がん検診

乳がん検診は生理前・生理中でも大丈夫? 生理による影響と受診タイミングを解説

女性生理 がん検診
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

乳がん検診を受診したいとき、生理(月経)の影響は考慮したほうがよいのでしょうか。また、検査に適した時期はあるのでしょうか。ここでは健康診断や人間ドックで行われる乳がん検診の内容と生理前後の受診タイミングなどについて解説します。

★こんな方に読んでほしい!
・乳がん検診が生理周期と重なりそうで心配な方
・もうすぐ乳がん検診なのに生理になってしまい、生理中に受診しても大丈夫か不安な方
・健康診断や人間ドックで乳がん検診を検討しており、自分に合った検査方法とその受診タイミングを知りたい方

★この記事のポイント
・乳がん検診は検査で痛みが生じたり診断が難しくなったりするため、生理前から生理中はなるべく避けたほうがよい
・乳がん検診には生理の終わりから排卵前の時期が適している
・生理周期に連動するしこりは、乳がんではなく乳腺症の可能性がある
・セルフチェックで症状を自覚した場合には、生理のタイミングに関わらず診察を受けることが大切

乳がん検診の受診は、生理前から生理中はなるべく避けたほうがよい

国の指針によれば、乳がん検診は40歳以上の女性で2年に1回の受診が推奨されています。検査内容は現在マンモグラフィ検査と問診がメイン*1ですが、自治体によっては乳腺超音波(エコー)検査を採用している場合もあります。生理中の受診については、いずれの乳がん検診も制限されていないため、生理のタイミングに関わらず検査の実施は可能です。

ただし、生理前や生理中に乳がん検診を受診すると、乳房が張っていることで検査中に痛みを感じたり、診断が難しかったりする場合があるため、健康診断や人間ドックを実施する医療施設によっては生理後の受診が望ましいとしています。

生理前で検査による痛みが心配ならエコー? 乳がん検診の検査のメリット・デメリット

生理前に乳房が痛むのはなぜ?

生理前から生理中に乳房の張りや痛みを感じるのは、女性ホルモンが関係しています。女性の身体は毎月の生理周期のうち、排卵から生理前までの間、女性ホルモンのひとつであるプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響で乳腺が発達します。生理前に乳房の張りや痛みを感じるのはこのためです。

乳房の張りや痛みが心配で、マンモグラフィ検査の代わりに乳腺超音波(エコー)検査を検討する方もいますが、マンモグラフィ検査と乳腺超音波(エコー)検査は、検査の特徴が異なります。そのため、受診する前にその特徴を理解して選択することが大切です。次項で乳がん検診におけるそれぞれの検査の特徴とメリット・デメリットを解説します。

乳腺超音波(エコー)検査の特徴

乳腺超音波(エコー)検査は、超音波で乳房の病変を見つける検査です*2。乳房の表面から超音波を発生する探触子(プローブ)という機械をあて、超音波が反射する様子を画像で確認します。乳腺超音波(エコー)検査は、マンモグラフィでは診断が難しい、20~30代の方や高濃度乳房(デンスブレスト)の方に適しています。乳腺超音波(エコー)検査のメリット・デメリットは下記の通りです。

【メリット】
・痛みがない
・若い人や高濃度乳房(デンスブレスト)の人に適している
・放射線被曝がないため、妊娠中も実施可能
・マンモグラフィで検出が難しい小さなしこりを発見できる
など

【デメリット】
・死亡率減少効果が現状では明らかでない*3
・石灰化のある小さな乳がんの発見に不向き
・検査技師による技術差が影響しやすい
など

マンモグラフィ検査の特徴

マンモグラフィ検査は、乳房に特化したX線検査で、とくに40代以降の方に推奨される検査方法です*2。乳腺の重なりを少なくするために、2枚の透明の板で乳房をはさんで薄く伸ばし、1方向もしくは2方向から撮影します。視触診では発見できないしこりや、乳腺超音波(エコー)検査では見つけにくい石灰化のある小さな乳がんを見つけるのに適しています。マンモグラフィのメリット・デメリットは下記の通りです。

【メリット】
・死亡率減少効果が科学的に認められている*3
・石灰化のある小さな乳がんの発見に適していている
・自治体のがん検診で受けることができる(ただし対象は40歳以上で2年に1回)
など

【デメリット】
・強い痛みをともなう場合がある
・乳腺が発達している20~30代、乳腺濃度が高い人には不向き(画像全体が白っぽくなり、しこりを認識しづらくなることがあるため)
・少量だが放射線被曝がある
・胸の形によっては観察範囲が限られる場合がある
など

乳がん検診の検査について、詳しくは以下の記事で解説しています。

乳がん検診に最適な時期は?

