2018.8.31

知っておきたい乳がんのリスクとセルフチェック方法

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長
医学博士、星槎大学 客員教授、相馬市健康対策専門部会委員、相馬市放射能対策アドバイザー
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
内科医として勤務する傍、「女性の総合医」を目指し日々研鑽する。
自身の貧血体験から大学時代より上昌広氏を師事。

「乳がん」のリスクが高いのはどんな人?


女性のがんといえば、まず「乳がん」が思い浮かぶのではないだろうか。実際、国立がん研究センターがん情報サービスの「がん登録・統計」によると、2013年の部位別がん罹患数の女性のデータでは「乳房」が1位となっている(※1)。

乳がんの要因のひとつとされているのが、女性ホルモンの一種「エストロゲン」だ。エストロゲンは女性らしい体つきをつくる、肌や髪のうるおいを保つ、など女性にとってうれしい役割を果たしている一方で、体内のエストロゲンが多いと乳がんの発生リスクが高くなるという面もある。

また、エストロゲンは妊娠・授乳期、閉経後には分泌が低下するため、一般的に、初潮が早い、出産経験がない、初産の年齢が遅い、閉経が遅いなどでエストロゲンの影響を受ける期間が長いほど乳がんのリスクが高まるとされている。

そのほか、母や姉妹、子など近しい血縁者で乳がんにかかった人がいる、飲酒習慣がある、運動不足、閉経後の肥満に心当たりがある場合も注意が必要だ(※2)。

乳がんの罹患率(2013年/全国推計値)を年齢別にみると、30代から増加し40代後半〜50代前半で罹患者でピークをむかえる(※3)。ただし、20代や閉経後、妊娠出産経験が豊富であっても発症するケースもあるため、女性であれば誰でも乳がんにかかる可能性があると考えたほうがよいだろう。

年齢や妊娠出産の有無などにかかわらず、予防につながる生活習慣を意識し、定期的な検診も怠らないようにしたい。

習慣にしたい、乳がんのセルフチェック方法

乳がんが進むと、バストやその周辺に以下のような症状があらわれる。

  • 乳房やわきの下にしこりができる
  • 乳房がひきつれたり、えくぼのようなくぼみができる
  • 乳頭や乳輪に湿疹、ただれ、分泌物がある
  • 乳房の皮膚に赤み、はれ、ただれがある
  • 腕がむくむ、しびれる

乳房のしこりは乳腺症などでもあらわれるため、しこりがある=乳がんと考えるのは早計だ。とはいえ、上記を含めバストになんらかの異変を感じたら医療機関を受診し、検査できると安心だ(※2)。

また、バストの些細な変化に気づけるよう、日頃から自分のバストの状態をチェックしておくことも大切だ。月に1度、生理終了日から1週間後あたりを目安に、以下のセルフチェックを習慣づけよう。

  • 鏡の前で両腕を上げ、左右のバストの大きさの変化、乳房のひきつれやくぼみ、皮膚の状態をチェックする。
  • 両腕を腰に当て、1と同様にバストの状態をチェックする。
  • 指をそろえ、指の腹でバストからわきの下まで丁寧に「の」の字を描くようにしながらしこりがないかチェックする。入浴時にボディソープを指につけて行うと変化に気づきやすい。
  • 乳頭を軽くつまみ、血のような分泌液が出ないかをチェックする。

乳がんは、早期に発見できれば克服できる可能性が高い病気だ。早期発見のためにも、セルフチェックとあわせて定期的に乳がん検診を受けることが大切だ。

もしも乳がんにかかったら…治療は?費用はどうなる?

乳がんの治療は、多くの場合手術(外科治療)でがんのある部分を切除する方法が主となる。進行状況によって、部分的に、あるいは乳房を全て切除したり、わきの下のリンパ節郭清(周囲のリンパ節を切除し転移の有無を調べたり、再発を防ぐ治療法)が行われる。また、手術とあわせて放射線照射が行われることも多い。さらに、進行状況や治療方針に応じて薬物療法が行われることもある(※2)。

厚生労働省が公表している「医療給付実態調査(平成27年度)」によると、「乳房の悪性新生物」の1件あたりの入院診療費用の平均額は、公的医療保険と高額療養費制度適用前で55.1万円(※4)。公的医療保険適用後の自己負担額は、3割負担の方で16.5万円を支払うことになる。さらに高額療養費制度を申請することで上記費用の負担が軽減される。高額療養費制度とは、その月の医療費が一定額を超えた場合、その超えた金額が戻ってくる制度だ。

たとえば、70歳未満の標準報酬月額が28万〜50万円の方の場合、「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」が自己負担額の上限額となる。この総医療費とは公的医療保険適用前の金額を指す。先述の乳房の悪性新生物の治療費で考えると、「80,100円+(約55.1万円-267,000円)×1%」となり、およそ8.2万円が医療費の自己負担額の上限額となる。つまり、実際に支払った約16.5万円との差額約8.3万円が、高額療養費制度を申請することで後日戻ってくる。また、事前に手続きを申請することで、支払い時に自己負担分のみの支払いにすることも可能となる。

ただし、差額ベッド代や食費、寝具料などの費用や、先進医療*、自由診療などの費用も公的医療保険の対象にならず、全額自己負担となる。

また、乳がんの治療にあたって、乳房再建術(切除した乳房をできるだけ取り戻す手術)の検討も選択肢に入ってくるだろう。乳房再建術は公的医療保険の適用が拡大されてはいるものの、医療機関や手術の内容によっては自費診療の場合がある。加えて、薬物療法も種類や投与期間によっては高額になるケースがある(※2)。

いざというときに治療の選択肢を広げる意味でも、医療費の備え方を考えておくと安心だ。

* 「先進医療」とは、厚生労働大臣が認める医療技術で、医療技術ごとに適応症(対象となる疾患・症状等)および実施する医療機関が限定されている。また、厚生労働大臣が認める医療技術・適応症・実施する医療機関は随時見直される。

■ 出典
※1 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」「最新がん統計」「1.日本の最新がん統計まとめ」
※2 国立がん研究センターがん情報サービス「それぞれのがんの解説 」「 乳がん」
※3 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」グラフベースより「乳がん罹患(2013年/全国推計値)」
※4 厚生労働省 医療給付実態調査 報告書 平成27年度「第3表 疾病分類別、診療種類別、制度別 件数・日数(回数)・点数(金額)」のシート「第3表入院」1件あたりの平均治療費は「点数*10円/件数」で計算

※本記事は、特定の保険会社や保険商品について推奨するものではありません。


Colorda編集部
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