 厚生労働省 第49回先進医療会議「平成28年6月30日時点における先進医療Aに係る費用」平成28年度実績報告(平成27年7月1日~平成28年6月30日)

■ 監修FP
吉住 淳
AFP、2級FP技能士。金融系、債務系などの記事を多数執筆。ほかにもレストランやホテルのコンサルティングも手がけている。

※本記事は、特定の保険会社や保険商品について推奨するものではありません。
AFH290-2018-5004 2月20日(190220)


Colorda編集部
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