健康診断や人間ドックで乳がん検診を実施している医療施設では生理後の受診を推奨しているところが多いですが、いつからいつまでに受けるのがよいのか、具体的な期間は言及していないことがほとんどです。また、乳がん検診の痛みの感じ方には個人差があるため、受診は生理前でも大丈夫としている医療施設もあります。とはいえせっかく受診するのであれば、女性ホルモンの影響で乳房が張って痛みが生じたり、診断が難しくなったりする時期は避け、より病変を見つけやすいタイミングで受診したいものです。

生理周期(月経周期)は正常であれば25~38日、変動6日以内で繰り返されます*4。生理周期は、生理開始日から始まる卵胞期と、排卵日あたりから始まる黄体期に分けられます。正常な黄体期はおおむね14日程度とされており、この期間はプロゲステロン(黄体ホルモン)が増えて乳腺が発達します。以上から考えると、生理周期が28日間の方の場合、卵胞期14日間、黄体期14日間が目安となり、乳房の痛みがおさまる生理期間後半から黄体期が始まるまで(生理開始から数えて14日目まで)が、乳がん検診の受診にもっとも適した時期と言えます。

生理周期は個人により異なり、体調やストレスなどによって乱れることもあります。日頃から自身の生理周期を記録し、把握しておくことが大切です。

生理前の乳房のしこりは乳がん? リスクが高い人は定期的な乳がん検診と日頃のセルフチェックを

乳がんの高リスク要因、ポイントは女性ホルモン

生理にはプロゲステロンのほかに、エストロゲン(卵胞ホルモン)という女性ホルモンも関係しています。エストロゲンは生理の終わりから排卵前にかけて多く分泌されます。乳がんの発生・増殖には、このエストロゲンが大きく関係しています。

乳がんはエストロゲンを分泌している期間が長い人ほどかかりやすいとされています。以下は乳がん発症の高リスク要因です*5,*6

・エストロゲンを含む経口避妊薬(ピル)の使用
・閉経後の長期のホルモン補充療法
・初潮年齢が早い
・閉経年齢が遅
・出産経験がない
・初産年齢が遅い
・授乳経験がない
・良性乳腺疾患(乳腺症、乳腺繊維腺腫など)にかかったことがある
・飲酒、運動不足、閉経後の肥満など生活習慣
・近親者に乳がんあるいは卵巣がんになった人がいる
・近親者に3人以上、下記のがんに罹患した人がいる
乳がん、膵臓がん、前立腺がん(特定スコア以上の悪性度の場合)、脳腫瘍、白血病、大腸がん、子宮体がん、甲状腺がん等

早期の乳がんは症状が現れにくいため、高リスクの方は定期的に検診で確認することが大切です。

乳がん以外のしこり—生理前のしこりは「乳腺症」の場合も

乳がん以外でも乳房にしこりができる場合があります。さわれる乳房のしこりの大部分は乳がんとは関係のない良性の病変で、乳腺の良性腫瘍、皮下脂肪のかたまり、皮膚の腫瘍、乳腺症などがあります*6。なかでも乳腺症の症状は、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)と大きく関連し、しこりや痛みが生理前に増大し生理後に縮小するなど、生理周期と連動します。

乳腺症とは30~40代の女性に多くみられる乳腺のさまざまな良性変化の総称です*6。乳腺の一部に嚢胞(のうほう)、乳管内乳頭腫、腺症などが集まることにより、しこりのように感じられる場合があります。しこり以外にも一部が硬くなったり、痛みや乳頭分泌の異常が生じたりすることがありますが、これらの症状は閉経後に卵巣機能が低下すると自然になくなります。一方、生理周期に関係のないしこりや腫れ、痛みを自覚した場合は、乳がんなどが隠れている可能性もあります。生理の前後に関わらず、気になる症状があった場合は自己診断だけでなく診察を受けましょう。

乳がんのセルフチェックとは?

乳がんは定期的な検診のほか、日頃のセルフチェックが大切です。乳がんは進行とともに以下の症状が現れることがあります*7

・乳房にしこりがある
・乳房にくぼんでいる部分やただれている部分がある
・乳頭から血が混ざった分泌物がある
・乳頭に陥没や変形がある
・左右の乳房の形が非対称である
・脇の下が腫れて違和感がある
など

乳がんのセルフチェックで上記のような症状があった場合は、生理のタイミングを考慮したり次の乳がん検診を待ったりせず、早めに乳腺科(乳腺外科)にかかりましょう。また、乳がんは早期だと変化が現れにくいため、セルフチェックで自覚症状がない方も、定期的に検診で確認するようにしましょう。

乳がんによる死亡数は30代後半から急速に高まる。定期的な乳がん検診で早期発見を

乳がんは日本人女性がもっともかかりやすいがんで、若い年齢で乳がんにかかる率も年々上昇しています*8。乳がんによる死亡数は30代後半から急速に高まり、30〜69歳では乳がんが女性の死因第1位です*7。仕事や子育てに励む年代の女性こそ、乳がんに気をつける必要があります。早期発見のためには、セルフチェックとともに定期的な乳がん検診の受診が大切です。

近年は「痛くない」「恥ずかしくない」新しい乳がんの検査方法として「無痛MRI乳がん検診」が登場しています。興味のある方は下記記事をご覧ください。

参考資料
*1.厚生労働省 がん検診
*2.国立がん研究センター がん情報サービス 乳がん 検査
*3.国立がん研究センター「有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン 2013年度版」
*4.日本産婦人科医会 女性の健康Q&A「正常な生理(月経)の目安を教えてください!」
*5.国立がん研究センター がん情報サービス 乳がん 予防・検診
*6.日本乳癌学会 患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版
*7.日本対がん協会「もっと知りたい乳がん」2020年発行(改訂版)
*8.日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン2018年版 」総説1 日本人女性の乳癌罹患率,乳癌死亡率の推移

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上昌広
こちらの記事の監修医師

特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
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